鳥篭の夢

青年期/最果ての大地02



コンビナートの先にある、そこの人々が“機械墓場”と呼んでいる場所を抜けた更に先。
ウルカン・タパを一瞬だけ思い出させるような巨大建造物。
寂れている様子から考えて多分機械文明の遺跡なのかな?
ずーっと視線を移動させて行くと、その建築物の頂点には六角形をした機械がくるくると回っていて・・・。

「・・あれ、何だろう?」

リュウも気がついたみたいで怪訝そうな瞳でソレを眺めていた。

「うーん・・モモ、分かる?」
「さぁー?でも調べてみたら分かるんじゃなーい?」
「それもそうね。じゃあ行ってみましょう!」

肩を竦めるモモにニーナが頷いた。
それもそうだよね?モモが全部の機械を把握してる訳じゃないだろうし。
それを知っていく事も、もしかしたらモモの目的の1つなのかも知れない。

散策しながら思う。
コンビナートもそうだったけど扉が勝手に開くのって少しだけ怖い。急に閉まりそうじゃない?なんて。
場所によっては一方通行だったりするし機械っていうのも結構不便。普通にどちらからでも開いた方が良い気がするけど。
・・・と。くるくると回ってる機械の真下にある部屋に入ると、何だか見覚えのある機械が目に入る。

「あれ?コレってウインディアの地下にあったのと同じ?」
「ですねー・・」

うーんって悩むようにニーナが腕を組む。

「とにかくコイツを動かせば何処かには行けるって事だよな?」
「だと思うけど・・・」

何処に通じてるかとかは全然分からないんだけど、移動する機械である事は確かだものね。
不意にリュウがその機械へと無防備に近づいていく。
だ、大丈夫かな?

「・・・?何か落ちてる───鍵?」

拾い上げたソレは鍵・・なのかな?
見た事のないタイプだけど形状は鍵みたいな感じ。

「もしかしたら何かに必要なのかもしれないわねー」
「そうしたら次はこの機械を動かす方法を探さなきゃね。
前は近くに小さな機械があってハニーが動かしてくれたんだけど・・・」
「んなもん此処にはねぇしな」
「ふむ。何処か別の場所にある・・という事か」

ガーランドさんが瞳を細めて呟いた。

「多分そうだと思うわー。
この機械を動かす為の何かがある筈だものー」
「じゃあソレを探しに行こう!」
「そうだね」

リュウの言葉に頷いて、今度はその機械を動かす機械?を探し歩く。
と言っても、一方通行で通れない扉以外で探さなきゃイケナイ。
だからなのかな?大体全部探しつくしたと思うんだけど目的の物は全く見つかる気配が無かった。

「全然それらしいモノが見つからないわねぇー?」
「やっぱりあの通れなかった扉を何とかしないとダメなのかな?」
「つっても鍵穴とかも無さそうだし、俺にも開けれねぇぜ?」

肩を竦めるレイ。それが今現在お手上げ状態の理由の1つなんだよね。
レイだったら錠前破りが得意だから鍵穴さえあれば扉を簡単に開けれちゃうんだけど・・・今回は開かないのに鍵穴も無い。


「ぷっきゅきゅー!!」
「ペコロスっ!?」

突如ペコロスが“何かを見つけた”と言わんばかりに地面のガラスに飛び込んでいった。
ガラスの割れる激しい音と共に、ペコロスの姿が落ちていくのが見えて・・・あ、もしかしてこの下にも部屋があったの!?
前だけ見てたから床下は全然気付かなかった・・・って、そうじゃなくて早くペコロスを助けなくちゃ!

「あ、さん!」

いち早く飛び込んでいく私にニーナの声が響いたけど、もう私の身体は下へと落ちていて戻るのは不可能。いや飛べば戻れるけど・・。
とにかく翼を広げて衝撃を緩和させながら降りていけば、そこにはガラスの上で目を回すペコロスの姿があった。
ガラスで切ったんだと思う少々の傷と、落ちた衝撃で目を回してるだけみたい。
良かった、軽い怪我ですんで。

「大丈夫?───アプリフ」
「ぷきー」

唱えれば癒しの光がペコロスを包み込んで、ペコロスが目を覚ましたみたいに私を見る。
よし、これで大丈夫。よしよしって何度か頭を撫でてから部屋を見渡すと、そこには怪しい機械みたいなもの・・・・もしかして、これ?

「ペコロス、知ってて落ちたの?」
「ぷきゅ?」

不思議そうな顔。偶然?・・・・でも、そうだとしてもやっぱり凄い。
あ、それよりも皆を呼ばなくちゃね。
モモならこの機械の事、何か分かるかもしれないし・・・。

っ!大丈夫か?」

呼ぶより前にレイが軽やかに着地。
それに私は一度頷いて返す。

「それよりコレ見て?」
「・・・なるほどな。コイツを見つけて降りてきたって訳か」
「ぷきゅーぅ?」
「お手柄だよ」

僅かに笑って不思議そうなペコロスの頭を乱暴に撫でる。
それから皆を呼び寄せて、この機械を見せた。
モモは目を輝かせながらその機械を見て、それからソレを起動させるスイッチらしき物の傍で見つけた文章をじっと眺めるように読む。
もしかしたら取扱方法なのかな?
何度か納得したように頷いてからモモは顔を上げた。

「うん、分かったわー」

ニッコリと笑うモモにホッと一安心。
さっきリュウの拾った鍵を使うと、機械が動き出す特有の音が部屋に響いた。
それからモモの指示通りにして機械を動かしてモモがスイッチを引く。
レーザーが伸びてヒューズって言う4本の棒に当たった。
モモの考えによるとさっき見つけたウインディアの地下にあったのと同じ機械の事を“ポート”と呼ぶみたい。
で、この機械を使えばポートが起動する筈だって事で、戻って見ればモモの考え通りポートからは光が柱みたいに伸びていた。

「じゃあ行って見ましょうー!」

わくわくした様子でモモはポートに乗り込んで消える。
でも・・これが何処に続くのかは分からない。
モモが言うには、出力からしてウインディアの時の距離よりももっと遠くに移動出来るみたいだけど・・・。
それでもその先は神様の元じゃないのかもしれない。
・・・だけど、まぁ何かの切っ掛けにはなるよね?
意を決してポートに乗り込むとふわりと身体が浮遊する感覚。それに思わず目を瞑った。



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