第二章/13
紺色・・っていうのかな?深い藍色みたいな色の髪と瞳。うつろわざるものの特徴である角は白。
主とは違うけど、でも目に飛び込んできたその姿はやっぱり綺麗だなぁって思った。
いや、主の姿形とか全然覚えてないんだけどさ。それはそれで自分に腹が立つんだけど、そうじゃなくて。
おぼろげに残ってる記憶っていう訳じゃないけど・・・うーん、何て言ったら良いんだろう?良く分かんないや。
「・・・・・・ん?どうしたんだい??」
「へ?」
マスターの不思議そうな顔・・・・?あ、そっか!!
折角お礼言ってくれたのにアタシ達ボーっとしちゃってたから。でも、だってビックリしたんだもん。
今までのマスターからは想像出来ない姿と口調。全部がアタシ達の接してきたマスターとは違う。
「・・・・えーっと。ほ、本当にマスターさん、なんですか?」
恐る恐るニーナが訊ねる。それにマスターが笑った。
「そりゃあの鎧が勝手に言ってるだけで、あたしにはディースって名前があるんだよ。ヒヨコちゃん」
「ひ・・・ヒヨコ、ですか」
ぴよぴよって鳴きそうな小さな声でニーナが呟く。
えっと・・でも、とにかくディースとマスターは違うって事?・・・だよね。意思があるヨロイ?
「マスターの中にこんなものがいたとはな」
「ねぇ、マスターがディースの事を“マスター”って呼んでたんだよね。
じゃあディースとマスターは別人なの?」
ため息をつくクレイは置いといて、素直に疑問を口にしたらディースは頷いた。
「ま、そういう事になるね。“マスター”ってのは鎧があたしを勝手にそう呼んでただけさ。
確か・・・何処かの言葉で“ご主人様”って意味だったかな」
「ごしゅじんさま・・・」
アタシが主の事を“主”と呼ぶのと同じ・・・?なのかな。
「じゃあマスターはディースが操ってたのか?」
「いいや」
「え、違うの??」
アタシもリュウと同じでマスターを操ってる・・みたいなのかと思った。
でもディースとマスターは別々で。アタシと主と同じ主従関係。でもマスターはディースを封印する器。
だから動きたい所に行く為には操作する必要があると思ったんだけど・・・。
「ウサギちゃん。あんただって主人に操られてる訳じゃないだろう?
確かにあれを通じて話をした事はあったけど、鎧自体を操ってた訳じゃないよ。
あたしが封じられた影響で仮初の命が宿ったんだろうね」
「え・・?」
仮初の・・命?
「じゃ、じゃあ封印を解いたらマスターさんは・・・?」
ニーナの言葉にアタシもドキドキする。
でもディースはあくまで平気な顔をして、一度だけ肩を竦めてみせた。
「さぁ?ただの鎧に戻るんじゃないかい?」
「そ・・そんな・・・そんなのって・・!」
「──ところでさ」
反論しかけたニーナの言葉を遮る。えと・・何だろう?
ニーナもそのまま発しかけてた言葉を飲み込んでディースを見る。
「言い忘れてたけど、実は今あたし身体が無いんだよ。このままじゃ外の世界に出られないんだ」
「「「「えぇっっ!?」」」」
な、え?何で!??外に出られないって・・それじゃあ来た意味が無い気がするんだけど。
えっと、じゃあ此処で話を聞いたらいいの?でもずーっとこの空間にいるのも良くない気がする。
考えてると“だからさ”ってディースが言葉を続けた。
「あたしに身体を貸してくれる“みこ”を用意してほしいんだよ」
「みこ?」
「そうだ。なーに召喚の地だから、みこなんて沢山いる筈さ。
・・・でも、そうだねぇ。どうせならバイーンとナイスボディなみこが良いねぇ」
ばいーん?ないすぼでぃ?
スタイルが良い子が良いって事だよね。でも、そんな身体の子なんてあの村にいたっけ??
「よろしく頼んだよ~」
ってそのまま頼まれちゃって、うーん如何したら良いんだろう?
「我侭な奴だな」
「何かちょっと・・神のイメージと違ったなぁ・・」
そう呟いたクレイとリュウの言葉にはちょっとだけ賛成。
主はあんなんじゃなかった気がするんだけどなぁ。どうだったっけ??ホントに・・。
「ねぇ、」
「へ?」
こそり。リュウが話しかけて来て・・如何したんだろう?
ちょっとだけ聞きにくそうだけど、でも真剣な表情だから重要な事だと思う。
「の、その・・主ってどんな人だったか覚えてる?」
確か前に主が竜だって言ったからかな?良くわかんない。
けどアタシもちゃんと覚えてないから腕を組んで悩む事位しか出来ない。
「んー・・・覚えてはないけど、とりあえずディースみたいじゃなかったと思う」
「そ、そっか・・」
正直に言ったら、ちょっとだけホッとしたみたいな顔。
それから“ごめんね”って謝られちゃった。何に対してだろう??分かんないけど、まぁ良いか。
主・・・・かぁ。どんな御方だったかな?凄く優しかった印象はあるんだけど。うーん・・・。