鳥篭の夢

幼年期/知る為に01



あれから数日“やっぱり船が帰って来ない”というベイトさんの言葉に私達は酷く落胆した。
折角灯台は直したけど、もしかしたら船の方が壊れてるんじゃないかって・・・。でも東へのルートは確保できた。
昔ギルドが使っていたっていう少し危険な道なんだけど、ズブロ火山には街道以外に抜け道があるみたい。
でも確かに危険なのは納得・・マグマが近くにあって酷く暑いし、道も険しい。
それに・・何故か出口には変なご老人が出てくるというオマケ付きで、そのご老人が謎のモンスターを召喚するし・・。
どうにかそのモンスターを退治して、私達は東へ辿り着く事が出来た。
今いるのはウルカン・タパと呼ばれる村・・なのかな?何だか1つの大きな建物みたいなんだけど。

「でも、何だったのかしらね~?あのおじいさん」
「そうだね。手が回ったって何の事だったのかな・・・?」
「さぁー?」
「塔に眠る皆・・・天使の塔には何かが眠ってるって事?」

それに“恨み”がどうこうとも言ってた様な気がする。モモが首を傾げて肩を竦める。

「私達がそんな事考えても分からないわよー」
「・・・そうだね」
「ぷきゅー!!」

今はあのご老人の事を考えてる場合じゃないよね・・・って

「ペコロス、ストップ!!そこに入るのはダメ!!」

急に井戸に飛び込もうとするペコロスを抱きかかえる。
さっきの火山が暑かったからって飛び込みたくなる気持ちは分かるけど・・でも、流石にそれは止めて欲しいかも。

「そうよーペコロス。そのまま戻って来れなくなっちゃうわよ?」
「ぷゅー・・?」

窘めるモモの言葉に、不思議そうに首を傾げた。
分かって無いのか分からないフリなのか・・たまに分からない。
と、長老に話を聞きに行っていたリュウとガーランドさんが戻ってくる。

「あ。お帰りなさい、2人とも」
「それで、どうだったの?」
「あぁ。塔への入り口は開けてもらう事が出来た」
「そうですか。じゃあ天使の塔に行かないと・・ですね」
「・・そうだな」

どこか歯切れの悪いガーランドさんの言葉に、リュウも心配そうな視線を向けていた。何かあったのかな?
付いていかなかったからリュウにしかそれはわからないんだけど・・・でも、少しだけ何だか不安が過ぎる。

それから、皆火山で体力を消費したから今日は早めに休む事になった。宿屋じゃなくて今日はキャンプ。
パチパチと火が爆ぜる音にふと目が覚めた。近くにはモモとニーナとペコロス・・・・・。
あぁ、そっか。ガーランドさんとリュウが見張りをしてくれてるんだっけ?それで先に休ませてもらったんだよね。
テントから出ようとして話し声が聞こえた・・・・・あれは、ガーランドさん?

「姿こそ違うが・・俺は元々連中と同じウルカンの民だ。
ガーディアンとは俺のような戦闘用のウルカン人の呼び名・・・邪悪な者から民を守る者」

こっくりとリュウが頷いた。と、不意にリュウの視線が私を捉える。

「姉ちゃん?どうしたの??」
「ううん。ちょっと目が覚めちゃったから・・見張り、交代するよ」
「あ、うん。じゃあおやすみ、姉ちゃん」
「おやすみ、リュウ」

私と入れ替わるようにリュウがテントへと歩み寄る。

「この前に言った、お前が死ぬかもって話な・・・」
「え?」

言いかけて、それを飲み込むようにガーランドさんは言葉を止めた。
リュウも私もただガーランドさんを見つめる。

「いや、良い・・・塔に行けば分かる事だ」
「・・うん、おやすみガーランド」

何だか酷く違和感を感じた。隣に座って焚き火の炎を眺める。
・・・あまり炎は好きじゃないけどね。あの時から、ずっと。
ガーランドさんが薪をくべるとパチパチと炎の中で赤が爆ぜた。鮮やかな色合い・・・怖い程の。

「・・・私、お話の邪魔しちゃいましたね」
「いや、そんな事は無い」
「そうですか?だったら良かった」

そこで言葉が途切れる。静寂の中で時折炎の爆ぜる音と動物の鳴き声が聞こえた。


「はい?」
「・・・・もう少し休んでおけ、交代には早すぎる時間だ」

それは私の身体を心配してくれる反面、どこか1人になりたいと遠まわしに告げるみたい。
立ち上がって服の埃を払う。それからガーランドさんにニッコリと笑ってみせた。

「じゃあお言葉に甘えて・・・おやすみなさい」
「ああ」

僅かに頷いたのを確認してテントに戻る。
直後、深いため息が1つ落ちたような気がした。



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