鳥篭の夢

青年期/自然界に背く者03



施設の中を進んでいくとレイでも開けられない扉が1つ。
別の場所を探してみれば、大きな機械が積んである部屋。
モモ曰くその機械達は『機械文明の遺物』の鍵の一種で、それにキーワードを入力すれば扉が開く仕組みになってるみたい。
試しに入れてみた“ペレット”というプラントの所長の名前を入れたら1つの扉が開いたし、それは間違いないと思う。
更なるキーワード探しに階段を降りると、その部屋には怪しい光が充満していた。
これって・・・もしかしてゴースト光?

「わー!すっごいゴースト光じゃなーい!?」
「確かゴースト光って危険なんじゃなかった?」
「そうねぇ、急がないと流石に身体がおかしくなっちゃうわー」

口調はおっとりとしてるけど、それでもやっぱり焦るような表情。
・・・って、早く手がかりがないか探さなきゃ。

「手分けして探すぞ!」
「うん!」

言葉に頷いて、それぞれにキーワードを探す。
酷い耳鳴りと頭痛。多分、長時間は耐えられない。
それにしても此処って野菜畑みたいなものなのかな?花壇じゃないみたいだけど・・・と、その中で1つ不思議な物が生っていた。
ペコロスみたいだけど、それよりもうちょっと小型の“レプソル種”と書かれた巨大玉葱。もしかしてキーワードとか?
モモを呼ぼうと思って顔を上げて、既に隣にいる事にちょっとだけ驚いた。
私と同じようにじぃって巨大玉葱を凝視している。

「“レプソル”?」
「これ、キーワードかな?」

問う言葉に返答は無い。
あれ?って思ってモモを見れば、何だか複雑そうな表情をしていた。・・・・モモ?

「どうしたの?モモ。大丈夫??」
「・・・え?あ、大丈夫よー。

慌てて笑みを取り繕うと、もう一度レプソル種と書かれた巨大玉葱を眺めた。
・・・あ、ダメだ。本格的にくらくらしてきた。酷い頭痛が“考える”という行為の邪魔をする。

「モモ、ごめん。そろそろ出ないと、流石にもう辛い・・・」
「・・そうねー、一度上に戻りましょう?」

モモの言葉に全員が頷いて階上へ戻る。
何度か深呼吸をすれば、ゆっくり頭痛が引いていった。
あぁ・・・本当にゴーストっていう物は人体に危険なんだって理解。
それから、多分あの“レプソル”がキーワードで間違いないだろうって話しになって、機械の部屋へと戻った。


「ふー・・・仕方ない“レ・プ・ソ・ル”っと・・」

カタカタとモモがキーワードを入力すると、扉が開いたと機械に表示された。
それにモモが1つ深いため息を漏らす。

「・・・・開いちゃったわね、やっぱり」
「モモ?」
「レプソルって私の父さんの名前なのー」
「それって・・・」

キーワードは此処に関係のある名前っていう話だから、それはつまり・・・───

「えぇ、此処にその名前が出てくるって事は・・父さん、此処で何か実験してたのよー。
此処の機械を見た時からもしかしたらって思ったんだけど、こんなのがあるって聞いた事無かったしー。
父さんたら私にナイショで何してたのかしらー?」

モモはどこか呆れたように肩を竦める。でもやっぱり表情は複雑で・・・そうだよね。
自分の親が何の為に必要なのか分からない怪しい施設に関係してるって思ったら、やっぱり不安になるよね。

「モモさんっ!所長を探して絶対に突き止めましょうね!!」
「えぇ、勿論よー!詳しく話を聞かなくちゃ・・・ね?」

ニーナがガシリとモモの両手を掴んで、それにモモも頷いた。ニッコリと普段と変わらない笑み。
それは多分強がりなんだろうけど、ほんの少しだけ安心して次のキーワード探しに行く事にした。

此処はゴースト鉱を扱う場所だからか、リュウ曰く“竜族の力”を見つけたりもして・・・何とかキーワードも見つける事が出来た。
1つはプロジェクト名で『AA』、もう1つはゴースト圧力機を6つ調べて、それを順番に並び替える事で扉が開いた。

・・・でも、最後のキーワードを調べてる途中に出てきたナメクジは気持ち悪かったぁ。
まさか集まって大きくなるなんて思わないし。思い直すと、あれも変異体だったのかな?
ペコロスみたいな植物以外に使うとあんな風になっちゃうなんて・・・なんだか怖い。
それは私がペコロス以外の植物の変異体を見た事が無いからそんな風に思うだけかもしれないけど。
それにしても、どうしてあんな変異体を作るんだろう?
そんな実験をする事のメリットが全然見えてこない。
モモも同じみたいで、答えが見つからなくて歯痒そうにしてるみたいだった。多分、父様が関連してるから尚更なんだろうね。

最後のキーワードを入力して、扉を開ける。

「さて・・最後のドアが開いたわー」
「あの先に所長がいるのは間違い無さそうですね!モモさん」
「そうねー。捕まえて色々話してもらうんだからー!!」
さんも頑張りましょうねっ!!」
「・・え?う、うん!そうだね」

張り切るニーナとモモ。私達はそこまで凄い意気込みがあるって訳じゃないけど・・・でもまぁお手伝いって事で。
不意に顔を上げるとレイと目が合って、ついへらりと笑みを見せる。
そうしたら思い切り髪を混ぜるように撫でられた。・・・何だろう?

「レイ?」
「ほら、さっさと行くぜ?」

何だか誤魔化された気がする。・・・・・・もしかしたら、気を遣ってくれてるんだろうか?ニーナと一緒にいるから。
そういえばモモの事は会ってからずっと“学者さん”って言うのにニーナには“王女さん”なんて滅多に呼ばないもんね。
出来るだけ名前で呼ぼうとしてくれてるのが分かる。
まぁ、暫くしたらモモも名前で呼ぶのかもしれないけど。

「本当に、変なトコで優しいんだから・・・」
「・・?何か言ったか??」
「んーん、何でもないよ」

不思議そうな顔するレイに一度笑って見せれば、やっぱり怪訝そうな目線を向けられた。・・・むぅ、酷い。



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