鳥篭の夢

第一章/獣‐参



『キュィ!』

あたしと主がヒトに保護されて数日。主の意識が覚醒された。
良かった、漸くお目覚めになられたの。
スリスリって主に額を擦り付ける。瞼が開いて、金色の瞳が覗いた。
おはようございます、主!

「・・・、か?」
『キュ!』

返事をしたらそっと頭を撫でてくださった。うれしいな!うれしいな!!
主がお身体を起こす。その時に痛そうに傷を押さえた。
火傷はまだ完治されてない。身体中の包帯が痛々しい。
まだ寝てた方が良いです、主!言っても言葉は通じない。少し淋しい。

、お前の片割れと我が半身は無事に接触したようだな・・?」
『キュウ!!』

はい!“アタシ”はちゃんと半身様とお会いになりました!少々不具合がありますけど・・。
あ、でも主の命を遵守するのは本能に刷り込まれてるから大丈夫です!ちゃんと都まで連れて来れます!!
返事をしたからかな。また撫でていただけて嬉しい。
それから自分のいる状況を不思議に思われたみたい。主はゆっくり周囲に気を配られる。
主、主!此処はヒトの住む家屋です!


「何だ。起きていたのか」

ガラリって扉が開いた。あたし達を保護したヒトが顔を覗く。
そうなの!主がお目覚めになったの!!
あたし・・・ヒトは好きじゃないけど、あのヒトは優しいから好き。

「まだ動ける身体ではないだろう。
死んでもおかしくない火傷だったんだ、寝ていた方が良い」
「此処は・・・?」

主が不思議そうに辺りを見渡した。それにヒトが一度頷く。

「ああ・・此処はジンガの山。アスタナの南西と言った方が分かりやすいか。
わしは此処で木こりをやっている。名はババデルだ。お前さ・・・・」
「フォウル」
「・・?」

ぽつりと主が名を告げられる。それから外してた視線をヒトに向けた。

「名前だ」
「ほう。初代皇帝様と同じ名だな」

それに主は何も返さない。主こそがその初代皇帝、神皇様だなんてこのヒトは知らない。
・・・主?何故身支度をされているのですか??

『キュー?』
「世話になったな、ババデルとやら。私は行かなくては・・・」
「・・・おい!」

立ち上がる主。あたしを御肩に乗せてくださった。でも今のままじゃ危険です、主。

「無茶だ!その傷では山を下る事は出来んぞ!・・・フォウル!!」

ヒトが主の名前を呼ぶ。でも主は立ち止まらない。

「身体が良くなるまで此処に──!」

外を出たかって所。かくんって主の身体が崩れてあたしも転げ落ちた。
ヒトが主の名を呼んで慌てて駆け寄る。
主、無茶はいけません!!言葉は通じない。でもあたしだって心配。

「さぁ、中に入れ」
「・・・・呼んでいるのだ」
「・・?」

主の言葉にヒトが不思議そうな顔。


「行かねば・・・帝都に──」


そのまま主は倒れられてしまった。
半身様の呼ぶ声。別々にされた身体が1つになりたいって呼び合う声。
でも・・・大丈夫です、主!主の半身様は“アタシ”が必ず守りぬきます!だから・・だから・・・・。



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