第二章/12
『リュウさん、聞こえる?』
それがリュウにだけ伝えたのか、ただ代表して名前を言ったのか分からない。
でもアタシにもその声が聞こえてギューッと瞑ったままだった目を開けた。
「ぅ、わ・・」
真っ白な空間に細長い一本道が延々と続いてる。
長老さんに導いてもらった先・・・・だから、これがマスターの心の中って事だよね。
『もう大丈夫だよ』
その言葉に皆の握っていた手が離れる。
ふかふかしたサイアスと、ふにふにしたニーナの手の感触が無くなった。
ちょっと気持ちよかったから、少しだけ残念。
「ココは?」
『そこがマスターさんの心の中だよ。道を奥へ進めば封印がある筈だ・・頼んだよ』
「えっと。道を奥へ・・・って事は、あの一本道をずーっと行ったら良いって事なのかな?」
「多分そうだと思う。それにあの上に何かありそうだ」
本当だ。ずーっと奥にある巨大な岩。その上に柱・・?みたいなのが変な光を放ってる。
アレが封印なのかな?良く分かんないけどどっちにしろ一本道はあっちに繋がってるみたいだし大丈夫だよね?
「行こう」
リュウのその言葉にアタシ達は頷いた。
それから何も無い延々と続く一本道をただ歩く。・・・・・・・・本当に何も無くて少し退屈。
魔物とかどかーんって出てきたって良いんじゃないかな?あ、でも心の中なのに魔物って変か。
うーん。でもやっぱりただ歩くだけってツマンナイ。途中から階段になったけど、そんなの変化とは言えないし。
だけどそんな事ばっかり言ってたら駄目だよね?それで主の事が分かるなら全然平気!我慢我慢だっ!!
「どうかしたんですか?さん」
「へ?あ。ううん、何でもないよニーナ!」
「そうですか?」
だらだらーってやる気なく歩いてたからかな?それとも馬鹿みたいに1人で百面相してたのかも。
とにかくニーナに心配させちゃった。出来るだけ笑顔で応えて、少しだけ反省。
・・・・・て、あれ?何だか後ろからも視線??
「サイアス?」
気になって振り向いたらサイアスと目が合った。えーっと・・・
「どうかしたの?」
「い・・・いや、何でも・・」
ごにょごにょ。最後の方の言葉が消えちゃった。あ、もしかしてアタシの気のせい??
だったら逆に驚くよね。一応“ゴメンね”って一言だけ。
それから心配させないように一気に長い階段を駆け上がった。
流石に最後の方はちょっとキツかったけど、何でか体力はまだまだ有り余ってる感じ。
「っゎ、何あれ!!」
息を整えて顔を上げて、目の前にある4本の柱と・・・中心には大きなキューブみたいなのを発見。
何だろう?そのキューブよりも柱の方に凄い力みたいなのを感じる。
「な、何だこれ!」
続いて到着したリュウもビックリしてる。
リュウにも分かるよね?凄い大きい変な力。
「これが封印なのかな?」
「多分そう・・・ですよね?」
でもキューブの中は何も見えないんだけどなぁ。
やっぱり柱の方が封印なのかな?それとも柱の力を使って封印?柱で封印が・・・・・・あれ?
むむむ、何だか良く分からなくなってきちゃった。
「あぁ。見ての通りだよ。ずーっと此処に閉じ込められているのさ」
「!!?な、何か喋った!!!」
「マスターの中のうつろわざるもの・・・か?」
わ、綺麗な声。凄く大人びてて普段のマスターからは想像できない感じ。
驚くリュウと悩むクレイに、マスターの呆れたみたいなため息が1つ。
「他に誰がいるってのさ?良いから早いところ封印をといてくれないかねぇ?」
「封印って・・・この柱の事、だよね?あ、それともマスターのいる方??
でもどっちにしてもどうやったら解けるのか分かんないんだけど・・・どうしたら良いの?」
「ぎゃんぎゃん次から次とうるさいウサギだね」
うさ・・・っ!?確かにアタシの耳はウサギみたいに長いし、五月蝿いのは間違ってないけど。
マスターの言葉に思わず何も言い返せない。ていうか、マスターってこんな喋り方だっけ?
「だけどまぁ、あたしを此処から出そうって思って言ってくれてるんだから一応喜んでおくかな。
で。アンタの言う通り、周りの柱が封印になってるんだよ。全く、忌々しい柱さ!早くぶっ壊しておくれ!!」
最後は怒ったような口調。本当に此処から出たいんだって良く分かる。
クレイが“人使いが荒い”ってぶつぶつ文句を言いながらブーレイ、大地の魔法で柱を1つ壊した。
・・・・・・・・・・クレイって魔法使えたんだ。
全然知らなかった。良いなぁ、アタシは使えないんだよね。
それは何となく記憶に残ってる。覚えてないんじゃなくて、最初から使えないんだって。
それからガラガラって柱が崩れていく。多分、それで封印の均衡が壊れたんだと思う。
キューブに大きなヒビが入って、中から今まで感じてたよりもずっとずっと強い力が出てきた。
ああ、分かる。これなら理解出来る。うつろわざるものの気配。他の神様と同じ強い力。
「やれやれ・・や~~~~~~~~~~~っっと出られるよ!!」
嬉しそうな声。それから・・・・
「まずは礼を言うよ───ありがとう」
すっごく綺麗なお姉さん。えと、あれがマスター?