鳥篭の夢

青年期/逃げ出した守護者01



迅速に動いたお陰か、まだ手配が回らないうちに私達は関所を抜ける事が出来た。
もしかして母様に分かって頂けたのかなぁ・・なんて淡い期待も抱いたけど、まぁ真実は分からないから置いといて。
関所で“ズブロ火山の街道が通れるようになった”って聞いて、私達はラパラには寄らずにそのまま東へと進む事にした。
7年前はあんなに大変だったのになぁ・・ってしみじみ思う。

今、私達の目の前には目的である天使の塔が大きく聳えていた。

「ガーランドさん、今回は“待ってろ”なんて言いませんよね?」
「あぁ、分かっている」

深く頷いたのを確認。もしもまたあんな事になったら───今度は後悔するどころじゃないと思う。
リュウを見れば申し訳無さそうな表情。
あ、これは別にリュウの所為じゃないんだよ?嫌がられてでもついていかなかった私の所為。
だから大丈夫って安心させたくてリュウに一度笑んだ。
それから入り口を守る番人にガーランドさんが話を通して私達はその遺跡の階段を昇って行く。

「大戦後、竜族を滅ぼし使命を終えたガーディアンは、この塔で神に祈り、勝利を捧げた。
跪くガーディアン達の目前に神は姿を現し、身を捨て邪悪を退けた天使一人ひとりを労った伝えられる。
・・・つまり俺達ガーディアンはその使命の最後に・・神に会う事を許されているという事だ」

進みながらガーランドさんが説明してくれた。
つまり使命は終わりだって神様にお伝えするって事だよね?
神様に問うのはリュウだからって、私達は少しだけ離れた場所で様子を見守る。うーん、何事もなく会えると良いけど・・・。
それにしてもさっきの番人の言葉。“ゆっくりとお休み下さい”ってどういう意味なんだろう。あんまり良い予感がしない。

ねぇ───ガーランドさん?

?どうかしたのか?」
「え?ううん・・何でもない───あ!」
「いよいよって感じねー」

ゆらりと空の色が暗くなる。
でも何時まで経っても神が現れたようにも問うたようにも見えない。
と、気付けば空の色は元に戻って・・・あれ??神様は?


「待ってくれ、ディース!!ガイストは・・っ!!」

珍しくガーランドさんが声を荒げて・・ディース?神様じゃなくて??
一体何があったのかと駆け寄ってみれば困ったようなリュウと目が合う。
ニーナが不思議そうにガーランドさんへ近づいた。

「ねぇ、ガーランドさん。神様はいらしたの?」
「・・神は・・・・」

ゆっくりと、ガーランドさんが首を横に振った。

「いや、その前に・・人を探さないといけなくなった」
「人探し・・ですか?」
「ああ、名前はガイスト。俺と同じガーディアンだ」
「「ガーディアン!?」」

リュウと私の声が重なる。
一度顔を見合わせて、それからもう一度ガーランドさんへと視線を向けた。

「実は俺にも事態が良く分からんのだが、ガイストの事はウルカン・タパに行けば何か情報があるかもしれん」
「じゃあ一度ウルカン・タパに行こう」
「そうね!」
「全く・・面倒なこった」
「もぉ。レイ、そんな事言わないの」

レイが乱暴に頭を掻いて肩を竦める。
・・・すぐそんな風に言うんだから。

それからウルカン・タパに行って情報収集。
長老なら何か分かるかもって訪ねてみれば、座禅を組んだ老人の姿。
多分この人が長老様かな?私達の気配を感じたのかゆっくりと口を開く。

「・・・ガーランド、か?」

見ても無いのに誰がいるのか分かるなんて・・・ちょっと凄い。

「どうした・・?お主の使命は終わったのだぞ?」
「ですが老師。神は、塔にお出でになりませんでした」

言葉に、漸く長老様は目を開けてガーランドさんを見据えた。

「それはお主の心に迷いがあるからじゃっ!!
迷いを捨てよ、ガーディアン・ガーランド。ガイストのようになりたくなければ」
「老師、ガイストの行方をご存知なのですか?
お教え下さい、私は迷いを捨てる為にガイストに会わなければなりません!!」

ガーランドさんの言葉に長老様がため息を1つ落とす。

「───西の海面の上下する洞窟の向こうに戦いを捨てたガーディアンが住むと聞いた事がある。
しかしガーランドよ・・・ガイストのようになってはならんぞ。
神の言に異を唱え、逃げ出したあの男のようにはな・・」

戦いを捨てたガーディアン?
それは・・ガーランドさんよりも早くに竜族の事に気付いて?
長老様の言葉にガーランドさんはただ頷く。
部屋を出て、ガイストさんについて聞こうかとも思ったけど・・。
ガーランドさんは黙り込んでしまって何だか聞けるような雰囲気でもなくて、私達はそのままその洞窟・・タイドパレスを抜けた。



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