鳥篭の夢

青年期/逃げ出した守護者03



リュウがガイストさんに答えを言いに行ってから暫くして、突然の激しい咆哮と地響きのように大地が揺れた。
強い力がガイストさんの部屋から溢れるようで酷く不安を煽り、その力の片割れが不意に消えて恐ろしくなる。
リュウは大丈夫?ガイストさんは?中で何が起こってるの?
色んな疑問が脳内を駆け抜けて、とにかくガイストさんの部屋に入った。
そこには・・・血を流してぐったりと倒れるガイストさんの姿と立ち竦むリュウが・・え?どうして??

「ガイスト!」
「ガイストさんっ!?」

駆け寄って治療をしようとするけど、それを遮られた。小さく首を横に振る。

「あんがとよ、ねーちゃん。
だがお望みのディースの封印は俺が生きてる間は外れないんだ。だからしょうがねぇ。
ま、気にすんな。ガーディアンになった時から俺達は、死んでるのと同じだからな・・」

ガーディアンになった時から死んでる・・・?
言葉の意味は分からなかったけど、平然と笑う姿に胸が痛んだ。
彼は、私達が訪ねてきた時からこうするつもりだったんだろうか・・・?

「それに・・戦ん時、俺は竜を殺しすぎた。
いっぺん位竜に殺されないとバチが当たるってもんさ。
───ふぅ・・しかし、この強さが神を恐れさせた?」
「俺・・は・・・」

ガイストさんの瞳には既に光がなくて、終わりの時が近いのが分かる。
リュウが強く拳を握ったのが見えてそっと肩を抱いた。
今にも泣き出しそうなのに必死にそれを堪える表情。
大丈夫、リュウの所為じゃないから・・・泣かないで?

「いや・・こうやって、かつての敵すらも仲間にしちまう能力・・・か」
「え?」
「封印を外す役目がなけりゃ俺も行きたかったが・・・ガーランド、後よろしく」

まるで子供のように笑って、そうしてガイストさんは目を閉じた。
身体がゆっくりと灰になって崩れ落ちて・・・これがガーディアンの最期?
最初から何もなかったみたいに終わってしまうの??・・少しだけそれが怖いと思った。
ガーランドさんは暫くガイストさんの灰を眺めていて、それからゆっくりとリュウへと視線を移す。

「ガイストは分かってくれたか・・?」

それにリュウは一度頷いて、ガーランドさんも一度頷いて・・・。

「ディースの封印はこれで解けた筈だ。
行こう、神に会いに・・・」

何だか色んな疑問が胸中を渦巻いていて・・・だけど何も言い出せないまま、私達はもう一度天使の塔へと向かった。


初めのように遺跡の上にある祭壇じゃなくて今度は地下に降りていくと・・・えっと、裸のお姉さん?
多分ディースさんだと思う人が横たわってて、その周りを光り輝く壁が取り囲んでる。
これが多分ガイストさんの封印。

「・・・・ディース」

ガーランドさんが名前を呼ぶ。
それに呼応するかのようにバチバチと封印が音を立てて消え、ディースさんと思われる人が瞳を開けた。
ゆっくりと起き上がって・・あの、裸のままって気付いてるのかな?とにかくガーランドさんを手招く。
近づいたと同時に・・・

───ゴスッ・・ガッ・・ドガッ!!!

うわぁ、見事な3連撃・・・って、違うっ!?
ガードが間に合わなかったガーランドさんが吹っ飛ばされて足元に転がった。
ちょ・・え?何?何が起こってるの??
とりあえずガーランドさんを起こしつつ、現状把握に努めてみる。

「このオタンコナスのガーディアンめっ!!
よくも、このディース様を500年も閉じ込めたなっ!?ぶっとばすよ!」

裸のまま仁王立ちで・・・しかも、叩いてから言わなくても。
結局、ディースさんが怒ってる事以外は何が何やら良く分からない。

「・・・で、封印を解いたって事は、やっとあたしの言う事を信じる気になったんだね?」
「ああ───」
「遅いんだよっ!このバカ!!」

頷いて、近づくガーランドさんに鋭い一発を鳩尾に・・・・うわぁ、痛そう。
それからチラリとリュウに視線を向け・・・ってリュウの顔が凄い赤いんだけど?
・・・・・・あ!ディースさんまだ服着てないから。

───そうだ!レイは?
気付いてチラリと視線を向けると意外と平然とした姿。
・・・それはそれで複雑ですけども?
私の視線に気付いたのかレイと一度目が合って、それからニヤリと口の端を上げて笑う。

「ま、俺はそのテのはで見慣れてるから別に・・・いてっ!?」
「そんな事は言わなくて良いの!!」

思わず叩いちゃったけど、私悪く無いよね?あーもぉ、レイのバカッ!!
きっと火照ってるだろう熱を帯びた頬を両手で包み込んでリュウへと視線を向ける。
あ~ぁ、耳まで真っ赤にしてそっぽ向いて。でもこっちの方が可愛げがあるよね。
ニーナが何だか不機嫌そうな顔をしてるのがまた何とも可愛らしいというかなんと言うか。

「竜族が皆死んでしまっていたら取り返しがつかなくなる所だったけど。
まだ、この子が残ってる・・!」
「え?」
「それで・・神は?」
「慌てるんじゃないよ、ガーディアン!
此処は死んだ竜の気が強くていけない。場所を変えるよ?」
「場所、ですか?」

問うと、一度頷いて返された。

「西の火山の麓に祠があった筈だ。あそこに来ておくれ?
・・・西にある火山だよ、分かったね?竜ちゃん」
「う、うん」

リュウが何度も頷くとディースさんは楽しそうに笑いを零してから、その全身を眩い光の塊に変えて消えてしまった。
西の火山・・っていうと、ズブロ火山の事だよね?
その事を確認して頷くと、不意にニーナがリュウの傍に行って両頬を抓る。

「ちょっと!何嬉しそうな顔してるのよっ!?」
「いひゃ・・ニーナ、ちが・・・・」

慌てる姿に思わず笑う。うーん、2人とも仲良しだね。
でも今回は私を見られても助けられないよ?リュウ。



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