鳥篭の夢

Possibly/疑惑2



次に違和感を感じたのは宿屋。
その日はわたしとモモさん、さんの3人部屋で、先にシャワーを借りてた時。


『───・・・~♪』

シャワーを止めると、外の部屋から細くて綺麗なソプラノの声が聞こえてきた。
さんが歌ってる声。
何だか聞いた事のある歌に何だったっけって思いながら身体を拭いて寝巻きに着替える。
勿論、髪と翼を乾かすのも忘れずに・・ね。

『ねぇ、。それって何の歌なのー?』
『え?あぁ、子守唄なの。
昔聞いてただけだから歌詞はうろ覚えのところもあるけど』

子守唄・・あ、そっか!子守唄だっ!!

『子守唄って言えば、よく歌詞を思い出すと怖かったりすると思わないー?』
『うんうん!確かそうなんだよね。
そういえば昔リュウに歌ったら泣かれた事もあったっけ』
『へぇ~、どんな歌詞なのー?』

確かあの歌詞って凄く怖かったのよね。
侍女が歌ってくれるんだけど、泣きそうになりながら布団に潜ったっけ。
思い出しながら小さく口元が緩んだのが分かった。
お城の皆、元気かしら?

『うーん、全体的に怖いけど・・・。
やっぱり“寝ない子は、翼を捥いで揺り篭放る”が一番怖いかなぁ』
『それは確かにには怖そうねぇ』
『リュウはその後の“転がる揺り篭の中で、ゆらゆらりと眠りなさい”で泣いたけど』
『そ、それは流石に怖いわぁー・・・』
『そう?私は捥がれる方が怖かったからなぁ。
翼を隠しながら良く寝てたっけ』

───ガチャリ

バスルームから出ると楽しそうに笑ったままの2人の視線がわたしに向いた。

「おかえりニーナ。
じゃあモモ、先にどうぞー」
「あ、はぁーい」

言ってモモさんは立ち上がって、用意を終えるとバスルームへと入って行った。

「そういえば子守唄のお話をされてたんですね」
「うん、そうなの。ニーナはどうだった?」
「わたしも同じ唄でしたよ。あの唄って怖いですよね!!」

わたしの言葉にさんはうんうんって何度も頷いてくれる。

「私は姉代わりみたいな人に歌ってもらってたんだけど“止めてー”って叫んでた」
「あ、わたしもですー。それからお布団に潜っちゃうんですよね?」
「そんな感じ」

お互いに笑ってから、少しだけ疑問。“姉代わり?”

さんにもお姉さんみたいな人がいたんですね」
「ん?あー・・・」

さんの少しだけ困ったような顔。
言い難そうに言葉を捜して頷いた。

「近所のお姉さん・・みたいなものだけどね。
泊まりに行ったり来て貰ったりした時にね」
「あ、すみません。変な事を聞いちゃいましたね」
「ん?ううん、気にしないで」

言って、そっと頭を撫でてくれた。
わたしが小さな頃と全然変わらない優しさ。
顔を上げれば、何だかお母様が微笑んでいてくれているみたいで不思議。
こんな風に思っちゃ失礼なのに・・・。
あぁ、でも何となく分かった。
さんの顔って少しだけお母様に似てるんだ。

───お母様に似てる?どうして?

「あの・・さ・・」

「あ、。次どうぞー?」
「ちょっと、モモ早くないっ!?」
「そうかしら~?」

ガチャリってモモさんがバスルームから出てきて笑う。
それにさんが驚いて声を上げた。
確かにちょっと早いような気がする・・・ん、だけど・・・。まぁ、良いのかしら。

「まぁ行って来るね?
あ、ニーナ。さっき何か言ってたけど何?」
「あ・・いえっ!何でもないです!
行ってらっしゃい!」
「・・・・?うん」

不思議そうな顔をするけど、さんはそのまま用意をしてバスルームに消えていった。
でもやっぱり違和感・・ていうよりも心に引っ掛かるものがある。
これはきっと気のせい・・・気のせい?
だけど確かめたいっていう気持ちもあった。
モヤモヤしたまま、引っ掛かりが残るままなんて、嫌。



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