第三章/01
目覚めた時には、全て終わってた。
「そっか・・・」
思わずため息。何があったのか全部ニーナから聞いた。リュウが暴走した事。
ヒトの愚かさへの絶望、深い悲しみ、強い怒り。そんな感情だけは感じていたけど・・・。
まぁ結局は気を失ってたって事実に、まず自分を腹立たしく思うんだけどさ。
「アタシ・・護れなかったんだ」
「そんな事ないです!確かに方法は賛成出来ないですけど・・。
でもさんはちゃんとリュウを守ったじゃないですか!」
「うん。だからダメなの」
「え?」
ニーナが目を丸くする。変な事、言ったかな?分かりにくかったかな?
アタシ説明とかも下手だもんね。でもアタシからしたら簡単な話なんだよ?
「だってね?リュウは皆が殺されて、その時点でもうあんなに苦しんでたのに・・・。
本当はアタシが無事のままリュウを護らなくちゃいけなかったの。
アタシが代わりに怒って、無傷でアイツを倒して・・・それが最善策だった。
これ以上“何か”が傷つく姿、ヒトが何かを傷つける姿。それを見せたくなかった。
怒り。悲しみ。衝動が理性を超えて、だから暴走したんだよね・・・」
その結果、力を使いすぎて倒れさせちゃった。今は、眠ったままのリュウ。
「ごめん・・・ごめんね、リュウ」
護れなかった。眠るリュウにそっと触れて謝るけど・・・強い後悔。
やっぱりアタシは頭足りてない。考え無しに行動する事こそが愚かだって分かってるのに。
ガーディアンとしての本能が手伝ったとしても、それを御せずに理性的に行動できなかった。
涙出そう。泣いても無意味だし、これは全部自分が悪いんだから流石に我慢だけど。
「・・・・さて、戻ろうか!長老さんも待ってると思うしね」
「さん」
「ん、何?ニーナ」
どうしてニーナは悲しそうな顔するんだろう?
考えてたら“何でもない”って。変なの。・・・・あ、でもその前に。
「帰る前に、お墓・・作らなくちゃね」
村の人達のお墓。あんなに小さな子供達が。
あの時キラキラした顔で笑ってたあの子達が、アタシ達のせいで犠牲になった。だから・・・。
「そうですね。お墓、作りましょう」
「うん!」
それから人数分のお墓・・あ、ラッソとかいうアイツのもニーナが言うから一応作った。
ニーナは本当に優しい。アタシはあんなの如何だって良いって思うのに。今思い出してもやっぱり腹立つし。
あ、結局一発殴ってないや。まぁ今更いないヒトの事考えても無駄だけどさ。で、それから帰る。
リュウはずっと起きなかった。それ程に力を消費してるんだよね?やっぱり。
・・・・ん?あれ。そういえば起きてからずっと何だか違和感。何だろう?んーと・・・・あっ!!
「ね。ニーナ」
「はい?」
「リュウの事、何時から呼び捨てにしてたの?」
ずっと“さん”付けだったよね?
それが何時の間にか呼び捨て。だから違和感があったんだ。
「・・・あ。そういえば」
「良いなぁ、リュウばっかりずるい!
アタシも呼び捨てで呼んでね!そっちの方が友達って感じがするし」
「お友達・・・ですか」
あれ?
「そんな事ない?アタシと友達って嫌かな?」
やっぱりガーディアンだし、ヒトじゃないし・・・ダメ?
考えてたらニーナが慌てて首を横に振った。
「あ、いえっ!そうじゃなくて、そう言ってくださるなんて思わなくて・・。
さ・・とお友達。とっても嬉しいです!!」
「良かったぁ」
もし嫌だって言われたら如何しようかと思っちゃった。ニーナはそんな事言わないけど。
笑顔だし・・・・・気、遣ってるんじゃないよね?大丈夫だよね?多分。
ぎゅうって手を握り締められて、照れたみたいな笑顔。えへへ、少しアタシも気恥ずかしい。
「さってと!急いで村に戻ろーっ!」
「あ、ちょっとウサギ!急に動いたら傷に障るよ!」
急に走り出したアタシの後ろからディースの声。心配してくれてる言葉。
もう村はすぐ其処なんだから大丈夫なのに。何だかくすぐったい感じ。
だからそのまま振り向いて、手を上げて笑った。
“ほら、アタシこんなに元気でしょ?”そんな意味合いを込めたつもり。分かるかな?
「大丈夫っ!ニーナが治してくれたから!
アタシ、先に戻って長老さんに全部話しておくね!!」
「おい。!!それは俺が話す!」
「だってクレイはリュウもアースラも見てるし。
だからアタシに任せて!」
それは皆には話しにくい事だから。村の人達が全員死んでしまった事。
長老さんはどんな顔をしてしまうんだろう?それに、リームは?分かんないし、怖い。
けど、だからって誰かに任せちゃうのは嫌だ。クレイにはいっぱい頼んじゃってるし。
今は少しでも役に立ちたいの。さっき何も出来なかったから・・・この位は。