鳥篭の夢

第二章/10



「──さんっ!!」
「──!!」

誰かがアタシを呼んでる。主・・・じゃない、誰かの声。誰だっけ?
ぼんやりする頭を横に振って声のする方を見たら見覚えのある顔がアタシを覗き込んでる。
・・・・リュウ、とニーナ?そうだ、リュウとニーナだ。何で分かんなかったんだろう?

「め、目が・・・覚めた、か?」
「あれ?」

ふかふかするみたいな感触。顔を上げたらサイアスもいた。
抱き締められてるみたいな状態。あ、だからふかふかして気持ち良かったんだ。身体もあんまり痛くない。

「えっと、サイアスが守ってくれたの?」
「と・・・飛んで、行くかと・・思った」
「あはは。うん、ありがと!」
「・・・ぅ・・」

お礼を言ったら照れたみたいに顔をふいって背けられちゃった。
それからリュウとニーナにもありがとうって言う。だってずっと心配してくれたんだよね?

「良かった、全員無事みたいですね」
「それにしても酷い目に遭った」

頭を押さえてふらふらするクレイ。打ち所悪かったりしてないかな?大丈夫?
でも立ち上がったらアタシもちょっとふらふらする。
平衡感覚がちょっとイマイチ。うーん・・まぁ、暫くしたら治るか。
それよりも・・・・・・

「此処、どこ?」
「ラーウィ様に導いてもらった場所です。多分此処が召喚の地・・・召喚を司る一族の村」

目の前に広がる村。・・・村、じゃないよね?あれ。外から見てもまるで廃墟みたい。
ジッと廃墟を眺める。それからリュウがいち早く歩き出した。

「リュウ?」
「・・・行こう!」

崖を滑り落ちるみたいにして一直線に召喚の村に向かっていく。まぁ、気持ちは分からなくは無いけど。
アタシだって竜の事を知る事で何かを思い出せるかもしれないって思ってるから。早く思い出したいから。
ちょっとずつじゃ嫌だ。もっと早く、ちゃんと思い出したい。主の事、今までの事、全部・・・。


「“竜”だ」
「“竜”」
「“ガーディアン”もいるよ」
「でも“竜”がどうして・・?」

リュウを見ながらひそひそとお喋りする声。廃墟みたいな村なのに、さっきから子供の姿ばっかり。
アタシよりももっと小さい・・ってアタシは小っちゃいだけでこんなに幼くなんてないけど。
でも不思議。幼い子供達。セネスタで会ったチノ位小さい子達ばっかりで生きてるなんて・・・。

「妙だな」
「うん。子供しかいないよね」
「・・・ぁ、そういえば」

クレイの言葉にアタシが答えて、それにようやっとニーナも気付いたみたい。
それから子供の1人にニーナが近づいて“大人はいないか”って訊ねる。大人っていうか長老がいるって。
女の子がソコまで案内してくれて・・・ちょっとドキドキする。これで分かるのかな?


「長老、お客人です」

声に気付いて振り返ったヒト。何だかちょっと違和感・・・・・?何だろう?
あ、そっか。確かに顔に刻まれた皺と白髪が長老って呼ぶのに相応しい雰囲気だけど、子供と同じ大きさなんだ。

「この気配は・・・アルカイの竜様!?これはこれは、どちらの神のお導きか」
「風竜様がこの地を訪ねる様にと仰ったんです」
「此処に来れば僕の事が分かるって・・・」

リュウの真剣な瞳。瞼を閉じたままの長老さんは、少しだけ困ったみたいに眉を寄せた。

「・・・貴方がうつろわざるものだという事は気配で分かります。
ですが──貴方、一体何者です?」

・・・ぇ?

「・・な」
「そ、それってどういう事ですか!?」

驚いたようなニーナの声。でもアタシにだって不思議。
うつろわざるもの。アルカイの竜。それは分かってるのに、何者ってどういう事なんだろう?

「我々はずっとこの地で神を、うつろわざるものを召喚してきた。
風の竜。泥の竜。砂の竜・・・全て我等がこの地で召喚した神様です──でも」

長老さんは一度言葉を区切る。信じられないって顔。

「貴方は、この地で召喚された者ではない。
貴方は何です?一体誰に呼ばれたんです・・・?」

それは──


「それ、リュウには分かりませんよ」


アタシが口を開く前にマスターが口を開いた。
え・・・・あれ、マスター?何で??

「・・・ってマスター言ってます」
「マスター?」

何でマスターが分かるんだろう?


「・・・な。・・・これは、この気配は・・・・・うつろわざるもの!?」


うつろわざるもの?マスターが??
長老さんの驚いた声。でも確かにずっと不思議な感じはしてた。ヒトとは違うけど、何って分からない違和感。
聞いてもはぐらかされたし、まぁアタシに関係ないから良いかってあんまり気にしてなかったけど。
うつろわざるもの・・・?でもちょっと何だか違う感じがするんだよね。ラーウィとは違う気配。これは何なんだろう?



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