第二章/19
「はー・・凄かったね!」
「うん」
あれから本当に凄い質問攻め。でももう夜も遅いからオヤスミって事になって一応解散。
ちょっと名残惜しそうだったけど「また今度ね」って言ったら笑顔で頷いてくれた。
本当はアレ以上何も答えられなさそうだったからなんだけど。まぁ大丈夫・・だよね。
「は凄いね」
「え?何が??」
唐突な言葉。うーん、何かそんなに凄いことしたっけ?
わかんなくて首を捻るとリュウは大きく一度首を縦に降る。
「だってあの子達の質問にちゃんと答えてたから。
思い出せてない事だって凄く考えてから“思い出せない”って言ってただろ?
ちゃんと自分の記憶とも向き合って、それから答えを言ってた。
僕ならもしかして考えもせずに“知らないから分からない”って言ってたかもしれない」
「そうかな?」
確かにあの時、あの子達の問いにリュウは“分からない”って答えた。
半身なのに分からない、自分なのに何も知らない不思議。
リュウはソレとちゃんと向き合ってあの子達に答えてたと思うけどな。違ったのかな??
「アタシはリュウもちゃんと考えてたと思うよ。
それにアタシの場合はそれで思い出せるかなって期待もちょっとあったから」
「そうなんだ」
もっと沢山思い出したい。もっともっとフォウルの事を思い出したい。
だからアタシはそうやって答えてただけ。でも結局、アレ以上は思い出せてないけどね。
フォウル・・・リュウは、フォウルをどう思ってるのかな?やっぱり会いたくない?
「リュウは・・・・」
「ん?」
「リュウはやっぱり怖い?フォウルに会うの」
吸収されるって言われた時のあの表情。自分が消える恐怖、戸惑い。
そんな顔して欲しくないんだけどな。折角の自分なのに。離れてた自分なのに。
「いや、僕は・・・」
何だろう?真剣な顔。あの時とは違う表情。
それからあの子達に“分からない”って言った時みたいにリュウはふと笑った。
「──で、決心はついたのかい?」
「うん」
まだ眠いのかな?欠伸をしながら訊いたディースにリュウは頷く。
「吸収されるのを分かってても会いに行きたいと・・・」
「うん」
「何故だい?」
やっぱり眠そうだけど、でも真剣な顔。
「会って話がしたい」
昨日聞いたのと全く同じ言葉。それに何だかちょっと嬉しいって思う。
予想外の答えだったのかな?そのままの姿勢で固まったディースに思わずアタシは笑った。
「だからさ・・会っても吸収されるんだってば。話、聞いてた?」
「うん。でも、会って話をしてお互いの事をもっと知り合えば、吸収される他にも道が開けるかもしれない・・・」
黙り込むディースにちょっとドキドキ。駄目って言うかな?言わないよね?大丈夫・・・・だよね?
じーっと見てるとディースはゆっくりと息を吐いた。まるで、ため息をつくみたい。
「ふむ。今のリュウには知識が必要って事か。ついでに力もね」
「・・・力、ですか?」
ニーナが首を傾げる。不思議そうな顔。でも何でだろう?ちょっとだけ不安そうにも見えた。
「理由がイマイチボケッとした感じだけど・・・。
本人が会いたいって言ってんだから仕方ないか。協力してあげるよ」
協力?って何するんだろう。
分からなくて、リュウと一度顔をあわせて首を捻った。
「良いかい?リュウ。あんたがフォウルの半身って事は、フォウルがあんたの半身って事でもあるんだ。
半身同士は何れ出会う運命・・確かに今のままじゃあんたは吸収されるだけだ。
けど、その時にあんたがフォウルと同じ位の力をつけていたら──?」
「簡単に吸収されないって事?」
少なくとも力ずくでは。でもフォウルはそんな事しないと思うけど・・・。
「そうだよ、ウサギちゃん。逆にあっちの神さまを取り込めるかもしれない」
「同じくらいの力・・・」
取り込む?リュウがフォウルを??
あれ?取り込むか取り込まれるかしか選択肢が無いの?リュウはフォウルに会いたいだけなのに。
アタシだって確かにリュウを無事に都へお連れする命を受けてはいるけど・・・でも・・・・・。
そんなだっけ?ひとつになるのはそんな一方的な事だったっけ??
ディースが何かを話してて、でも頭に入ってこない。
元に戻るって事。吸収の事。ひとつになるって事。
ぐるぐる。疑問だけが沢山頭を駆け巡ってる。何だろう、頭・・・痛い。
「おい、如何した?」
「え?」
「・・・だ、大丈夫・・か?」
見上げるとクレイとサイアスの姿。
リュウとニーナとディースはいなくて・・・あれ?何処に行ったのかな?
「えっと、他の皆は?」
「あぁ、ニーナ達なら準備に行ったぞ。
こそ何時もなら我先にと勇んで行くくせに如何したんだ?」
「・・・・クレイ、今アタシのこと馬鹿にしなかった?」
脳筋とか思ったでしょ?アタシ馬鹿だけど、別にそんな事ないんだから!!
「別に馬鹿にしたつもりなんてない。
ったく。俺を何だと思ってるんだ、お前は」
「クレイニイサマ」
「お前こそ馬鹿にしてるだろう」
「あははは!そんな事ないよ」
即答したアタシにげんなりしたクレイの姿。
でもホントだよ?ちょっぴりからかっただけだもん。
ちょっとだけ困ったみたいな慌てるサイアスがいて、何だかちょっとだけ楽しい。
さっきまでぐるぐるしてたのがまるで嘘みたい。
「んーと。で、これから如何するんだっけ?」
「あ・・アルカイの神殿、に・・行く」
「そっかそっか。それでリュウ達は準備してるんだね?じゃあアタシも早くしなくっちゃ!!」
着替えもあるし。あ!武器のチェックしとかないと・・途中で使えなくなっても仕方ないもんね。
「で、結局なんだったんだ?」
呆れたようなクレイの声。・・・・もしかして心配してくれてのかな?
「うん。何でもないよ、大丈夫!大した事じゃなかったと思うし。
でも・・・2人とも、ありがとっ!!」
「ああ」
「・・・・い、いや・・」
軽く手を上げて笑ってくれたクレイと、ちょっと恥ずかしそうなサイアス。
極端な2人の反応が面白くて・・・えへ、でもやっぱりちょっと嬉しいかも。
アルカイの神殿か。どんな所なんだろう?アルカイっていう位だから竜に関係してるんだよね?