鳥篭の夢

第二章/獣‐四



───ガラガラ

立て付けの悪い扉を開ける音。家の中に入ってマミは主をそっと布団へ降ろす。
あたしも降りて主の傍に座る。ぺたっと潰れたお布団。地面が近くて固い。

「あやー・・・地主さまにバレちまった」
『キューゥ?』
「まずいのか・・・?」

困ったマミの顔。地主はさっきの男?
ワカラナイ。だからあたしと主は一緒に声をあげて・・・えへへ、何だか一緒だと嬉しいな。

「この村は見たとおり田舎じゃけぇ、余所の人間なんてほとんど来ねぇ。だから皆ちょっとビックリしてんだ。
あ、けど心配しねぇで!おらのイトコって事にしておけば大丈夫だ!!」

マミがニッコリ笑う。一緒にチリンって綺麗な音が響いた。気持ちいい音。

「だからお前さまは安心して傷を治すだよ!
ほらほら、包帯全部取っちまって!巻きなおすけぇ寝ろ寝ろ!!」

ぐいぐいっと主を布団に寝かせた。そんな強引なのはちょっと“アタシ”みたい。
でも、そうですよ主!!あたしだって主はお元気な方が嬉しいです!だから今は充分静養なさってください!

『キュキュッ!キューゥゥ!!』
・・」

言ったのがちょっとは通じたのかな?小さく、ひとつだけため息。だけど漸く横になってくださった。
やっぱり呼吸はまだ乱れているけど、お休みになれば大丈夫ですよね?


「お前、名は何という?」

不意に問う言葉。それにあたしもマミを見た。
あたしは知っているけどそれを主にお伝えする事は出来ないから。


「マミだ」


柔らかい笑顔。あたし、この笑顔は好き。ちりんって音も好き。

「・・・マミ・・・おかしな、人間だ」
「兄ちゃん?」

ぽつり。そう仰られて主は瞳を閉じられた。
悪意の無いヒト。このヒトなら大丈夫。だから主もお休みになられたんだろう。

『キュー』
「お前さん・・えっと、だっけか?」
『キュ!!』

そう!あたしは!!
主があたしを呼んでいたを覚えてたのかな?名前を呼ばれたから返事。
そしたら頭を撫でられた。何だろう?何でかな??良くワカラナイ。

もゆっくり休むとええ。
兄ちゃん程じゃないけどお前さんも怪我しとるしね」
『キュ』

了承。折角休む機会があるならちゃんと全快にしておかなきゃ。
だって主をお守りする使命があたしにはあるんだから!!



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