鳥篭の夢

第二章/20



「リュウさま!ガーディアンさま!これお弁当です!!」
「わ、アタシにも?ありがとう」

準備が終わってディースが場所を地図で確認中。
村の出入り口で待ってたら、昨日の3人がアタシとリュウにお弁当をくれた。
アタシには必要ないのに・・・えへへ、嬉しいなぁ。あ、でも。

「アタシの事、ガーディアンじゃなくてって呼んで欲しいな」
「はい!さま!!」

うーん。本当は“様”もいらないんだけど・・・まぁ良いや。
何度も訂正するのもあんまり好きじゃないし。名前呼んでくれるなら気にしない。

「お2人とも、どうかお気をつけて!」
「またお話してくださいね!」
「うん!」
「ありがとう!!」

キラキラ輝くような期待の眼差しに応えられるかは分からないけど。
でも何かお土産話でも見つけられたら良いなって思って頷く。

「リュウさん!さん!行きますよー!」

少し先でニーナの呼ぶ声。もう行かなくちゃね。

「じゃあ行ってきます!!」
「また後でね!」

リュウと一緒に手を振ってから歩き出す。


「マスター・・!」

遠くから、声?何だか聞き覚えがある。振り向いてみたら・・・え、あれ?

「マスター!?」
「マスターさん!」

もう動けなくなったんだと思ってた。だってただのヨロイに戻るってディースは言ってたし。
ちょっとビックリ。それは皆も同じみたいでニーナは驚いたように口元に手を当ててる。

「マスター。マスターを置いて何処へ行きますか?」
「・・・ややこしいなぁ。何だよ、お前。まだ動けたのか?」
「そのようです」

ディースの言葉にマスターは頷く。元気そうなマスター。
いなくなってないんだって思ったらちょっとだけアタシも嬉しい。変なの。

「全く、面倒くさいねぇ・・・」
「うふふ、うふふふー・・・マスターが出て行って悲しいですね」
「あたしは漸くあんたから出られてせいせいしてるよ。もう封印されるなんてまっぴらごめんだからね!
あんたはもう動かなくて良いんだ。チェクに大人しく残って、鎧は鎧らしくその辺に転がってな!」
「ディース?」
「ディ、ディースさんっ!!」

何だか、さっきから勢いに任せて言ってない?
閉じ込められたのが嫌だったのは分かる。出られたのが嬉しいのも。
でもその全部が本当に本当の気持ち?分かんないけど、だけど・・・。
ぷいってそっぽ向いて歩き出す。それをニーナが慌てて追いかけた。

「マスターは、もう要らないですかね?」

返事は無い。何だろう、胸が締め付けられるみたいな感覚。
如何して・・・・?ううん。アタシにもちょっとだけ分かる。
主に見捨てられたら如何していいか分からない。
困惑。不安。
アタシだってもしフォウルに捨てられたら・・・・そんなの、考えただけでも苦しくなるのに。

「マスター・・・」

表情はわかんない。だけど何だか凄く寂しげに見えた。

「ふふ、うふふー・・・・。
・・・・・・・あ。笑う所、間違えましたかね」
「あ、あのね!マスター!」

空気に耐えられなくて・・アタシも近い立場だと思ったら苦しくて思わず声をかけた。
ええっと“元気出して”じゃダメだよね。そんなのアタシだって嬉しくない。だから・・・。

「ほら、ディースもチェクで待っててって言ってたでしょ?
今の身体はリームのなんだし、必ずディースはチェクに戻ってくるんだから・・ね!
それに主が帰ってくる場所を守るのだって大切な事だよ!」
「・・・そうですね。分かりました」

マスターは何度か頷いてくれて・・・えっと、大丈夫だよね?変な事は言ってないと思う。


「ん?」

何だろう?

「ふふふー、ありがとう」
「うん!」

マスターが笑ってるのは少しだけ安心。寂しくないよね?大丈夫だよね?
帰ってきてからどうなるかは分からないけど・・・・とにかく、出来るだけ急いで戻ってくる。
だから、ちょっとだけ待っててね!



inserted by FC2 system