鳥篭の夢

青年期/黒色の外海船01



「あれが黒い船・・外海船ねぇー?」

激しい海流を抜けた先にいた“伝説の船乗り”───っていっても本人、ククルスさんにはそれを否定されたけど。
でも外海を越えたって言うのは本当。
それも探検した・・っていう訳じゃなくて、向こうの大陸から来たという意味で。
どうやらククルスさんは今私達の眼前をゆっくりと迷走してるあの黒い巨大船に乗ってきたらしい。
あれに乗る事さえ出来ればもしかしたら・・・なんてククルスさんは言ってたけど・・・

「こんなのどうしろって言うのかしらねー?」
「うーん・・・私やレイなら飛び移れなく無いけど、皆には無理でしょう?」
「それは流石にねー・・?困ったわー」

肩を竦めるモモに同意。
これは流石に困ったかも・・・。

「・・・・とりあえずー」

何するんだろう?
ゴソゴソとモモがバズーカを構えて・・・・って、もしかして。

「モ、モモさんストップ!」
「待って!モモ!!」


───ドォーンッ・・!


間に合わなかった。
リュウと私の制止の声が届く前に、モモのバズーカは黒船の船体に小さな衝撃を加えた。
でも・・・あれ?何も無い。
外海船だからかな?流石にバズーカじゃあ穴は開かないみたいでちょっとだけ安心。

「こんなのじゃあ止まらないわよねぇー」

「───来るぞっ!!」
「あらー?」
「・・・わ、皆船に掴まって!!」

ガーランドさんの声に見てみれば巨大な大砲・・?っていうのかな、アレ。それの砲口が私達の船に向いていた。
思わず叫ぶと皆はほぼ同時に船縁に掴まる。
狙っていないからか弾は直撃はしなかったけど、それでも海に落ちて水飛沫が上がった。
船がすぐ離れてくれたお陰で直撃を避けれて、大きく揺れていた波がおさまってから思わず近くにいたリュウと顔を見合わせて苦笑。
まぁ、皆無事で良かった・・・かな。
視線を大きく動かせば、びしょ濡れのレイがモモに文句を言っていた。眉を寄せたモモが私を見て・・・

「も~、!!
この虎男さん何とかしてぇー!!」
「如何考えてもお前が悪いだろーが!?」
「そんな事ないものー!!」
「あー・・・まぁまぁ、良い大人が喧嘩しないで?」

まるで小さな子供みたいにモモが私の後ろに隠れて、レイにべぇっと小さく舌を出した。
って言うか何で私に言うんだろう?
見ると、レイの尻尾が機嫌悪そうに大きく揺れてる。

「アイツが攻撃なんかするから、でかい船が怒って反撃してきたんだろ?」
「そんな事ないわよー!」
「まぁレイの言葉は否定出来なく無いけど、近づいたのも要因の1つかもしれないし・・ね?2人共」
、ハッキリ言わねぇと学者さんにゃ分かんねぇんじゃねーのか?」
「そうよー、
虎男さんにビシッと言ってやってーぇ!!」

だから・・・どうして2人とも私に言うのかな?
そんなの返答に困るだけで・・あぁ、思わずため息。

「それよりも、今はどうやってあの船に乗るのかが問題だと思うんだけどな?」
「そりゃあ、まぁ・・そうだな」
「うーん、それはそうねー。
あ、リュウはどうする?向こうに行くの諦めちゃうの?」
「ううん、此処まで来たんだし諦めるつもりはないけど・・」

そのままリュウが口篭る。
あの船に乗る方法が見つからないんだよね?近づいたらまた船に攻撃されるかもしれない。
何か良い方法は無いかなぁなんて考えているとモモがニッコリと笑う。

「そっかー、じゃあぶっつけてでも何でもしてあの船に乗らないとねー」
「ぶつけ・・ってモモさん・・・」
「・・・愉快だねぇ」

予想外の物騒な考えにリュウも一度たじろぐ。
それから何かを思いついたような表情になって“ありがとう”ってモモにお礼。
何だか決意を秘めたような瞳に少しだけ嫌な予感がしなくも無いんだけど・・・リュウ?

「何か良い方法でも思いついたの?」
「・・・うん、ちょっとね。ジグさんに訊いてくる」

言って、リュウは船室へと入っていった。
レイとモモと私とで顔を見合わせて“分からない”と仕草だけで示す。

暫く待っているとリュウが戻ってきて“この船を黒船に突っ込ませる”って・・・・あぁ、何だろうリュウに変な決断力が。
どうやらさっきジグさんに了解を貰ってきたみたい。
それから甲板にいたら危ないからって私達は船室に避難する事になった。
えーっと、ギルドの船なのにそんな事をしても良いのかな?
でもジグさんが許可したんだし大丈夫・・・だよね、多分。



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