鳥篭の夢

青年期/外海を越える方法02



「それで・・このエンジンルームの部品が足りてないのね?ふ~ん・・・」

言いながらモモがエンジンへと昇って調べ始める。
無茶して怪我するんじゃないかって見てるこっちはドキドキ。
巨大エンジンの上からひょこりと顔を覗かせて、モモはニッコリと笑った。

「うん、これなら修理できるわー。
それでね?リュウ、足りない部品を探してきて貰って良いー?」
「あ、うん!良いよ」
「詳しい事は此処に書いてるから、よろしくねー?」

落とされたメモをリュウがキャッチして皆で横から覗き込む。
ぐちゃぐちゃのメモには部品を描いたんだと思われるイラスト。
えーっと・・・部品って呼ぶには大分でっかい気がするけど、これを見つけてくれば良いの?

「多分いくつかパーツに分かれてるから頑張って集めてきてねー?」
「・・・う、うん、分かった。じゃあちょっと行ってくるから」

「あ。はちょっと此処に残って手伝ってー?」
「え、私?・・・別に良いけど」

手伝い・・って何か手伝える事なんてあるのかな?
まぁ、モモが言うんだからあるんだよね?

「じゃあ皆はよろしくねー」
さん、頑張ってくださいね!」
「壊すなよ?
「それは失礼じゃない?レイ。
それに頼まれた事以外はしないもの」
「うふふー、そんなに凄い事は頼まないから大丈夫よー?」

楽しそうに笑いながらモモが皆を見送る。
私も同じようにして見送って・・・・で、何を手伝えば良いのかな?

「モモ、私は何をしたら良いの?」
「エンジンってこれでも繊細だから、あまり金属を直接置きたくないのねー?
で、なら飛べるから、私が欲しい道具を持ってきて欲しいのー」
「うん、分かった」

ザッと道具の名前と形状を教えてもらって、モモを手伝う。
確かにこういう時に翼があるのは便利かも。
見ればモモのノンビリとした口調とは裏腹に、手は素早くて無駄の無い動きをしてて凄いなぁって感心。
機械に関しては本当に素人の私でも、エンジンが確実に直っていってるんだって分かった。


「そういえばー」

不意にモモが作業を止めて顔を上げる。
あれ?言われた道具は全部渡したと思ったけど。

「え?何か欲しい道具ある?」
「ううん、そうじゃなくてー。
ってレイと付き合ってるのよね?」

・・・・は?

「・・・・・・え?あ、ど・・どうしたの急にっ!?」

思わぬ言葉に思考回路が一瞬停止。
それから凄く恥かしい気がして、一気に顔が熱くなった。
え?え?え?ど、どうしたのモモ??

「あら、違ったー?」
「違う訳じゃないけど・・・」

「で、それでねー?は虎男さんの何処が良かったのかなって疑問に思ってー」
「疑問?」
「だって口悪いしー、取っ付き難いしー、何考えてるか分からないしー。
とまるで真逆なんだもの。
レイには勿体無いかなーって」

あまりに真剣なモモの口調。
それが何だかおかしくて思わず笑みが漏れた。

「あはは、別にそんな事無いよ?
ほら・・モモはまだレイとは付き合い浅いでしょ。
虎人だし警戒心強いから最初は付き合いにくいかもしれないけど・・・アレで良い人だよ?」
「そうかしらー?」

うーんと頬に手を当てて悩む。まぁ普段のレイを見てたらそうは見えないかもしれない。
無愛想だし、やる気無いし、自分勝手だし、間抜けな失敗もするし。
でもアレはアレで可愛いんだけどね。
モモも、もうちょっと一緒にいれば分かると思うんだけどなぁ・・・。

「まぁ、勝手気ままな人ではあるけど?」

「───悪かったな、勝手で」

見れば、ぱたぱたって尻尾が機嫌悪そうに揺れる。・・・・って、レイ!?

「え、もうパーツ見つけてきたの!?」
「あぁ。とりあえず一通りソレっぽいのは見つけてきた」
「リュウ達は?」
「後から来るぜ。
俺が先に持ってった方が早いからな───ほら」

ぽいって袋を投げて寄越されて・・ズシリとした感触に中を覗けば機械のパーツが入ってた。本当だ。
バサリと背の翼を羽ばたかせてエンジンに上がってモモにパーツを見せる。
1つ1つ手にとって確認して笑顔で頷いた。

「うんー、これだけあれば大丈夫そう!
ありがとうー!!」

言うとそのパーツを抱えたままゴソゴソと奥の方へと消えていった。
不意にレイへと視線を向けるとまだ不機嫌そうな姿。
何だろう?さっき“勝手気まま”って言ったのちょっと気にしてる?

「───ね、レイ?怒ってる??」
「さぁて?どうだろうな」

声音だけでも分かる。まぁ怒ってるっていうよりかは拗ねてるって感じだけど。
とにかく羽ばたいてレイの隣に着地。

「でもレイが勝手気ままなのは元々でしょ?
それに私はレイの良い所も知ってるし」
「・・・・そりゃあ良かった」
「機嫌直らない?」
「元々悪くねぇっての」
「・・・・レイの意地っ張り」
「頑固者に言われたくねぇな」
「・・・む、酷い」

今度は私が拗ねて見せれば、押し殺すような笑い声。
・・・あ、ちょっとは機嫌直った、よね?
それが少し嬉しくて私も笑顔を見せれば乱暴に頭を撫でられた。
嬉しくない訳じゃないけど・・流石に子供扱いじゃない?って思う。
言えばまた怒るから流石に言わないけど。



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