鳥篭の夢

青年期/自然界に背く者01



「東に行く為の通行証・・前回の事がリュウの所為って思われてて、今度は簡単に出してくれないと思う。
でも闇組織を倒したし、もう1つお手柄があればきっと何とかなると思うの!
それで、ね。ちょっとプラントの様子がおかしくて気になってるんだけど・・協力してくれない?」

まぁ要約するとそんな感じのニーナの申し出で、私達はプラントと呼ばれる場所へと来ていた。
ゴースト鉱を使った強化食物の栽培を目的とした場所。の、筈だけど・・様子がおかしいっていうのはどういう意味なんだろう?
とにかく所長に話を聞こうとリュウ・私・レイと、ガーランドさん・ニーナの二手に別れて探す。
・・・・でも、見つからないなぁ、それらしき人。なんて探し回っていたら何だか見た事ある姿。

「君、ハニーじゃない?」

小さな機械兵に訊ねると、私の顔をじっと見てから歩き出す。てこてこと歩いていく先を目で追った。
と、そこには野馳族の学者さんが機械の前に座り込んで、何かをして・・・・あれ?

「・・もしかして、モモ?」
「あ、モモさん!」

私とほぼ同時にリュウが声をかける。

「あ、頼んでおいたパーツ?そこら辺に置いといてー」

顔を見ずに言ってから、置かれた気配が無くてモモが顔を上げた。
リュウの顔を見て笑みを見せる。

「あ、パーツじゃなかったわ。ごめんねー。
・・・あぁ、もしかしてハニーのお友達ー?」
「・・・・モモ。リュウだよ」
「あら?!久しぶりねぇー・・・・・・って、リュウ!?」

漸く気付いたとモモは目を丸くしてリュウの顔を覗き込み、それから嬉しそうに笑った。

「リュウって───リュウじゃないっ!懐かしーい!!
・・・あ、でもちょっと待っててね。これだけ片付けちゃうから」

そう言ってまた作業に戻って・・・うーん、本当にマイペースだよね、モモは。
何かを直してる・・のかな?

「それにしても、リュウも大きくなったわよねー。
でも仕方ないか。リュウが天使の塔で死んじゃってから何年も経つんだもんねー・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
「モモ、リュウは生きてるから落ち着いて?」
「何だぁ?この学者さんは・・・」

モモの中でリュウは死んだ事になっていたみたい。
・・っていうか勝手に人の弟を殺さないで欲しいんだけどな。
似たような意味合いでため息をついたレイに、不意にモモが視線を向ける。じぃっと何かを思うように見つめて・・・

「ええっと・・・久しぶり?」
「俺は初対面だ・・・」
「あ。ごめんねー、達が一緒だからいたかなぁって・・」
「───・・愉快だねぇ」

ノンビリとした喋り口調。少しずれた思考回路・・・モモは本当に変わらないなぁ、なんて。
レイの目線が“何だコイツは”って言ってる。
とりあえず皆と合流して、後でレイにも説明しないとね。

それからニーナ達も丁度同じ場所に来てくれて早く合流する事が出来て、宿で事情を話す。
といってもニーナに喋った事とあんまり変わらないんだけどね。
それで一通り話し終わってモモを見れば微妙な顔。

「・・えーっと、リュウが悪い竜族で、ガーランドが殺して、でも本当は悪いかどうか分からないから神様に会いに行く?
う~ん、分からなぁーい。私、物理は得意だけど竜族の事は良く知らないの、ごめんねー」

まるでお手上げだと両手を上げるモモ。
・・分からなくても大丈夫、私達だって分からないから聞きに行こうって事になったんだし。
そう言えば“あ、そっかぁ~”と納得した声を上げた。

「そ、それよりモモさん実験プラントの不調は・・?」
「あ!そうなの聞いてーっ!!
ペレット所長は行方不明でプラントはもうぼろぼろ!!作物どころじゃないのー!
それどころか、このまま放っておいたらもっと酷い事になるかもー。
変異体の発生、ゴースト反応機の爆発。
何が起こっても不思議じゃないのに、詳しい事が分かるのってペレット所長だけだしー」
「って、モモ!それって大分危ないんじゃないの!?」
「そうなのよー。早く話を聞きたいんだけどいないし。
・・まぁ、遠くには行ってないって話しだけど・・」

それに、ニーナが手を叩く。

「つまり、手がかりは近くにあるって事よね!
探しましょう、モモさんっ!!」
「そうねー」

「あ。ねぇ、モモ。そういえばペコロスは?
姿が見かけないんだけど・・あの時ウインディアまで一緒だったでしょう?」
「あら、一緒にいるわよー。
最近は東にある賢樹の森っていう場所がお気に入りみたいで、いつもあそこにいるけど」

肩を竦めるモモに、ニーナが嬉しそうな笑みを見せた。

「わぁ!ペコロスもいるの!
あ、もしかしたらペコロスなら何か分かるかしら?一応此処で生まれたんだし・・・?」
「まぁ、分かってても喋れないけどねー」
「ふむ。ならもう一度二手に別れよう。
一方が所長を探し、一方がペコロスを迎えに行けば良いだろう」
「そうですね」

それから、ニーナ・ガーランドさん・レイが所長捜索、私・リュウ・モモがペコロスを迎えに行く事になった。

プラントを出て東に進むと深い緑の広がる空間。その森に一歩踏み入れると自然と背筋が伸びた。
空気が他とはまるで違う感じがして不思議。多分中央のあの巨木が賢樹なのかな?
そういえば昔賢樹についての書物を読んだっけ・・・?
それにあった通り、圧倒される程の神々しい緑。
その緑からゆっくり太い幹へ視線を降ろしていくと、ペコロスの姿があった。あれ?今、何だか・・・・

「モモ。ペコロスって喋れないんだよね?」
「えぇ、そうよー。それがどうかしたー?」
「今、何か喋ってなかった?」
「俺にもそう見えた・・」

私の言葉にリュウも同意する。
近づくと、ペコロスが不思議そうな顔で私達を見た。

「ぷきゅ」

何時も通りのペコロスの姿。
・・・やっぱり気のせいだったのかな?モモがペコロスの傍にしゃがむ。

「ペコロス、さっき何か言ってたー?」
「・・・・ぷきゅ?」

やっぱり不思議そうな表情。
それから私達へとゆっくり視線を移動させてもう一度戻って・・

「ぷきゅ?」
「うーん、この子の言う事って草や木と同じ位分からないわねー。
まぁ草や木が口を開くとして、だけどー」
「あはは。でも変異植物なんだし、あながち間違いじゃないかも」
「そうねー。さ、ペコロスいらっしゃい。
これから貴方の生まれたプラントを調べに行くわよー」
「・・・ぷきゅう」

分かっているのか分かっていないのか分からない返事。
それにリュウが優しく笑んで頭を撫でた。



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