鳥篭の夢

第一章/13



「待てーッ!!」

帝国の兵士が叫ぶ声・・・そんな事言われても待てないんだけどさぁ。

あれからアスタナっていう“呪砲”のある町まで行った。ソレがどんなものなのか良く分からないけど“呪う”のに必要なんだって。
結局アタシは“呪う”っていう状況自体が分からないけど、皆の言葉からとりあえず怖いものなんだっていうのは分かった。
それから手配書が回ってたみたい。町にいた兵士さんがアタシ達をみてひそひそ話した後、捕まえにこっちに走ってきたから。
一応それをクレイとリュウが体当たりして散らしてから、リュウの提案でアタシ達は水道橋まで走って来たんだけど──

「一番上まで来ちゃったねぇ」
、そんな悠長に言っている場合では・・・。
だが、本当にこれ以上は上がれんぞ。どうするんだ・・・!」

どう見ても道がないんだよね。リュウは“何かある”って思って来てるみたいなんだけど・・・。

「帝国兵が来ます・・・!!」
「うふふ、万事休すですね」

下を覗きこんでたニーナに楽しそうに笑うマスター・・・って、やっぱり笑うトコ間違ってる。
リュウは何かを考えてるみたい?片目を押さえるみたいにしてて・・・・あれ?アレって竜眼、だよね?

「リュウ?何してるの??」

───ガシャン
金属音と同時に地面の柵・・水路に繋がってる場所を開けた。それからアタシ達を手招く。

「皆、こっちだ!」
「こっちって・・・水路の中に入るんですか!?」
「水路・・いや、そうか!呪砲は此処から水を引いて使用していると言っていた。
もしかしたら帝国の施設内に繋がっているかも・・・!!」

なるほど!その可能性はあるよね。クレイって思ったより頭良い??


「上だ!上を探せ!!」

響く兵士の声。近づいてるのがその音の大きさで分かる。

「どうやら迷っている暇はなさそうです」
「だね!せーのっ!!」

マスターの言葉に頷いて飛び込んだ。耳に水が入る感覚がキモチワルイ。
見渡せばすぐに光が見えた。多分・・あっちに行けば良いんだよね?クレイの方をみて確認。
とにかく早くしなくちゃ・・・息、続かないかも・・・。



「ぷはぁっ!!」

バチャンって水が跳ねる音。水中から出てとりあえず深呼吸。空気が頭の中を巡ってなくてくらくらする。
えっと・・此処って一応室内だよね。薄暗いけど灯りが照らしてるから何となく分かる。
歩くたびにぐちゃって音がする。耳も尻尾も・・っていうか全身びちゃびちゃ。服が水吸って重たいー・・・。

「此処だ・・・!夢で見た場所!!此処にエリーナが!!」

・・・夢?

「・・・ゲホッ!・・はぁ・・・っ」
「わ、大丈夫??リュウ」
「う・・うん・・・少し、水飲んだけど」

急に噎せたから驚いたけど、無事そうで良かった。
小さな声で言った“水がちょっと苦手”っていうのはやっぱり力の属性が炎だから?
アタシは全然平気だけど・・・というかぶっちゃけると炎の方が苦手だけど。
うーん、近いけどやっぱりリュウと主は違う力って事だよね。何だかちょっと不思議。

「・・・ほんとに夢の場所です。リュウさんのおかげです・・・ね?」
「良かった」

ニーナの言葉にホッと安心したみたいにリュウが笑う。さっきクレイは夢がどうこうって言ってたっけ。
もしかしたら何か関係あるのかな?

「喜ぶのはエリーナを見つけてからだ。この施設内にいれば良いのだが・・・」
「とりあえず探してみなくちゃね」
「あぁ、行くぞ!」

クレイが頷いて先を歩く。服がびちゃびちゃなのはやっぱり嫌だけど仕方ないよね。
ニーナなんて翼があるから重たそう。水鳥の羽とは違うよね・・?やっぱり。水吸ってそうだもんなぁ。
なんて、考えながら歩いていく。ヒトの気配もそうじゃない気配もない。ただ凄く・・・静か。


「待て、誰か来る。隠れろ・・!」

不意に短く注意を促されてソレに従う。扉の開く音と足音。ヒトの会話。
耳をすませてみるけど・・・・ユンナ、かぁ。別に聞き覚えはない名前だと思う。と言う事はアタシは軍とは関係ないって事かな。
でもそれはそうだよね。大帝橋の時のアイツもアタシの事を知らなかったし、アタシも分からなかったもんね。
・・・と、無言でクレイが先へ進もうって指示。カーテンの裏を通れば多分気付かれない、よね?そぉっと足音を立てないようにっと。



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