鳥篭の夢

青年期/死せる砂漠01



話によると、女神ミリアはドラグニールよりずっと北・・・死せる砂漠を更に越えた先にいるみたい。
それからホイスさんという方を紹介してもらって、その人が砂漠の越え方とかを教えてくれるらしかった。何故か砂豚も一緒。
グリオールさんは“竜の御子が、竜族の悲願を果たす時だ”なんて言ってたけどリュウはただそれに曖昧な表情を向けていた。
でも、そうだよね・・。
ボノさんだって“自分の意志のままに”って言ってし・・やっぱり如何するかはリュウが決める事だもの。
とにかくお世話になった事に礼を言って、それから私達はホイスさんと共に砂漠の前へと歩みを進めた。


「此処までは誰でも辿り着ける。
問題は、此処からの死せる砂漠・・・生きる物とて無い迷いの土地。
誰も行って・・・帰らない」
「何だか聞き覚えのある台詞ね・・」
「外海を渡る時も似たような事を言われましたもんね」

私の呟く言葉にニーナが思わず苦笑。
そうなんだよね・・外海も誰も渡れない、誰も帰ってこないって言われたっけ。
それにレイが軽く肩を竦めて見せた。

「神様は俺達にあちこち動き回られるのがお気に召さないのさ」
「強ち否定できない気がするから嫌なんだけどね?それって・・・」

「それは知らんが女神は砂漠を越えた先にいる。
俺は砂漠の越え方をお前達に教えるから、女神に会う為に進め」

少し特徴的に聞こえるホイスさんの言葉。でも砂漠の進み方は丁寧に教えてもらった。
星の見方、朝は陽射しが強すぎるから絶対に夜に歩く事・・・まぁ今の段階で既に結構暑いし、これで歩き回りたいとは思わないけど。
後、砂豚を一頭頂いた。
砂豚は帰巣本能が強いから、もし迷ったとしても此処まで戻ってこられるらしい。
それから私達は夜を待って砂漠へと出発した。


「えっと・・・北の大星、だよね?
だから多分あっちに進んでいけば大丈夫なんじゃないかな」
「そうだな。あの星を目印にして進めば迷う事はなかろう」

星を確認しながら歩く。一面に広がる砂・・それとたまに見かけるサボテン。
植物なのにこんな所にいるんだから凄いよね。
サラサラとした砂が逆に歩きにくい。
思ったよりも体力使いそうだなぁなんて初日からそんな事を思った。

それでも初めの内は順調だった。
朝は暑かったけど出来るだけ身体を休めていれば何とかなったし、他愛ないお喋りだって出来た。
暑さで寝られない時は、ボノさんが良いって言ってくれて持ち出した本を幾つか読んでみたりもしたし。
だけどそれが4日、5日って続くと砂漠の辛さを思い知らされる。
暑さで回復しきらなかった体力に更に疲労が圧し掛かってくる。
精神的な疲労って言うのも多少はあるだろうなぁ・・・どっちを向いてもどう歩いても広がる砂礫が途中から酷く辛く感じた。



6日目・・ぐったりとするニーナとモモにとりあえず翼で扇いで少しでも風を送る。
これが外だったら酷い熱風なんだろうけどテントの中だからか多少は涼しい気もしなくもない。
でも私の体力も正直限界近い。

「も・・砂漠も、終わり・・・ですよね?さん」
「うん、きっと大丈夫。
ニーナ、少しお水飲んだ方が良いよ?あまり我慢すると脱水症状起こすから・・」
「ぁ・・・は、い・・」

よろよろと起き上がろうとするニーナを支えて、少しだけ塩を加えた水を渡す。

「少しお塩入れたからしょっぱいかも。
でもゆっくり飲んでね?」

言葉には応えずにニーナは何度も頷いて水を口に運ぶ。
ゆっくりと飲み下していくのを確認してそっとまた寝かせた・・・今度はモモ。
4日目位に教えてもらったんだけど本当は暑さが苦手だって言うんだから・・本当に驚いた。
如何してソレを早く言わないのかって訊いたら“虎男さんにバカにされると思って”って、別にそんな事無いのにね。
同じように薄めの食塩水をもう1人分作ってモモの傍へと持っていく。

「モモも水飲める?」
「えぇ。・・・ごめんねぇ~?
「気にしなくて良いから。
夜はまた歩くんだし・・今の内にゆっくり休んで?」
「ありがとう~~」

へらりとモモは元気なく笑う。
本当は濡れタオルとかあると良いんだけど・・今は水は貴重だから出来ないしなぁ。
私が出来る事と言えばこうやってちょっとだけ風を送ったり水を用意したりする位。
あぁ、私も後で水飲もう。少しだけくらくらする。
でも、本当にもうそろそろ着いてくれないと私も持たない。
街に着くまではって自分に言い聞かせてるけど・・・・・やっぱり辛い。

ごろり、横になる。
疲れてるんだろうな・・茹だる様な暑さなのに、それでも意識が落ちていく感覚。
早く街か何処かに着けば良いのに・・・夢現の狭間でただそんな事を考えた。



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