鳥篭の夢

青年期/目覚めた者03



「いやぁ~どうもどうもガーランドさん!
ドラゴンはぶっ倒して頂けましたかな~?」

鉱山を出ると偶然見つけたのか鉱山長が声をかける。
と、リュウに気付いて首を捻った。

「はて、そちらのお若い方は?」
「え・・えと・・・」
「いや、何でもない。ドラゴンはもういない」

ガーランドさんが無理やり話題を修正したからか、鉱山長はリュウの事を追求せずに嬉しそうに笑った。

「いやそうですか~!そいつは、ありがとさんです!
何せあのドラゴンときたら火ぃ吐いて人殺しまくるわ、暴れまわって機械ぶち壊すわで、悪さばっかしてましたからなぁ」

「・・・ッ」
「・・・リュウ?大丈夫!??」

リュウが頭を抑えて顔を顰める。
多分、今の言葉でドラゴンだった頃の記憶を思い出したんだと思う。
肩を抱いて顔を覗けば、汗を滲ませて苦しそうな表情。

「・・どうしましたかな?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと疲れちゃったみたいで・・・」
「・・・・?そうですか。
まぁとにかくご苦労さんでした。あ、お礼は親方の方から受け取って下さいな」
「はい、ありがとうございます・・・リュウ、平気?」
「・・・うん」

問えば、小さく頷いて何とか立ち上がる。
不意にガーランドさんがリュウの傍に近づいた。

「・・・気にするな、と言うのは無理かもしれんがドラゴンになっていた間は自分を失っていたんだ。余り思い悩むな・・・」

精一杯の言葉。それにリュウは曖昧に頷いて見せた。
それから親方に会って“お礼”を頂いた。
それと気になる情報が1つ。オウガー街道に出没するモンスターの噂。
闇市って所で聞いた話らしいんだけど、何でも虎みたいな姿をしてるって言う話・・・虎・・・かぁ。

それからリュウも疲れてるから今日は早めに休む事にした。
って言っても話す事もあるから宿屋じゃなくてテントだけど。
静かな空間。ご飯も早々に食べ終わって、別に何かするでもなく過ごす。

「リュウには・・・悪い事をした」
「え?」

不意に話しかけられて、リュウが顔を上げる。

「殺そうとした事もそうだが、今こうして・・リュウを連れ出して来た事が・・・」
「そんな事・・・」
「そうですよ。それに、ガーランドさんがしなければきっと私が連れ出してました」
「・・そう、か・・・」

言葉の端に少しだけ安堵の色が見えた。
でもこれは本当の事だもの。リュウにとって良かったかは分からないけど・・・。

「リュウを神の許に連れてゆくのが正しいのかどうかは分からない・・・。
ただ、神が如何して竜族を滅ぼそうとお考えになったのか・・・それを知る権利がリュウにはある。
山を降りて東へ行けばウインディア方面だ。もう一度東の土地へ渡り、天使の塔へ行こう・・・」
「そうすれば・・神に?」
「ああ」

リュウの言葉にガーランドさんが深く頷く。
でも、東に行く前に1つ問題があると思うんだよね。
例えば今噂になってるオウガー街道のバケモノ。

「・・・虎みたいなバケモノ、かぁ」
はソイツに心当たりがあるのか?」

不意に漏れた言葉にガーランドさんが問う。
確かに“虎”って言われれば心当たりはある。でも・・・

「うーん・・バケモノって言われると自信ないです。
私がバケモノだって思って無いから・・」
「ふむ、成る程な」

ガーランドさんも唸るように腕を組んで悩む。
リュウが少しだけ不思議そうな顔をしたのが分かった。
訝しげるような瞳。それでも確定した事じゃないから私は何も言わないし、リュウも何も聞かない。

「しかし、山を降りる為にはオウガー街道は通らなければならない」
「そうですね。出来るだけ出逢わない事を祈りましょう」
「ああ」

本当は少しだけ会ってみたい気もする。
まだ幼い頃だったからおぼろげになってるけど・・でも、一度だけ見た事がある。
レイは“ワータイガー”と呼んでいた、獣に近いもう1つの彼の姿。
バケモノって・・・呼べなくも無いのかな?アレって。
でも・・今までずっと探してきて、もしかしたらやっと会える?
リュウが見つかって、それが切っ掛けになってレイもティーポも見つかってくれるなら嬉しいんだけどな。



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