鳥篭の夢

幼年期/東への経路03



変な所で足止めされちゃったなーなんてしみじみ思う。レイとティーポの情報は相変わらず無いし。
ラパラの船は戻ってこないし、街道を通ろうにも途中で路が崩れて通れない。・・・・・・まさにお手上げ状態。
モモは動力船を見られなくて残念がってて、ガーランドさんは純粋に先へ進めない事に悩んでる。
ペコロスとハニーは仲良さそうな感じで遊んでるけど・・・・・・・でも、これから本当にどうしよう?

「灯台を点火したら船戻ってくるかしらー?」
「そう言えばそんな事も言ってたね。
確か、灯台の明りが点らないから船が帰ってこないんだっけ?」
「それもまぁ、船乗りさん達の推測だけどねー」
「しかし・・いくら機械に強いとは言え、ギルドが部外者に灯台をいじらせたりはせんだろうな」
「ですねー。やっぱり此処で暫く足止めになっちゃうのかな・・・?」

うーん・・もしも本当に灯台が直って船が戻ってくるなら、モモにお願いしたいけどなぁ。
ギルドの人を何とか説得・・・説得って難しいよね。必要なのは“関係者”である事だろうし。

「ねぇ・・」
「ん?なぁにー?ニーナ」
「あの・・シャッドさんってベイトさんの事が好きなんじゃないのかな?」

え・・・っと?

「それは、そうかもしれないけど・・・どうしたの?急に・・・」
「・・・それで、ベイトさんもシャッドさんが好きなのよ!!」

急な発言に全員が黙り込んだ。
勿論私もそれ以上言葉は出てこなくて、ただニーナの話を聞く。
何だか生き生きとした表情が妙に眩しいんですが・・・ニーナさん?

「でも、ベイトさん言い出せなくて・・・・。
わたし、ベイトさんに勇気を出すように言ってあげる!
そうじゃないと、シャッドさんも可哀想よね?」
「え・・と、うん?」

リュウが漸く疑問系で頷くけど、ニーナは既に決心してるみたい。
でもね、ニーナ。頼られても無いのに他人の恋愛にまで口を挟むのは、どちらかというとお節介だと思うんだけどな。
皆がきっと同じ事を思ってるんだろうけど、何故かそれを口にする事は憚られた。

その翌日。ベイトさんに昨夜の事を伝えに行ったニーナは、それを丁重に断られてしまい少々落ち込んでいた。
確かにベイトさんがシャッドさんに好意を抱いている事に違いないみたいだけど、いきなり“プロポーズ”は無理だと思う。
ていうか私がシャッドさんの立場だったとしてもそれは嫌かも・・・。
結局、ニーナの懸命・・って言うのか分からないけど、そんな説得に応じる事無くベイトさんは仕事に戻ってしまった。

「余計な事しちゃったのかな・・・?」
「うーん。そうとも言うかも、ねー・・?」
「大丈夫。多分、ニーナの誠意は伝わったと思うよ?」
「そ、そうだよ。ニーナ」
さん、リュウ・・・」

私の励ます言葉にリュウも一生懸命頷く。それでニーナは漸く顔を上げた。


「がはははははははっ!!!」

不意に響いた笑い声。急になんだろう?見れば皆も不思議そうに首を傾げている。

「何かしら?騒がしいわね・・?」
「ちょっと見に行ってみようか?」
「あぁ、そうだな」

行ってみれば、そこにはベイトさんと、シャッドさんにくっつくジグさん。
そしてそれを嫌がるシャッドさんの姿。
ぺたりと尻餅をついたベイトさんに駆け寄れば、曖昧な苦笑を私達に見せた。

「ベイトさん、どうかしたんですか?」
「・・・ジグが灯台を修理しに行く事になったんです。
灯台にはモンスターがいてとても危険で、もし無事に修理が出来ればジグの力を誰もが認めるでしょう」
「えっと・・そうするとジグさんがギルドの跡取りで、シャッドさんと結婚する事になるんですか?」

驚くニーナにベイトは曖昧に頷いた。気弱に見えたのに、その拳は強く握られている。

「・・・・・皆さん。わ、私を・・・鍛えてください!」
「え?」

予想外の言葉に思わず瞠目する。
まだ怯えが残る瞳だけど、同時に決意が秘められてるようにも見えた。

「・・・・何もしないで諦めるなんて・・やっぱり、出来ません。
ジグより先に灯台を修理しに行ける様に私に修行させてください!」
「勿論ですっ!頑張りましょうね、ベイトさんっ!!」

その時のニーナの瞳は、本当に輝いていたと思う。



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