青年期/最果ての大地01
「とうとう着いたね・・」
船から降りてから、ニーナが1つ伸びをしてニッコリとリュウに笑いかけた。
此処が外海を越えた最果ての地・・・かぁ。
船着場から見る限りだと何だか普通に見えるんだけどなぁ。
「パッと見、向こうと変わらない感じだよね?
着いたって実感湧かないかも・・」
「うん、確かにそうかもしれない・・」
リュウもザッと辺りを見渡して一度頷いた。と、レイが僅かに肩を竦める。
「どうだかな。黒船位のでかいモンスターがいるかもしれないぜ?」
「に、兄ちゃん・・・」
「ちょっと脅かさないでよ、レイ!」
イキナリ何て物騒な・・・。
「ともかく、誰も詳しく知らぬ土地だ。
気は抜かん方が良いだろうな」
「そうねー。でも・・機械が色々あるのかしらー?」
「モモ、落ち着いてね?」
「初っ端から思いっきり気ぃ抜いてんじゃねーよ」
わくわくと胸を弾ませるようなモモの言葉に思わず脱力。
お願いだからジャンク村の時みたいな事は止めて欲しいかも。
1人で我先にと歩みだすモモを追いかけるように私達も歩き出した。
この港・・コンビナートって呼ばれてるらしいんだけど、情報を集めながら私は酷い違和感に襲われていた。
人の着ている服の違い、船着場を出た途端に目に入った私達の大陸よりもずっと発達している機械文明。
機械兵も攻撃する様子はまるで無いとはいえ、まるで一般住人のように街の中を動いていた。
でも私の感じた違和感はそんな所にあるんじゃなくて・・・多分、此処の人達の感情の希薄さにあるんだと思う。
「何か・・気味悪ぃヤツらだな・・・」
「・・・うん」
レイの言葉に頷いた。
普段なら“そんな失礼な事言わないの!”なんて窘める所だけど、これには同意できた。
あまりこの街に長居したくなくて・・それは皆も同じ考えみたいで、一通り情報を集めて早々に街を出る。
街を出てすぐに目に飛び込んできた荒れ果てた大地。
それに困惑しながらも今日はキャンプで身体を休める事にした。
「こっちの連中、精気が無ぇって言うか・・・」
「何だか機械兵みたいだったね」
レイの呟く声にそう言葉を継げば、がりがりと乱暴に頭を掻いた。
「・・・・愉快だねぇ。
この先、何が出るか分かったもんじゃねぇ」
「・・・うん、でもきっと大丈夫。
皆一緒にいるし、別に1人じゃないんだから」
少しだけ小さく笑う。
見知らぬ土地に対する不安はあるけど、同時にリュウもレイも一緒にいるから大丈夫って確信。
ニーナも絶対に私が守ってみせる・・・。
それは一方的ではあったけど、母様との約束だから。
だけど・・
「“何も無い”・・・かぁ」
「え?どうしたのー?」
「ククルスさんが言ってたでしょう?
向こうには何も無いって・・・言葉の意味が少しだけ分かった気がする」
確かに沢山の機械達、私の理解出来ない高度な機械文明、そういったものは沢山ある。
だけど、それと同時に何もないと思ってしまう。
緑の豊かな大地も、感情豊かな人々も・・・。
あぁ、そうだ。この大地には“生きている”ものが何もないんだ。
「こんな枯れ果てた淋しい大地の先に、本当に神様がいるのかな?」
──信じられないの?リュウの事が・・・。
不意に頭に声が響いて、視線を移動させれば私の姿。
不信な瞳を自分に向ける。
ううん・・違う、リュウを信じてないわけじゃない・・・!
そんな事ある筈がないじゃない!!
そうじゃないの・・・。ただ、この大地が余りにも荒れ果てて、人々が機械みたいで・・・・・何だか───。
──そう・・私は怖いんだよね。
これから先、私達がどうなっていくのか分からないから。
途方も無い路、何が起こっても不思議じゃない現状。
自分も、リュウも、皆もどうなってしまうか分からない。
それでも自分の信念を貫き通せるか・・・“姉”として真っ直ぐ立っていられるか不安なの。
声に反論出来ない自分がいた。
・・・そう、かもしれない。
多分私は怖がってて、今を不安に思ってるんだよね。
でも大丈夫。
その為に力も解放して貰ったんだし、自分で決めた路だから・・最後までリュウと一緒に行くよ。
それに早くティーポだって見つけなくちゃ・・・ね?
答えに納得したようにもう1人の私が消える。
周りを見渡すけど、もう1人の私に気付いた人は他にいないみたい。
もしかしたら、葛藤とか不安を具現化したものなのかもしれない。
でも私の答えは最初から1つだから・・・この世界が如何であれ、この先に何があれ、私はリュウとニーナを守る。
それからティーポだって───流石にこっちにはいないだろうけど、リュウの事が終わったら早く捜さなくちゃね。