鳥篭の夢

青年期/黒色の外海船02



───ドガッシャァァァ・・ンッ!!


「きゃ・・っ!!」
「───っと!?」

凄い音と衝撃に思わずバランスを崩して、それをレイが咄嗟に抱きかかえてくれた。
それとほぼ同時にペコロスがエンジンルームへ転がっていくのが視界の端に映ったけど・・え、大丈夫なの?あれ。
凄い勢いで転がり落ちた先を思わず眺める。

「大丈夫か?
「う・・うん。でもペコロスが・・・」

「姉ちゃん・・皆、大丈夫!??」

言い終わる前に、リュウが慌てた様子でブリッジから降りてくる。

「あー・・うん、私は何とか」
「すげー揺れだったな、リュウ?ペコロスが落ちたぜ?」
「え、ペコロスが!・・だ、大丈夫かな?」

心配そうにリュウが梯子の下を覗きこむ。
私も同じようにすると目を回してるペコロスの姿が目に入った。
まぁでも何とか大丈夫そうかな?
一緒にモモの姿もあって2人共怪我をしてるようには見えない。

とにかく全員の無事を確認して、これからの事を話し合う為に皆で集まった。


「どうにか黒い船を捕らえる事が出来たようだな」
「ですね。えっと、確かこれで黒い船に乗り込めたら外海に行けるんだよね?」
「えぇ。黒い船は自動船だって話だからー、ブリッジへ行って自動装置をいじったら何とかなると思うの」

大きく頷くモモの姿。
機械に強い人がいるって本当に心強いって思う。
不意に小さな丸い窓からニーナが黒い船を見上げて、決意したように何度も頷いた。

「アレだけ大きいし、ブリッジに着くまでは時間がかかるかもしれないけど・・でも、何とかなるよね?」
「うん。とにかく黒い船に行ってみよう!」

リュウの言葉に全員で頷く。
それで、ジグさんまで巻き込む訳にはいかないから先にラパラに戻ってもらう事にした。
ブリッジに行って、此処まで一緒に来てくれたお礼と船の事を謝ってもらうようにお願いして別れる。
“気にすんなって、そっちこそ気を付けてな!”と笑ってくれて、良い人だなぁ・・なんて今更ながらしみじみ思った。

それから皆で黒い船を散策していく。
外観と違って中は思ったよりも広くなくて、1つ1つの部屋が広い感じ。
時折カニの様なモンスターが集団で出てきたりしたけど・・外殻は硬かったけど関節狙ったり魔法で充分対処できた。
木箱を組み合わせて道を作ったりして先へ進んで、何とかブリッジらしき場所まで辿り着く。
うーん・・何だか凄い機械。
私達じゃ使い方が分からないからモモにお願いすると、ガチャガチャと機械を弄くって悩むように腕を組んだ。

「モモ、何とかなりそう?」
「ええ。コレで船の行き先は決定できるみたいねー。
でも今は止まっちゃってるから、起動させなきゃいけないけど」
「起動・・という事は、何かをする必要性がありそうだな」

むむ、と腕を組むガーランドさんにモモが一度頷いた。

「そうなのー。これを動かすには“ブースト・カウンタ”って言うのが分からないとダメなのね?
えぇーっとー・・・下のフロアにモニタールームがあるみたい。
そこでカウンタ数を調べて来てくれるー?」
「うん、分かった。下のフロアだね?」
「そうよー。じゃあブーストスタートするから、お願いね?
カウンタが100になったら私に教えてね?」
「・・・・ったく、面倒くせぇな」
「レイさん・・・」

乱暴に頭を掻くレイにニーナが苦笑。
スグにそういう発言するんだから・・・もう。
でも私達は此処に残ってて良いって言って、リュウとレイとガーランドさんの3人でカウンタを見に行ってくれた。

───ピ・・・ピ・・・

ブーストスタートしてから電子音がブリッジに響いている。
一応私達も此処でカウントしてるけど・・大丈夫かな?
もうカウント100まで残り10位と言う所で3人が戻ってきて丁度100の所でモモに“今だ”と伝える。
それと同時にモモがスイッチを押せば・・・・あれ?何も起こらない?


───ガタンッ

・・じゃなかった。
一拍遅れて機械が動き出して船体が小さく揺れる。
どうやら何とかなったみたい。

「やったね!モモさん!!」
「無事に動いて良かったわー」
「お疲れ様、モモ」
「ぷききゅ」
「うん、ありがとうー。、ペコロス」

ニーナと私、あとペコロスで言葉をかけて笑みを浮かべる。
これで外海の向こうに行けるんだよね?
神様の住まう土地・・・か、本当にどんな所なんだろう?

「あれ、リュウ?その光って・・・」
「う、うん」

リュウの身体が光に包まれて、真っ直ぐと伸びる。
ディースさんが神の目って言ってた道を示す光。
私とガーランドさんは知ってたけど皆は初めて見るからか、それに目を瞠っていた。

「今のが・・・?」
「神への道・・・俺が・・リュウが会わなくてはならない神への・・・船はどうやら光の指し示す方向へ進んでいるようだな」
「外海の向こうの大陸・・って事ですよね?」

口を開くニーナにガーランドさんが答えた。
・・・・海を越えた、あの光の向こうに神様がいる。

「神かどうかは知らないケド、後は勝手に船が運んでくれるわー。
ま、何日かかるか分からないしー・・・・着くまでゆっくりさせてもらいましょ?」
「まだ食べれそうな食糧も結構あったからちょっと時間がかかっても大丈夫そうだしね」

1年とかかからない限りは大丈夫なんじゃないかな?なんて・・・。



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