鳥篭の夢

第三章/03



「──では、その竜が神皇様の半身だというのか?」

一通り話し終わったアタシ達にアースラからの問い。それに頷いて見せた。

「うん。半身様同士は互いに呼び合い、一つになる事で完全になる。
アタシは良く知らないけど、一応これが決められた流れみたいなんだよね」
「それと、私達はエリーナ姉さまを・・」
「エリーナ?」

ニーナの言葉にアースラが怪訝そうな顔。

「ウインディアの王女だ。お前ら帝国に連れ去られた。
俺達はその行方を追っている・・・・帝国の何処かにいる筈なんだ」
「王女・・・」

ポツリ。呟く言葉にクレイが“知ってるのか?”って訊くけど否定。
ちょっと顔色が悪いように見えるけど大丈夫かな?

「これで私たちの事は全部です。道案内・・お願い出来ますか?」
「・・良いだろう。どの道、お前達の協力が無くては帝都に戻れんからな」

それは竜が捕獲できなかったら主に怒られるからかな?
だったらちょっと気持ち分かるかも。リュウに何かあったら・・・うん、アタシも平気な顔しては会えないや。

「だからいい加減、縄を外してもらえんか・・・・もう抵抗する気は無い」
「あ!そうだった!!」
「ご、ごめんなさい、すぐに外して・・・!!」

言葉の途中でブチって音。縄だけが切れてバラバラに落ちていく。
サイアスだよね?こんなに綺麗に出来ちゃうのってサイアスだけだもん。
見たら、ちょっと珍しい良い笑顔。アタシもそれにつられて笑った。

「・・・お、女を、縛るのは・・・良くない」
「ありがとう、サイアス!」
「ありがとうございます、サイアスさん」

2人でお礼。アースラはフンってそっぽ向いちゃったけど。

「余計なマネをしようなんて考えるなよ、女」
「“女”ではない・・・“アースラ”だ」

凛とした表情。アースラってカッコイイなぁって思う。
照れた顔すると可愛いんだけどね。そういうのも素敵だなぁ・・・。


──シャラン

「ぇ?」

鈴の音?

「ん、ぐ・・・っ!?」

直後に鋭い痛み。急すぎてそのまま膝をついた。え・・・?何、コレ。

?如何かしましたか?」
「・・・・ぁ」

驚いたような、心配そうな顔。
嫌だな。そんな顔しないで?ニーナ。

「ううん、平気だよ。いっぱい動いたからちょっと疲れちゃったのかも」
「それは平気って言わないです!
それには大怪我だってしましたし・・・休んだ方が良いですよ」
「ありがと。じゃあ暫く外でボーっとしてくるね」

早く、離れなくちゃ。

「あ。お布団とか用意しなくて平気ですか?」
「うん、大丈夫だよ。
流石にそこまで弱ってないからね!」
「気をつけてくださいね、
「ん・・ありがと!ニーナ」

嬉しいな。痛いけど、嬉しくてへらりって笑う。きっと間抜けな顔になってる筈。
そのまま外に出て扉を閉めた。そのまま一度息を深く吐いて・・・・痛い。
歩けば頼りない位にふらふらしてる。自分でも足取りが覚束無いって分かる。

「ぃ・・・たた・・・・」

ズキズキ。じわじわ。痛みが広がって、強くなる。
何だろう?如何して?だってさっきの怪我はニーナに治してもらったのに・・・。
ううん。さっき怪我したトコだけじゃない全身に色んな痛み。
打ち付けたり、切られたりした痛み。熱くて焼けるみたいな痛み。色んなのが混じってる。

「・・・・っは・・ぁ・・・」

呼吸もしにくい。叫びたい。喚きたい。でも誰かに聞こえたら困るしなぁ。
心配させちゃうのは嫌だな。ニーナはきっとまた泣いちゃうんだ。それは嫌。

「フォウ、ル・・・」

無意識に口をついて出たのは大切な人の名前。

「助けて」

なんて、守るべき御方に救いを求める。馬鹿だなぁアタシ。
でも痛い。分からない痛みはただ恐怖でしかない。怖い。怖い。怖い。如何して?何で?嫌だ。止めて。
勝手に出てくる感情。あたしの感情。おかしくなってる。おかしくなってく。

「助け、て・・・・」

フォウル、って呼びそうになって今度は堪える。だってダメなんだってば。
アタシがフォウルを守りたい。アタシがフォウルを護る。だから救いを求めちゃダメ。
対等でいたいから。存在が対等じゃないなら、せめて立っている場所位は・・・。

「でも・・ど、して・・・こんな・・・・」

こんな痛みが?とにかく近くの壁・・・此処なら誰も来ないよね?そこにもたれて座り込む。
一応、確認位はしとかなくちゃ。痛みの原因。

「・・・・ぅ、ゎ・・・」

痛いトコの皮膚が赤黒い。範囲が広いのとか真っ直ぐ一本引いたようなのとか色々。
血は出てない。触るのは流石に怖くて無理。今でこんなに痛いんだし。でも何で?何で?なんで・・・・??
視界がぼやける。意識が朦朧としてくる。
え、もしかしてこのまま気絶?本日2回目??

「・・・・・うそ・・・」

嫌だ。今度こそ耐えなくちゃ。呼吸が浅くなる。
不安。恐怖。痛み。それを押さえつけようとする感情。アタシのとあたしのと、全部が混ざる。
ぼんやり。目の前に誰かいるのが分かる。茶色くて緑色。輪郭ぼやけてて見えない。だれ?



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