鳥篭の夢

第一章/06



「うわぁ・・スゴイねぇ!!」
「・・・うん!」

村長さんが教えてくれた抜け道を通って、出た先は入り組んだ大きな町。
これがセネスタ・・・?っていうか、それよりもアタシ達今井戸から出てきたよね?
だから途中で水路みたいなのがあったのか。
町を見渡す。所々壊れた家を修復してたり、子供達が走り回ってたり・・活気のある町みたい。

「これがセネスタ・・・最前線の町か」
「最前線?何が?」
「あ、東と西の境なんです。ここから砂漠を挟んで西側が帝国になるんですよ」
「へー、そうなんだ」

それで最前線かぁ。

「しかしセネスタも少し前まで呪いの底にあったと聞いたが・・・」
「帝国の人達も・・いないみたいですね?」

爪先立ちして遠くを見ながらニーナが言う。
帝国のヒトかぁ、どんな感じのヒトがいるんだろう?
あと“呪い”って何かな?呪う。呪詛。それの底にある・・・?んー、分かんないや。

「エリーナはこの町で消息を途絶えた」
「だから、この町にきっと姉さまの手懸かりがありますよね・・?」
「あぁ、とにかくエリーナが訪れたという孤児院を探さないとな」
「はい!クレイ兄さま!」

姉様?エリーナ?何の事ってリュウにこっそり訊いて・・・・ニーナ達の探し人かぁ。大切なヒトが行方知れずなのは心配だよね。
そういえば抜け道で“ニーナは王女様なんだ”って言ってたっけ。こんなトコふらふらしてるのは変だって思ってたけど漸く納得。
・・・・それで、噂の孤児院って何処にあるんだろう?見渡したってごちゃごちゃして分かんない───って!

「リュウ、何食べてるの?美味しそう!
良いな良いな、アタシも欲しいっ!」
「お?お嬢ちゃんも食べるかい?ここの名物なんだ」
「わぁい!ありがとうございます!!」

“試食だからね”って小さく一切れだけ貰う。あー!これ美味しいっ!!

「美味しいねぇ、リュウ」
「うん」
「喜んでもらって嬉しいよ」

アタシとリュウでお互いに笑顔を向ければ、お店のおじさんが嬉しそうに笑った。


「──こらぁ~っ!!待ちなさいっ!チノー!!」

「ん?」
「ふへ?」

どたばたって騒がしい足音。見ればシスター服を着た女のヒトが、犬の顔をした男の子を追いかけてる姿。
えっと・・確かアタシと同じで“ノバセリゾク”って言うんだよね。あの男の子も。

「もぉっ!皆揃わないとご飯にならないでしょー!!?」
「へっへーんだ!だったらオレを捕まえてみろよー!!」
「ちょっと待っ・・・!!」

───ベチィッ!!

うわ・・女のヒトが顔面からコケた。痛そう。
ニーナが駆け寄って大丈夫かって声をかけたら“何時もの事だから”って。それはそれで凄いかも。
毎日顔面からダイブ──うーん、ちょっとヤダなぁ。
なんて考えながら、おじさんがもう1つ試食くれたからありがたく頂く。
やっぱり美味しいなぁ、コレ。試食なのにいっぱいくれるし・・・・・あ、でもリュウもいっぱい食べてる。


「うわっ!!ご・・ごめんなさいぃっ!!!」

ん?さっきの男の子の声??
視線を向けたらクレイと男の子の姿。怯えた様子なのは・・・まぁ分からなくもないけど。
クレイって体格良いから小さい子からすれば怖そうだしなぁ。
それで漸く女のヒトは男の子を捕まえれたみたいだった。

「さぁ、孤児院に帰るわよ」
「えー!!もうちょっと遊びたいよー!!」

「・・あ、あのっ!!もしかして孤児院の方なんですか?」

ニーナが不意に呼び止めて、女のヒトが不思議そうに首を傾げる。孤児院って噂のアレ?

「・・・はい、そうですけど。何か御用ですか?」
「あ、あの・・私達、お話を伺いたくて此処まで来たんですけど・・」
「まぁ!お客様ですね。案内いたします、こちらへどうぞ!」

女のヒトは柔らかく笑う。・・・あ、もしかしてもうそろそろ行かなきゃダメ?
これ、欲しかったけどダメだよね?クレイがお財布握ってるし・・・・アタシお金持って無いし。

「おい!リュウ、行くぞ!」
「あ、うん」
「はーい・・ごめんね、おじさん。何も買えなくて」
「いやいや、気にしなくて良いさ。今度機会があったらよろしく頼むよ。
良かったらまたおいで」
「・・・うんっ!」

やったぁ!そしたら今度はクレイにお金貰って行こうっと・・・・──と、ふと感じる嫌な視線。
アレって無粋だよねぇ。ああいう監視するみたいな目線って好きじゃない。
まぁ見てるのはアタシじゃないみたい。近くの・・・は、リュウ?
リュウも視線には気付いてるみたいだった。そのまま視線のする方を見たら頭から布を被ったヒト。何だろう?
気付かれたからかすぐにそっぽ向いて行っちゃったけど・・・うむむ、感じ悪いなぁ。それにあの歩き方──。


「行こう、
「あ、うん。そだね」

リュウに促されて、アタシもクレイ達の後ろを歩き出した。
・・・さっきのあのヒトの歩き方って軍人さん特有のだよね?
何となく見覚えがある。見覚え?・・・ま、良いか。



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