第二章/24
「──っ」
目覚めと同時に嫌な気配。近づいてくるのが分かって、それがアタシの傍に来た瞬間に起き上がる。
寝込みを襲おうなんて卑怯すぎるんじゃないかな?そういうの、アタシは嫌い。
襲おうとしてた男の持ってた銃を蹴り上げて、そのまま腕を後ろへ捻って・・・これで良しっと。
で、えーっと・・・ニーナとディースは・・・・?
「見事な手際だが、これ以上の抵抗はやめた方が良いぞ」
女のヒトの声。凛としてて迷いが無い言葉。顔を上げてナルホドって思う。
ニーナとディースが兵士に捕まってる姿。頭には突き付けられた銃。
どっちかだけなら何とか出来る自信はあるけど、離れた場所に2人は流石に無理。
捕まえた男・・多分、帝国兵だよね?格好とか西に渡った時に見た事ある。
で、その男の腕を放して今度は逆に後手を組まされて捕まった。抵抗出来ないのって悔しい。
「さん、大丈夫ですか!?」
「うん。別に何もされてないし、大丈夫」
笑顔で返せばホッとしたような顔。ニーナも大丈夫・・・だよね?
こそこそって訊いてみたら“大丈夫です”って。それなら良かった。
「隊長!残ったアルカイの竜の仲間達も捕らえました!!」
「ごくろう。では後は目標の捕獲。帝国へ連れて行く」
「はっ!!」
アルカイの竜・・・やっぱりリュウが狙い、か。
今の話から考えるとリュウはまだ捕まってないんだよね?如何にか出来ないかな?
「ウサギ。あんた、こいつ等ぶっ飛ばせないのかい?」
「アタシ1人なら何とかなるよ。でもニーナとディースも捕まってるし守りながらだと無理かな。
複数人数を制圧するならアタシが──」
・・・?ん、何だっけ?
でも何かあった気がする。アタシが増える。あたしをつくる。
・・・・・・よく思い出せないけど。気のせいかな?だよね。
「さん?」
「あ、ううん。
んー・・・2人の生死を問わないって言うなら簡単だけど・・嫌でしょ?」
「当たり前だよ!馬鹿だね」
「むー・・・」
馬鹿って言った。でも言った方が馬鹿になるんだから!
って、そんな事よりもリュウだってば!もし何かあってフォウルに怒られたりしたらヤダなぁ。呆れられるのも嫌。
何か・・・なんて、考えている内に隊長って呼ばれてた女のヒトが部屋に近づいていく。
アタシ達は一箇所に纏められて兵士達に連れて行かれて・・身動き取れないって苛々する。
ガタン
慌てるような足音。リュウが出てきたと同時に隊長がリュウに銃口を向けた。
「動くな」
「リュウ!!」
脅し。行動を抑制する為。“動くな”って言ってたし、それは分かってるけど腹立たしい。
“リュウを助けなければ”そんな衝動が身体を動かそうとする。傷つけさせるわけにはいかない。全部投げ出して暴れたくなる。
ガーディアンとしての本能・・だと思う。でもそれに従ったらニーナ達が危ないから出来ない。
「私はフォウ帝国軍のアースラだ。お前がアルカイの竜であるという調べはついている。
・・・無駄な抵抗はしない事だ。大人しくすれば仲間の無事は保証しよう」
「何・・・!?」
驚いた顔。それからアタシ達の方を見て瞠目。
「!ニーナ・・皆っ!!」
「共に帝国へ来てもらうぞ」
隊長・・アースラ、だっけ?そのヒトの静かな言葉。リュウも抵抗できない。
やっぱりアタシが暴れちゃった方が良かった?でも多分ダメ。守りきれる自信は無いし。
銃なんて飛び道具、絶対に反則だと思う。アタシは下手で使えないからなぁ。
・・・・・ん?使った事あったっけ?でもまぁあるって思ったんだからあるんだよね、多分。
「くそっ!」
クレイの悔しそうな声。今にも噛み付きそうな勢いで睨み付けてる。
捕まってるのにそう出来るのは凄い。いや、実はアタシもそれ位してるのかもしれないけど。
「貴様達が此処にまた戻ってきたという事は、避難した村人は見つかってしまったのか。
俺たちの事を聞きだすのに村人達に手荒な真似をしたんじゃないんだろうな!?」
それはちょっと気になった。子供ばっかりで・・そんな子達が傷つくのは嫌。
「・・・・何の話だ?」
え?
「とぼけるな。マスターにした事を見ればお前達がどんな種類の人間か見当がつく!」
「この村へ来たのは今日が初めてだ」
えっと・・・嘘を吐いてるようには見えないけど。
「じゃあ他にも帝国のヒトがいるの?」
「ああ。先に来たのはラッソの部隊だろう」
ラッソ?誰だろう。
「あの・・別の場所に村人達が隠れている筈なんです!」
「ふむ。なるほど、どうりで人影が見当たらない訳だ」
「お願いです!村の人達の無事を確認させてください!」
ニーナの必死の言葉。それにアースラは考えるように腕を組む。
「・・・ラッソが此処にいないとなると村人を追ったのかもしれん。
良いだろう。その場所まで案内しろ」
皆、無事だといいな。大丈夫かな?酷い事されてないといいんだけど。
マスターをあんなふうにしちゃう位だから。少しだけ嫌な予感。