鳥篭の夢

青年期/竜族の隠れ里01



「愉快だね・・・あんだけ苦労して外海に出て、結局はこうして戻ってきただけかよ」
「まさかポートがこっちの大陸に続いてるなんてね・・?」

まさかポートの辿り着いた先が機械浜・・・ウルカン地方だなんて誰が想像しただろう?
ふりだしに戻ったのかと1つため息。
アレからいきなりハニーが走り出して、追いかけた先が見た事あるって話になって・・・それが機械浜にあるコンテナ船だって。
私は行った事がないから分からないけどニーナが確認してくれたからそれは確か。
レイが乱暴に自分の頭を掻いて軽く肩を竦めた。

「こんな調子で神様なんて探せるのかね?」
「ふむ・・・まぁ、ふりだしに戻った感じだな。
何処を探すべきか・・・」

ガーランドさんも深くため息。
だけどあれだけ苦労してもポートで一瞬って事は・・・

「案外、ふりだしでも無いかもね?」
「え?姉ちゃん、それってどういう事?」
「だって此処までポートで一瞬でしょう?
外海が隔ててるだけで世界って大きくないのかも・・。
それにあのポートは一応使えるんだし、単にふりだしって訳でもなさそうじゃない?」
「あ!そーかっ!!?」

ポンってモモが手を叩く。

「ポートってつまり神様の時代のものなのよー。
だって神様にとっては世界なんて小さい筈だもの!
神様・・っていうより機械があった時代には、きっと皆こんな風に世界を行き来してたのよー!」
「えっとモモさん、それはつまり機械と神様には関係がある───?」
「さぁ?そこまでは知らないー」

ニーナの言葉に、モモが言葉を投げて・・・。
うん、そうだよね。流石にそこまでは分からないよね?

「機械は神々の遺せし物・・・という訳か」
「そうそう!上手い事言うわねー」

ガーランドさんの言葉にモモが笑みを見せた。
それからリュウが腕を組んで悩む仕草。

「じゃあポートを使えば神様に近づけるのかな?」
「そうかも?じゃあ早速、さっきのポートを調べてみましょ!!」

意気揚々と歩き出すモモの後姿に思わず苦笑。本当に機械好きなんだね。
まぁ、他に詳しい人なんていないから助かるけど。

それからコンテナ船内を散策してると、さっきの遺跡の上でくるくる回っていたのと同じ機械を見つけた。こっちは回ってないけどね。
“ポート・ドライバーアンテナ”っていう名称らしいそれをガリガリ耳に五月蝿い音が聞こえなくなる場所に調整。
これで大丈夫だってモモが言うから大丈夫・・なんだよね?多分。
さっきのポートに戻って近くにある小さな機械・・ハニーが動かしたのと近いものだと思う・・を、モモが動かして私達はポートに乗った。
強い光に包まれて・・・それから、何だか強い力を感じた。
荒々しい訳じゃない酷く静かな力。


「モモ、此処が何処か分かる?」
「一応“ドラグニール”って場所に設定してみたんだけどー?」
「ドラグニール・・・」
「リュウ?」

呆然と呟くようなリュウにニーナが心配そうな瞳を向けた。
それに気付いてリュウは小さく笑ってみせる。

「ううん。何でもないよ、ニーナ。
ただ少しだけ懐かしい気がして・・・」

懐かしい?その言葉に少しだけ引っ掛かりを覚える。
竜族にとって何か関係のある場所なのかな・・・?
考えながらポートの部屋から出ると、目の前に広がったのはボロボロの柱と石造りの壁、それとまるでテントみたいな家がいくつか。
幾人かの姿も見えるけど・・もうご老人とか年齢を重ねてる人なんだって分かった。

「お・・お前達、今此処から出てきたか・・っ?」
「あ、はい。そうですけど・・・・・って行っちゃった」
「どうかしたのかな?」

言い終わる前に緑色の衣装を身に纏った男性は走り去った。
やっぱり遺跡から急に人が出てきたんだしビックリするよね・・・?
不安そうな瞳を向けるリュウに“大丈夫だよ”って言って安心させてから、男性が消えていった方を見やる。
1人の老人の姿。
曲がった腰を精一杯に伸ばして、そのご老人はリュウを見据えた。

「うむ、これは・・・」
「え?」


皆の者!宴じゃーぁっ!!


ご老人の響き渡るような声に村全体がざわざわと騒がしくなる。
そのまま家に案内され、あれよあれよという間に宴の準備は整った。
色んな料理と器に注がれてるのは・・・お酒?だよね。
どうしよう?私あんまり強い方じゃないんだけどなぁ。

「どうぞお寛ぎを・・・。私はこの村の長、グリオールと申します。
そして此処にいるのは全部貴方と同じ竜族です。・・・・リュウ様」
「───な!?」

ガーランドさんが酷く驚いた様に眼を見開く。
多分それは、滅ぼしたと思った竜族が生き残っていた事への驚きだと思う。
その様子にグリオールさんは緩く瞳を細めて小さく首を横に振った。

「驚く事はありません、ガーディアン殿。
我々は大戦の最中に竜の力を捨ててこの地に逃れてきたのです」
「我らガーディアンに気付かれぬように・・・か?」
「ふぇふぇ、そうじゃ。全てはこの時を待つ為にですわい!」

近くにいた老婆が笑った。
“この時”?そういえばさっきもリュウの事を様付けしてたし・・。
ニーナも気になったのか不意に立ち上がってソレを訊ねるけどグリオールさんが首を横に振ってそれを制した。

「いずれ、お分かりになります。
それよりも今はどうかお寛ぎ下さい・・・竜の御子と、そのお仲間よ」
「えっと・・」
「さあさ、お食べ下され。
この肉は砂漠の暑さに一番ききますからな」
「あ、ありがとうございます」

皿に盛られていた肉を小皿に分けて寄越されて、それを受け取りながら思わず苦笑。
今はまぁ頂くしかないみたいだよね?
詳しい話も“いずれ”でかわされちゃいそうだし・・・。

「ほら、ニーナも座っていただきましょう?」
「あ、はい・・そうですね、さん」

どこか納得いかないという面持ちではあるけどニーナも座り直した。
どちらにせよ教えてもらえるなら、今無理やり問いただして雰囲気を壊す必要性は無いんだから・・・。
そんな事を考えながら目の前に並んだ料理に手を付けた。
折角用意してくれた料理はちゃんと頂かないとダメだしね?



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