鳥篭の夢

青年期/自然界に背く者02



「・・あら?何かしらー?」
「何かあったのかな?」
「さぁー?」

プラントに戻ると何だか様子がおかしかった。
さっきよりもずっと人が減ってる───?
それから不意に影が降って来て、顔を上げればレイの姿が・・・・って危なっ!?

「・・・っと、やっと戻って来たか」
「ねぇ、これ何かあったの?」
「詳しい事はわからねぇが、ゴーストガスがイキナリ噴き出したんだとよ」
「ゴーストガス!?」

それって確か人体に影響が出るんじゃなかったっけ?

「グラスハウスの中だから問題ねぇとか言ってる奴もいたが、ほとんどは逃げたぞ」
「なるほどねー。まぁ逃げ出す方が懸命な判断よねぇー。
うーん・・でもグラスハウスにガスが溜まるといつか爆発しちゃうかもしれないしー。早く何とかした方が良いわよ?」
「何とか・・って、モモさん」

のんびりと状況を判断しながら、モモは悩むように考えた。
曖昧な言葉にリュウが困ったような視線を向ける。
確かに、何とかしなきゃいけないんだろうけど・・その“何とか”が問題なんだよね。何か無いかな・・・?
考えてるとレイが奇妙な物を見るような視線を向けている事に気付く。・・・何?なにか変なモノ・・・・・あ

「もしかしてペコロスが気になる?」
「あ・・あぁ。つーか、、何だよあれ?玉葱に顔と足があるぜ?」
「私は聞いた話しか知らないけど、変異植物?らしいよ」
「名前はペコロスって言うんだよ、兄ちゃん」
「ペコロス・・?で、ヘンイ植物?・・・お前ら、変なツレが大勢できたんだな」

少しだけ呆れたような、そんな表情。
まぁ、ペコロスに関しては私も驚いたから何とも言えないけど。やっぱり初めて見た時はそうなると思う。
大昔だったら稀に見る事が出来た“草の人”とも違うもんね。
まぁ、それだって私は見た事ないけど・・・・とにかく、それよりもグラスハウスのガスを何とかしないと。


「あ!皆おかえりなさい!」

不意にニーナの声が聞こえて、見ればこっちに走ってくる姿。
急いでいるからか、無意識に背の翼が羽ばたいている。

「ねぇ、ペコロス。貴方、体当たりするの得意だったわよね?」
「ぷきゅ」
「ちょっと頼んでも良いかしら?」
「・・・ぷぃ?」
「ニーナ、どうかしたの?」

問うリュウの言葉に、ニーナが目線を上げて頷いた。

「グラスハウスの件はレイさんから聞いたわよね?」
「うん」
「それで、ちょっと大きめの石を使えばグラスハウスが割れるんじゃないかって思ったんだけど・・・。
最初はガーランドさんに頼んだんだけど逆に飛ばしすぎちゃって、ペコロスならもしかしたらって思ったの!」
「なるほど!ペコロス、大丈夫?頼んでも良い?」
「ぷきゅ!!」
「それじゃあ早速行きましょうかー?」

問題のグラスハウスは2箇所あって、どちらも黄色というか緑がかった色というか・・・・不思議な色をしていた。
多分、これがゴーストガスなんだろうなぁ。その周りを見ればガーランドさんが試しただろう石が幾つか転がっている。
そのグラスハウスを上から見れる場所まで来て、ペコロスが石に体当たりをして何とか屋根に穴を開ける事が出来た。
開いた瞬間にガスは一気に空中へと四散して消えていく。・・・だ、大丈夫なのかな?コレ。

───ドゴンッ

「わっ!何!?」

見れば1つの建物の煙突から出ていた煙が一気にゴーストガスの色に染まっていく。
色んな場所から僅かに残っていた研究員達の戸惑う声が聞こえてきて、混乱に陥ってるんだと分かった。

「・・・ぷ、ぷきゅう?」
「大丈夫だよ。ペコロスの所為じゃないから」

困ったような顔をするペコロスにリュウがそう慰めの言葉をかけて・・・って、意思疎通できてたんだね、リュウ。


「あのカマド、怪しいわねー」
「行ってみる?モモ」
「そうねー、何かあるかもしれないわー」

うんうんと何度も頷いてモモが先へと歩き出す。
中に入るとさっきの爆発音の時に壊れていたのかカマドが開いていた。
中を覗くと・・・梯子?どうしてこんな所に梯子があるの?見れば、悩むようなモモの姿。

「どうも此処ってただのカマドじゃなさそうね。降りてみましょ?」
「あ、モモ!!」

言いながら1人先へと進む。さっきまでとは違う行動力にちょっとビックリするんだけど・・モモ?
気になる事に対しては本当に凄い行動力を発揮するんだよね。そういえばラパラの灯台の時も凄かった気がする。
梯子を降りれば、今まで見た事のないような設備が広がっていた。私にはどんな機械か分からない。
ただ、モモが“凄い設備”だと騒いで辺りを見渡しているから、きっと凄いんだろうっていう程度。

「でも、ますます怪しいわね・・プラント」

呟いたニーナの言葉には賛成。
こんなものを地下に隠しておくなんて怪しい。

「こんな事が出来る技術者・・・・・技術者って、もしかしてー!」
「え?何か分かるの?モモ」
「・・・あっ!んー・・ううん、何でもないのー。
それより色々調べてみましょ?」
「・・・?うん」

何だか誤魔化すような言葉。それにリュウが不思議そうな視線を向けながらも頷く。
・・・やっぱり何か知ってるんじゃないのかな?知らないにしても、何か引っ掛かるモノがあるとか・・?
まぁ気になるけど、本人が話したくないなら待ってた方が良いよね。
私だってニーナには何も言ってないから人の事は言えないし。
それが本当に必要な情報だったらモモなら話してくれると思うから。



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