鳥篭の夢

幼年期/妖精の頼み事01



「消しなさいようっ!!」


物騒だなぁって・・しみじみ眺めている場合じゃないのは分かってる。だけど・・この状況をなんと説明するべきか。
棍棒を片手に泣きそうな顔をする小さな女の子・・いや、女の子みたいに見えるだけかもしれないけど・・・。
とにかく、自分を“妖精”だと名乗った子が大声で叫ぶ。どうしてこんなに続けて色んな事が起こるんだろう?
ガーランドさんも言ってたけど、私達東に行きたいだけなのに・・・・。
で、話はまず今朝まで遡るんだけど───


「あぁ、皆さん。先日はお世話に・・」
「ベ・・ベイトさん!?どうしたんですか?その怪我!!」
「あ、こ・・これですか?慣れない事で無理したんでちょっと・・ね・・・」

あっちこっちに包帯を巻いて、それでも恥かしそうに頭を掻く姿に全員が何も言えなくなる。
修行だって大分ハードだったし・・・本当にごめんなさい。なんて、そんな言葉しか出てこない。

「それで、灯台に行くのが暫く無理に・・・。
あ!でも皆さんがお急ぎなら本当はギルド関係者以外に頼めない事なんですが・・・。
皆さんに灯台の修理をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「あら~、そんなのお安い御用よ~」
「本当ですか!でしたらまずはコレを受け取ってください」
「コレって・・猫のバッジ?」

可愛らしい猫の姿を模ったバッジ。
“ラパラ船乗りギルド”って名前が入ってるから、ギルド員の証なのかな?

「これはギルド員のバッジですので、これがあれば灯台に入れます。
灯台を修理して、船が戻ってくるかはまだ分かりませんが・・・・・それでも、何もしなければ何も起こりませんから、ね」

何処か晴れやかな表情に私達も頷いた。
モモは灯台に入れるって何だかちょっと楽しそうにしていて・・・。

それから私達は早速灯台に向かった。
メインバルブを開いて、力を流す為に頂上に行かなきゃいけないらしくて進んでたんだけど・・・。
その途中で何だか怪しい目玉のモンスターに襲われたんだよね。混乱とか使ってくるからちょっと怖かった。
何がって・・・ガーランドさんがイキナリ槍を振り回したり、モモもバズーカで叩いてくるし、リュウとニーナは泣いちゃうし。
ヤクリフ・・・ヤクリフ・・・未だかつてあんなにヤクリフを連続で唱えた事は無いと思う。・・・って、まぁそれは良いんだけど。
それで何とか目玉のモンスターを倒して、灯台の一番上まで来て漸く灯台の明かりを点けられたと思ったら・・・・


「何よう!こんなの───っ!!」

妖精が現れたっていう訳・・・・なんだけど、あ!そんな思いっきり機械を叩いたりしたら・・・・

───ゴンッ───バチ・・ィッ!

「あ・・」

バチバチと灯台の明かりを点けるスイッチが嫌な音を立てる。多分・・壊れたんだよね?
モモに視線を向ければ“あ~ぁ”って呆れたような表情。

「ど、どうすんのよう!?これ!」
「そんな事言われてもー・・」

泣きそうな妖精に、困ったようにモモが首を傾げた。確かに・・そう言われても困る。

「折角メダマちゃんに守ってもらってたのにーぃっ!消せなくなっちゃったわよう!酷いわよう!!」
「酷いって・・・それはこっちが言いたいんだけどな」
「・・・の言う通り、我々に非は無い筈だが?」
「そんな事ないわよう、ばかっ!
みんな、あなた達のせいなんだからねっ!!責任、とってもらうんだからねっ!!」
「ぷきゅ?」

急に妖精の身体が光りだして・・・え?え?何?
余りの眩しさに目を閉じて、それが何とか納まったと思ったら・・・今までいた灯台とは全然違う場所にいた。

「あ~、ビックリしたわぁ・・」
「えっと・・ここ、何処かしら?」
「さぁ・・わかんない」

あっけらかんとしてるモモと違ってびくびくするようなニーナとリュウの姿。
何か恐ろしいモノがいる気配は無いけど・・・でも、何処だろう?
辺りを見渡せば・・頂上が光ってる灯台が思ったより近くに見える。

「ここってもしかして灯台の裏側・・なのかな?」
「あ~、なるほど」
「本当!さんすごーい!」
「別にそんな事無いよ。それより、今はどうして此処にいるか・・だよね?」

「あ!あなた達こんなところにいたっ!!こっちに来るのよう!」

言いながら、小さな手で服の端を引っ張られる。そのままついて行くと途中で潮の香りと近くに広がる海。
こじんまりとした小屋に案内されると、少しだけ色合いの違う妖精達が他にも2人。やっぱり怒ってるみたい・・・。

「あー!あなた達が灯台をつけたの!?ばかっ!!」
「どうしよう?灯台の明かりがついたって事は・・アイツが来ちゃうのよう」
「このままだと、いぢめられちゃうのよう!!」
「アイツって・・?」

訊ねると途端に2人の視線が私に向く。
ずずいっと詰め寄って両方の耳にそれぞれ・・あ、嫌な予感。

「「モンスターがくるのようっ!ばかっ!!」」

やっぱり。同時に大声を出されて、くわん・・って頭に響く。意外と強力な攻撃だと思うよ、これ。

「あなた達のせいなんだからねっ!なんとかしてよ、ばか!!」
「えっと・・つまりはそのモンスターを倒したら良いんだよね?」
「そうよう!」

大きく頷く妖精。私の横にはまだ2人の妖精がいて、逃がすまいとしている。
・・・いや、逃げるつもりは無いけどさ。
間接的にとはいえ、一応迷惑かけた事になるんだろうし?
“アイツ”って事は複数では無いだろうし。大群じゃないなら何とかなると思う。

「えー?、もしかして手伝うつもりー?」
「うん。まぁ灯台を点けたのは私達だし、逃がしてくれそうに無いしね」
「・・妖精さん達は困ってるんでしょう?だったらお手伝いしなくちゃ!」
「ふむ。やるしかないか・・・・?」
「リュウもそれでも良い?」
「う、うんっ!!」

念の為に聞いてみれば、リュウは何度も頷いてくれた。
それじゃあ、妖精の為にモンスター退治でも頑張りましょうか?



inserted by FC2 system