鳥篭の夢

青年期/外海を越える方法01



「どうやら船が壊れてるらしくってー。
ベイトさんがジャンク村に引き取りに行ってるみたいなのー」
「どうしよう、リュウ?待ってた方が良いのかしら?」

ラパラに着くと、先に待ってくれてたニーナとモモの困ったような報告。
ベイトさんはいなくてシャッドさんに話を聞いたみたい。
それはありがたいんだけど・・そっか、船壊れてるんだ。
引き取りに行ったって事はすぐ戻ってくるだろうし大丈夫だとは思うけど、前回の事もあるから少し心配。

「いや、ジャンク村に行ってみよう。
もしかしたら何かあるかもしれないし」
「そうだね。待っててすぐに船が戻ってくるか分からないし・・・」
「前回の事もあるものねー」
「そうだな」

モモの言葉にレイを除く全員が頷く。
あの時は結局灯台を直しても戻ってこなかったもんね、船。
今はズブロ火山の街道も使えるから苦労しないで向こうに行けるだろうし、行った方が多分正解だと思う。

「何だよ、前回って・・?」
「あ、うん。前に待ってても船が戻ってこなかった事があるの」
「・・・・・成る程な。そりゃ待ってる方がバカらしいっつーか」
「でしょ?」

1人首を捻るレイに説明すれば、呆れたように納得された。やっぱり行くのが正解だよね。
今から急げば多分追いつくだろうって話になって私達は急いで出発する事にした。


ジャンク村はズブロ火山を越えてウルカン・タパよりも少し北に進んだ場所にあって、その名の通り壊れた機械が多くある。
その中でまだ使えそうな機械やパーツを組み合わせて今私達が使っている機械になるらしい。
私達は山のように積み重ねられた機械パーツ達を輝く瞳で見つめるモモを引き摺りながらベイトさんを探す事にした。

「ねぇ、
お願いだから離してぇ~!!」
「ダーメ!まずはベイトさんを探すのが先でしょ?」
「だってーぇ、あんなに機械があるのよー?オイルの匂いがするのよっ!?見て回りたぁーいっ!!」
「・・・愉快だねぇ」

私達の様子を見ながらレイが呟いた。
そんな事言うならモモを何とかして欲しいんだけどな?
野馳族は元々力が強いから、私だと気を抜いた途端に何処かに行ってしまいそうで大変なんだけど。
村の奥へ進むとドックらしき場所に辿り着く。
此処にも沢山のパーツ達があって・・・あ、待ってモモ!

「だってー、此処で船の修理とかしてるんでしょー?色々見て回りたいのにぃー」
「じゃあ、ベイトさんと会えたら後で好きに見て良いから・・ね?」
「本当ー?
「うん、本当!だから・・・ね?」
「・・・・・分かったわ~」
「よ・・良かったわね、モモさん」

しぶしぶといった様子だけど、漸く大人しくなってくれて一安心。
それに皆の苦笑が零れたのが分かった。
奥へ進んでいくとラパラの物だと思われる船と・・・あ、ベイトさんだ!全然変わって無いなぁ。

「ベイトさ・・!っと」

「え!?では、まだ修理が出来て無いんですか!!?」
「いやー、まさかこんな偉い・・っていうかこんなに早く来られるとは思わなかったので、部品が、その~~~」
「いや、そうですか。
しかし・・・困ったな、ギルドの者にはすぐに戻ると言ったんですが・・・」
「す、すみません。部品を探し出すのに手間取っていまして」

話し中みたいで声をかけるのを躊躇う。
でも・・話の内容から考えると、これは助けに行った方が良いんだよね?
リュウへ視線を向けると小さく苦笑された。

「来てみて良かったかな?姉ちゃん」
「そうみたい」
「もしかしたら機械がいじれるかしらー?」
「モ・・モモさん」

わくわくとした様子でモモが早速とベイトさんへと近づいていく。
それをニーナが半ば呆れ気味に眺めてから追いかけた。
私達も同じように近づいて、大勢だったからかベイトさんも私達に気づく。

「貴方達は・・ひょっとしてさんに・・リュウさんじゃないですか!?」
「どうもお久しぶりです」
「こんにちは、ベイトさん」
「いやお懐かしい!何時ぞやはすっかりお世話をおかけして・・・。
ところで今日は一体どうして此処へ?」

不思議そうに訊ねるベイトさんに“船を貸して欲しい”という事とその為にベイトさんを探しに来た事を伝える。
それに一度驚いた様に目を瞠ったけど、少しだけ困ったように頭を掻いた。

「お安い御用・・と言いたい所なんですけど、どうやら修理に時間が掛るみたいで・・以前のように待って頂くしか───」
「ねぇねぇ、船の修理で手伝える事って何かなーい?」
「あ!そういえばモモさんは機械がお得意でしたね!」
「本当ですか!それなら手伝って頂けると嬉しいです!!」
「本当ー?」

エンジニアの申し出に嬉しそうにモモが笑う。
うーん、本当に機械が弄りたかったんだろうなぁ。
“こっち”だと先導するエンジニアの後をついてさっさと船の中へと入って行ってしまった。

「生き生きしてたわね・・・モモさん」
「しかしこれで船が直るなら結果的には良かろう」
「うん。モモさんだから大丈夫だと思うけど・・」
「とにかく行ってみようぜ?」
「そうだね」
「ぷきゅう」

これで早く船が直ると良いけど。
そんな事を考えながら私達は船のエンジンルームへと降りた。



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