鳥篭の夢

第二章/01



アタシの目が覚めた時、アタシ達は既に東側へと強制送還されてた。
何時の間に!?って思ったけどニーナの話だと2~3日起きなかったんだって。凄く心配したって泣きそうな顔されちゃった。
“ゴメンね”“もう大丈夫だから”何回もそう言って慰めた。ニーナが泣くのは見たくないから。

今アタシ達がいるのはルディアっていう国みたい。クレイは・・・そのルディアのお城で身柄を拘束されてるんだって。
取調べを受けてて、何を訊かれてるのかは分かんないって言ってたけどあまり良い事にはならないと思う。
西側から強制送還されたって事は、多分東側にとっては良く無い事だもんね。
窓から見えた風景は寂れた街並みだけで何だか物悲しい感じ。アタシ、あんまり好きじゃないな。此処。
気晴らしに外に出ようと思っても見張りがいるからダメだって・・・・・・ツマンナイ。身体を動かせないのは凄く退屈。
じぃって見張りの長い犬・・多分、アタシと同じノバセリゾクのヒトを凝視してみる。もっとアタシより獣っぽい。
困ったみたいな顔してるけど、だって出してくれない方が悪いんだもんね。とにかく暇で暇で仕方がないんだから。


「・・・会いに行っちゃダメなのか?」
「行ってみたんですけど会わせて貰えなくて・・・それに、監視の方もいらっしゃいますし」

最後の方は小さな声だったけどニーナとリュウの喋る声。それにそっちの方を見て近づく。

「あ、リュウ起きたんだ。おはよ!」
「うん。おはよう

笑顔で挨拶してくれて、それからリュウの視線は監視のヒトへと向いた。やっぱり邪魔だよねぇ。
ニーナは哀しそうな顔してる。きっとクレイと会えないから。クレイが心配だから・・・。

「兄さまは私達の事を庇おうとしています。そんな事したら余計に刑が重くなっちゃうのに・・・」
「ふふふ。死刑かもしれないってマスター言ってますね」
「ふ、不吉なこと言わないで下さいっ!マスターさん!!」
「そうだよマスター。まだどうなるか分かんないんだから」

憶測でモノを言ったらダメだよね。でもどんどんニーナの顔が暗くなっていく。
しょんぼり。肩を落として気落ちしちゃってる。えぇっと、如何したら良いんだろう??

「・・・でも、このままじゃ本当にそうなってしまいます。何とかしなくちゃ・・・兄さま」

ニーナの目から一筋涙が・・・わ、わ、ニーナが泣いちゃった。

「ニ、ニーナ!そんな泣かないで?まだどうなるかなんて分からないよ!」
「そうだよ!クレイの事はきっとなんとかなるよ!!」
さん、リュウさん・・・・」
「だって3人は兄妹なんだろ?兄妹を助ける為だったのに死刑とか・・そんなのおかしいよ!」
「・・ぇ、クレイとニーナって血が繋がってるの!?」

だって虎人と飛翼族だよ!?全然種族違うし、見た目だって全然違うよ!!?
アタシがビックリしてたらリュウは困った顔する。“え、だって・・”って首を傾げちゃった。

「あ・・・ごめんなさい。血が繋がってるのは私と姉さまだけなんです」
「え?」
「兄さまとは幼馴染で、小さい頃からよく遊んでいたのでそう呼んでるんです。
兄さまがウインディアに来たり、私達がフーレンの里に行ったり、3人でよく抜け出して遊んでは怒られて・・・」
「そ、そうなんだ・・・?」
「はい」

ニーナの言葉にリュウは驚いてるみたい。でもアタシとしてはちょっとホッとしたかも。

「あー、ビックリした。だってニーナとクレイ全然似てないもんね。ニーナの方がすっごく可愛いし」
「あ、ありがとうございます」

照れたみたいにニーナが笑う。泣いてたからちょっとだけ目が赤い。
それから笑ってた顔がまた曇っていった。

「でも突然姉さまがいなくなってしまったんです。戦争で傷付いた人達をお見舞いするって出かけたっきり・・。
私、おかしいと思って。それで兄さまにも手伝って貰って探しに・・・本当は私にも責任はあるのに。
どうしよう?兄さままでいなくなったら、私・・・」

ほろほろとまた涙が零れて、ニーナは一生懸命服の袖で涙を拭う。しゃくり上げる声が部屋に響いた。
何て言ったら良いのかな?どうしたらニーナを元気にして上げれるんだろう?せめて此処から出れたら良いのに・・・。

「ごめんなさ・・私ったら泣くなんて・・」

「ニーナ」

リュウが真剣な瞳でニーナを見る。何か考えがあるのかな?不思議な顔をしてたらアタシも手招き。
何か内緒話?何だろうって思って近づくと、コソコソってリュウが耳打ち。

「じゃあ助けに行こう」
「リュ、リュウさん!?」
「それって忍び込むって事?」

コソコソって小声で返すアタシにリュウが一度頷いた。

「きっと夜なら警備も手薄になるだろうし・・此処から上手く抜け出すんだ」
「で、でも・・・」

困った顔をするニーナにリュウがにっこり笑う。

「家族を助けたいって思うことは何も悪い事じゃないよ。僕も手伝うから、会いたい人に会いに行こう?」
「ニーナ。アタシも手伝うよ!だから大丈夫・・・ね!」
「・・・はい!」

少しだけ考えるような顔をして、でも決心したようにニーナは頷いた。
良かった。少しだけ元気になったみたい。
でもクレイも・・死刑になるっていう位なら早く抜け出しちゃえば良いのに。ニーナが悲しむって分からないのかな?
それとも分かってるけど如何にも出来ないのかな・・・?どうなんだろう??
上に立つ立場なんて考えてもアタシには分かんないけど、でも大変なんだろうなぁ。それは何となく分かる気がする。



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