鳥篭の夢

青年期/神への導01



ズブロ火山の祠・・ギルドの人に聞いてもソレらしい場所は此処だけって言ってたから多分間違い無いと思う。
でも此処にあるのは石碑だけで、ディースさんの姿は見えない。

「ディースさんが言ってた場所って此処・・だよね?」
「うん・・・ぇ、うわっ!?」
「え・・リュウっ!?」

石碑が急に光ったと思ったら、リュウが石碑に吸い込まれるようにして消え・・・消えたっ!?え、何これっ!!?
ニーナが驚いて何度も石碑を叩くけどリュウが出てくる気配は無い。

「リュウ!?何処に行っちゃったのっ??」
「あの、ガーランドさ・・・あれ?」

・・ガーランドさんの姿も無い?
えーっと・・何があったのか分からなくてレイを見れば“分からない”と肩を竦められた。
モモを見ても同じように返される。
という事は、ガーランドさんも急に消えちゃったって事だよね?・・・石碑に?

「困ったわねー・・どうしたら良いのかしらー?」
「ま、俺達がとやかく言ってもしゃあねぇし、戻ってくるのを待つしかねえだろ?」
「・・・そうだね」

心配だけど、石碑の向こうなら私達にはどうしようもないもんね。
さっきニーナも叩いてたし、触って行けるものでも・・・

「え?」

石碑がさっきみたいに光を帯びる。
あれ?もしかしてこれって・・・

「きゃっ!!」
っ!!?」
さ───」

レイとニーナの声が重なって、でも最後までは聞こえなかった。
眩い光に包まれたと思えば・・石造りの床?
私のいる周囲だけが明るくて後は闇が続いているように奥は何も見えない。
此処は何だろうって思って顔上げる。
と、呆気にとられたようなディースさん・・だよね?下半身蛇だけど・・・。それにリュウとガーランドさんも!

「・・・あれま」
「姉ちゃん!?」
「・・ディース、役者は揃ったのではなかったのか?
それともに何か?」

全員の目線が私に向く。
・・えっと、今の状況は何?ディースさんに視線を向ければ小さく首を横に振られた。

「彼女はあたしにも想定外さ。
一体何が起こって───いや・・今はソレよりも神への道、だったね。
さぁリュウちゃん。これからアンタの“目”を開いて道が見えるようにしてあげるから、ね」
「道・・ですか?」
「そうさ。今のあたしの力じゃ神の元へは連れて行けない。
だから、その代わりさ」

何が起こってるのか分からない私にそう簡単に説明して、リュウに向かって魔力を向ける。
今まで感じた事も無い強い魔力。
でも、今の言葉からするとこれでも全力じゃないんだよね?じゃあディースさんの本気って・・・?
考えてゾクリと背筋が寒くなった。

「ちーっと痛いかもしれないけど、我慢すんだよ?」

途端に落雷がリュウへと落ちて思わず一歩後退る。・・・って、落雷!?

「リュウっ!?」
「あはは、心配しなくても大丈夫さ」

そのディースさんの言葉の通り、落雷が落ちた筈なのにリュウは平然とそこに立っていた。
怪我もしてるようには見えない。
パチパチとリュウの身体が帯電して、それからリュウの身体が光って一気に伸びた。ある一点をただ指し示す光。

「それが神の目だよ、リュウちゃん。
その光の示す先にガーディアン達を使って竜族を滅ぼそうとした神がいるんだ」
「北・・・か?」
「ずっと遠く・・海の向こうだろうね」
「海の向こうって事は、外海を越える・・って事ですか?」

問えばディースさんは僅かに表情を曇らせてしまった。

「どうやってそこへ行くかはまでは面倒見れない。
ごめんよ・・今のあたしじゃこれが精一杯。
後は、あんた達で頑張るんだよ。じゃあ・・行って来な、リュウ」
「うん」

頷いたリュウにディースさんは少しだけ安心したような笑みを見せる。
それからリュウの姿が消えて、多分元の場所に戻ったんだよね?
それからディースさんはガーランドさんの方を向いた。

「ガーランド、あの子を頼むよ。
───死なせるんじゃ、ないよ?」
「俺の殺した数多の竜族達にかけて、アイツが俺より先に死ぬ事はありえん」

言ってガーランドさんの姿も消えた。
ゆっくりとディースさんの視線が私に向いて、まるで懐かしいものを見るような視線。

「アンタは・・」
「え?」
「いや、何でもないよ。
大昔、アンタみたいな黒い翼の飛翼族に知り合いがいてね」
「黒い翼の知り合い・・ですか」

言葉にディースさんは頷いた。
確かに異種間が混ざるようになった大昔の方が黒い翼の率は高かったって文献にもあったけど。
でもそれでも黒い翼なんて滅多に生まれるものじゃない。
それにウインディアに不吉を齎す者だって産まれたらすぐに殺されていた筈。
よっぽど権力のある人が隠せばまだ・・・・っと、そんなに不思議そうな顔をしていたのかな。ふとディースさんが笑った。

「何、大した事じゃないさ。気にする事でもない。
それよりアンタ、飛翼族の割に強い力を感じるけど何処の生まれだい?
まさかウインディア王家って言うんじゃ・・」
「あ、一応そのまさかです。血筋的には・・ですけど」
「・・・・そうかい!あっはははははっ!
なるほどねぇ。あたしはつくづく縁があるのかね?」
「え?」

急にディースさんが笑い出して、その意味が分からなくて首を傾げる。
“縁”がある?

「いやいや。それより・・うん、強い魔力が眠ってるじゃないか!
そのままにしておくには勿体無いね。
これからの道中を考えると解放しておいた方が良いだろうに、どうして何もしないんだい?」
「───と言われましても・・・」

そんな方法は分からないし、そもそも力を眠らせている実感だって無かったのに・・・。
如何返して良いか分からなくて、でもディースさんはそれを感じ取ってくれたのか口の端に笑みを浮かべた。

「そうだね・・折角の機会だ。
力を解放してみるかい?」
「・・ぇ?」

急な申し出に答えが出ない。
力の解放?それが簡単に出来て良いの?
考えれば考えるほど頭痛に近いものを感じた。



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