鳥篭の夢

第一章/09



「ぁ・・ふ、良く寝たーぁ!」

1つ欠伸して大きく身体を伸ばす。
あー・・木箱なんかに押し込められてたから体中が痛いー・・・。

「だけど、リュウさんもさんも良くあの中で眠れましたね」
「あれ?ニーナは寝なかったの?ダメだよ、ちゃんと休まなきゃ」

そりゃあ確かに寝心地は良くないかもしれないけど、休息はちゃんととらなくちゃ身体動かなくなっちゃうんだから!
あ、でもあんな場所じゃニーナは寝れないのかも。だって王女様だし、あんな狭い場所で寝る事なんて無いだろうし。
アタシ・・・は、良く分かんないけど寝れたんだから寝れる人みたいだけど。

「全く。あんな場所で眠れる方が尊敬する」
「そうかなぁー?」

呆れたみたいなクレイの言葉。そんな事言うけど、クレイなら寝れそうな気がするんだけどな?気のせい??
まぁ良いや。今はそんな事より──

「此処が、帝国なんだよね?」
「正確にはまだ東側だな。此処にある大帝橋を使いフォウ帝国へ行く。
とは言っても此処にも帝国軍がいる事に変わりは無い、油断するなよ」
「・・・うん」

念を押すクレイに一度頷く。何だ、まだ帝国じゃないんだ。

「此処まで来たからには必ずエリーナを見つけ出す!」
「はい、兄さま!」

クレイとニーナは意気込んでる。リュウも頷いて、マスター・・は何時も通りかな。
でも・・・フォウ帝国。大帝橋。何だか懐かしい名前・・・何か知ってる気がする。違和感は残るけど懐かしい。
マーロックが言ってたみたいにアタシは西の人間なのかな?帝国側・・それはクレイ達の敵?
そんなのは良く分からない。戦争とか、争いとか、そんなのは如何でも良い。アタシがすべき事はそうじゃない。
うん、そうだよ!アタシはリュウを守って送り届ければ良いんだから・・・。


?」
「え、何?リュウ。何か面白いものでもあった??」

不思議そうな顔してる。あ!アタシ、何か変な顔してた?それとも変な事でも言ったっけ?
分からなくて首を傾げたら、慌てたみたいに手と首をぶんぶんと一生懸命振られた。何だか凄いね、それ。

「ううん。僕の気のせいだと思う」
「そぉ?」
「うん。ゴメン」

ちょっとだけ困ったような笑顔。本当は何か言いたかったのかな?・・・まぁ、良いか。

「それにしても・・大きいね、コレ」

リュウが塔を見上げる。
“懐かしい”───コレは何も変わってないなぁ。

「うん、これが大帝橋だよ。装置を動かすのがちょっと面倒なんだけど移動するのは簡単で・・・」
「え?」
「ん?・・・あれ??」

何でアタシは分かってるんだろう?大帝橋を使う為に“装置”が必要な事とか。その作業が面倒な事とか。
どうして?頭の中が混乱する。こうやって探るから逆に?分かんない。

・・もしかして記憶が?」
「ううん、わかんない。今、何だか突然そんなのが出てきて・・」

自分でも驚いた。大帝橋の記憶。懐かしいって感じたのは間違いじゃなかったって事なのかな?
でもそれ以上の記憶・・特に、思い出したい記憶は出てこない。如何して?切っ掛けが足りないの??
何で?如何して?主の記憶だけ戻らない?世界の物事に関する記憶は戻ってきつつあるのに?
嫌だ。そんな記憶イラナイ。アタシはそんなのイラナイのに・・・っ!!


「大丈夫。・・大丈夫、無理しなくて良いよ」
「ぁ・・リュウ?」

あれ?急に背が高くなって・・・?じゃ無くて、アタシがしゃがんでる?何時の間に??
何だか頭が痛い。主の事を思い出したくて、他の事は面白い位に如何でも良いと思えるのに、主だけ思い出したくて・・・。
今なら思い出せるかもっていっぱい記憶の中を探ろうとして、でも思い出せなくて苦しくて。
・・・うん、そうだ。何だか凄く苦しくなって、だからしゃがみ込んじゃったんだ。きっと。

「ごめん。もう平気だよリュウ。ありがと!」
「僕も何か思い出せれば良いんだけど・・」

困ったような顔。何でそんな顔するんだろう?
何だかもやもやして、その顔を見ていたくなくて、だから思いっきり笑う。

「ううん。大丈夫だよ、リュウ。
それに絶対に主とリュウは会えるから」
・・?」

何が大丈夫かは分からない。でもそうなるんだって確信めいた何かがあった。絶対の自信。
それにリュウは少しだけ不思議そうな顔をして、でも強く頷いてくれた。

「うん。僕も、何だかそう思う」
「でしょ!」

同意してくれて嬉しい。それに本当はアタシが命を受けなくたってお二方は・・・。
そう思ったのは何でか分からないけど、でも、何故かそんな気がした。



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