鳥篭の夢

第二章/14



マスターの心から出てきたアタシ達は長老さんにさっきまでの事と、みこが必要だって事を伝えた。
すると長老さんは“大丈夫”だよって、にっこり柔らかく笑う。
急に言っても用意できるんだ。やっぱり凄いなぁ。流石、召喚の村だけあるよね。

「リーム」
「はい!」
「君に任せるよ」
「は・・はいっ!!」

驚いたような顔。あ、さっきアタシ達を此処まで案内してくれた女の子だ。
あの子もみこなのかな?

「この子はリーム。この村で一番力を持つみこなんだ」
「リームと申します」

名乗って、大きくお辞儀をひとつ。

「あの・・・頑張りますね。よろしくお願いします!」

顔を上げてニコッて、すっごく素敵な笑顔。良いな良いな、とっても可愛いの。
しみじみクレイが“良い子”だって言って・・うん、それはアタシもそう思う。
それから長老さんが支度してって・・・支度?何するんだろう??それは良く分かんない。


「皆さん、準備が出来たよ」

準備が完了するのを待って、呼ばれて行ってみると・・・えっと、何かの紋様?みたいなのがあった。
何だろう?ちょっと見覚えがあるような気がする。こんな感じのーっていう程度だけど。
ま、良いか。良くわかんないし。思い出せないし。

「長老様。着替えてきました」

ふとリームの声が聞こえる。頭巾みたいなのを被ってて、手には──わっ!蛇!?
怖くて思わずリュウの後ろに隠れたけど。リームの手には蛇の形の杖。
で、でもぬめぬめしてないし、そこまで怖くない?うん・・きっと、多分大丈夫。
ちょっと変な格好のリームは長老さんに促されるみたいにマスターの前に立つ。

「大丈夫でしょうか・・?」
「何だかアタシ達がドキドキするよね」
「うん。でも、どうするんだろ・・は分かる?」
「ううん。思い出せないから初めて見るんだと思うよ」
「そっか・・」

ニーナ達と皆で離れた場所で見守る。でも本当にどうするんだろう?うーん、心臓が何だかドキドキする。
他の皆もちょっと落ち着きが無いみたいに見える。初めてだもんね、こんなの。アタシも多分そう。
どうなるのかな?って考えてたら・・・急にゾワッて背筋に寒気が走る。アタシにも目に見えて分かる強い力。

「──そろそろ来るよ!」

長老さんの声。同時にマスターの鎧が開いて、中から・・何?あれ。
紫色の光が滲んで、金色の目?みたいなのがある黒い塊が一気にリームの中に入ってっちゃった!?
えっと・・えっと・・・?何が起こったのか良く分かんない。辺りが静まり返って何だかアタシも声が出せない。
とにかくリームに違和感。まるでマスターを見てた時みたいな、ヒトとは少し違う・・・・。


「ああーっ!外の世界だよ!!」


嬉しそうに大きく伸びをするリーム・・・じゃなくて、もしかしてディースなのかな?あれ。
“外の空気が美味しい”って嬉しそうに駆け回る姿はさっきのリームとは全然違うもんね。

「リーム・・?」
「何言ってんのさ、あたしはディースだよ。この“みこ”の身体を貸りるって言っただろ?」

あ、やっぱりディースだ。
まだリームだと思ってたのかな?リュウとニーナはビックリしてるけど・・でもさっきと全然違いすぎるもんね。
何だか目つきも悪いし。あ、でもコレはちょっと失礼になるのかな?
それからディースはリームの身体をジーっと見る。何か考えてたらごちゃごちゃしてきたけど。

「しかしチンケな身体だねぇ・・・バイーンって言ったのに」

・・・・・・・わ、我侭!!?
にこにこしてたリームとは全然違うから何だか変な感じがする。
それに“仕方ないか”って言っちゃうし。確かにバイーンとかじゃないけど、でもちょっと酷い。
あ、今のってリームにも聞こえてるのかな?後でしょんぼりしちゃわないかな?心配かも。

「ディースさん?」

ふと長老さんが話しかける。真剣な表情。

「教えてくださいませんか?さんの存在。
そしてリュウさんと貴女、お2人のうつろわざるものの事に──」
「あのさぁ」

長老さんの言葉を遮って・・えっと、ディース?何だかすっごく怖い顔してる。
腕を組んでとんとんって片足で地面を何度も叩く。怒ってる・・の、かな?よく分かんない。

「ず~~~っと鎧の中に閉じ込められていたんだよ?あたし」
「へ?」

それは確かにそうだけど・・・。

「ちょっと休ませてやろうとか、何か食べさせてやろうとか思わないわけぇ?」

ずずずいっと長老さんに詰め寄る姿はちょっと怖いかも。
あ、ふふふって言いながら近づいてくるマスターにちょっと似てるかもしれない。
言ったら怒るかな?怒られるのヤダな・・・うーん、黙っといたら大丈夫だよね。



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