第二章/11
「マスターが・・・うつろわざるもの!?」
リュウの驚いた声。それにマスターは何度も首を横に振った。
「違いますよ。マスターはマスターです」
「え、でもコレは確かに神の気配だけど・・・」
悩むような長老さん。でもやっぱりアタシは何だか違う気がするんだよね。
「アタシはラーウィ達とは違うような気がする」
「!?」
「さん??」
何気なく口にしたら、皆の驚いた声。ん?アタシ変な事言ったかな?
「んー・・・・と、なんて言ったら良いのかな?
確かにうつろわざるものに近いんだけど、そうって言い切れない感じ。違和感?みたいなの」
「言われてみれば。確かに・・・少し、違う?」
長老さんがまじまじマスターを見詰める。やっぱりそうだよね!でも、そしたら何なんだろう?
そうやって言われると気になるんだけどその違和感が何かなんて考えたってわかんない。
「これは・・・」
「え?」
「これは、封印されてる?」
封印?
「封印って・・・」
「どう言う事だ?」
リュウの言葉を継ぐみたいにクレイが訊ねる。そんなのアタシも分からない。
「どうやらこの鎧の中に神様が封印されているみたいだ・・・」
「ふふ。そのようですね」
うつろわざるものを封印?ヒトが?理である神を??やっぱり意味がわかんない。
あ、でもマスターがそうだって同意してるもんね。って事はそれについては間違ってないのか。
“じゃあ、マスターさんも神様?”なんて驚くニーナにマスターは何時もみたいに笑う。
「皆さん、よっぽどうつろわざるものに縁があるみたいだ。こんな事初めてだよ。
アルカイの竜様といい、分からない事だらけだ」
「え?それじゃあ、長老さんはリュウに関しては全く分からないの?」
問いに長老さんはただ頷いた。・・・・・て、ちょっと待って!つまりこれはただの徒労って事?
此処に来た意味って全然無かったの??分かったのってマスターがうつろわざるものだって事だけ?
リュウの事も主の事も何も分からないまま??そんな・・そんなのって──
「色々教えてやるから、早く封印を解いて此処から出せってマスター言ってます」
「え?」
マスター・・・?
ぽかんってするアタシ達にマスターは更に言葉を続ける。
「マスターは何でも知ってるそうですよ」
知ってるの?リュウの事も、主の事も??
「な、なるほど・・・知っている方に話を聞くのが一番早いのは確かだ」
長老さんは納得したみたい。アタシも確かにソレが一番早いとは思う。でも・・・
「んー・・でも、話を聞くには封印を解かなくちゃいけないんだよね?
それってどうしたら良いのかな?アタシ、やり方なんて分かんないよ」
「そうですよね。私も分かりませんし・・・・」
「それは、直接解くしかないだろうね」
「「直接?」」
ニーナとアタシの声が重なる。ていうか、封印を解くって直接とかってあるんだ。
わかんない事ってまだまだいっぱいあるなぁ。
「そう。封印されている場所。つまりマスターさんの中に入るのさ」
「な・・・中に!?そんな事が可能なのか!?」
「物理的な事じゃなくて心の中に入るって言った方が良いかな。心の奥に封印があるはずだよ」
驚くクレイに長老さんの説明。心の中・・・・そんな所にアタシ達が踏み込んで良いのかな?
でもそうしないと封印は解けない。それにマスター自身が出せって言ってるなら良いの??
“行くなら私が導こう”そう言った長老さん。リュウは・・・何か悩んでるみたいに見える。
「ね。リュウはどうする?」
「・・・」
訊ねたアタシをじっと見て、それからリュウは一度だけ深く息を吐いた。
どうするのか決まったんだよね。さっきよりも強い瞳。決意の顔。
「やってみよう」
「うん!」
決まりだね。ちょっとドキドキするけど、マスターの心の中へ!
これで封印が解けたら分かるんだよね。リュウの事も、主の事も、きっと・・・・。