鳥篭の夢

第三章/05



「あれ・・・?」

戻る途中。ぼんやり空を眺めるリュウ・・だよね。如何したんだろ?

「リュウ!」
!?起きてて大丈夫?」
「うん、もう元気!」

心配そうな顔に笑って返して、リュウも体調は悪くなさそうだからちょっと安心。
それからアタシは“ゴメン”って一度謝った。不思議そうな顔。

「だってアタシはガーディアンなのに。
もっと上手に護れなくちゃいけないのに・・・本当にごめんね」
「ううん、そんな事ないよ。
が護ってくれたから僕は無事だったんだし、ありがとう!」

少しだけ悲しそうな顔で笑う。やっぱりアレは失敗だよね。アタシの馬鹿。
そんな事言ったって昔に戻ったりなんて出来ない。やり直しもきかないから仕方ないけどさ。

「でも如何してこんなトコにいるの?急に動いたりして大丈夫??」
「あ、うん。ちょっと考え事・・かな」
「そっか。あ、邪魔しちゃった?」

それならニーナのトコに・・・あ、そういえばサイアスもいないや。先に戻ったのかな?
考えてるとリュウは一度首を横に振ってくれて、それは良かったって思う。
だけど、代わりに凄く真剣な顔。ちょっとドキドキする。ど、如何したの・・・?

「リュウ?」
「・・・は僕の事を怖いって思う?」

え?

「何で?」
「ニーナに聞いたんだよね?僕があんな事になったって・・・。
それに僕と近い存在だって言ってたから何か感じたんじゃないかって思って」
「んー・・・」

あんな事って多分暴走の事、だよね?
確かにあの時の記憶は無いけど、怒りとか悲しみとかの感情はずっと感じてたと思う。
リュウは悲しんでた。ヒトが理不尽に傷付けられ犠牲になった事。
リュウは怒ってた。ヒトが理不尽に力を行使して生命を奪った事。生命を軽んじた事。
だけど怖い?その結果が暴走だから?

「別に怖いとは思わない、かなぁ」

暴走して、確かに生命を奪う形になって・・・でもそれが怖い?そんな事無い。

「アタシは圧倒的な力とか、あんな結果は怖く無いよ。
確かにリュウが暴走しちゃって、後で悲しんだり苦しむのは嫌だけど。でも怖く無い」
「それはがガーディアンだから?」
「んー・・そうかもしれないし、違うかも。
アタシ、頭弱いけど。でも一応アタシとして感じた答えかな」

もしかしたらガーディアンとしての意思が混じってたりとかするかもしれない。
フォウルの傍に今までいて、力を見てきたのもあるかも。戦争中の事も思いだしたし。
でも・・・あぁ、そうだ・・・・・。

「もしリュウがアタシを嫌いになって・・恨みとか怒りとか、そういったキモチで殺そうとするなら。
・・・そしたら怖いと思うだろうし、悲しいかな」
・・・」
「リュウはきっと不安も沢山あると思う。力の事も、それをコントロール出来るかとか。
フォウルと会った時にどうなっちゃうかもあるだろうし。それに・・・ヒトの事も。
だけどリュウがアタシを嫌いにならない限り、アタシはリュウを怖いとは思わない。
アタシにとってリュウは大切で、守るべき半身様で・・・それからお友達だって思ってるから!」

これは断言できる事。怖いなんて思わない。
大切な友達だから。

「あのね、アタシ頑張るから!もう悲しませるような護り方とかしないから!!」

絶対に約束する。もうあんな護り方しないから!だから・・・。

「リュウも怖がらなくても大丈夫!
・・・ね、だから一緒に行こう!!」

フォウルのいる場所、きっと待ってくれてる場所・・帝都に。
言葉にしなかったけどリュウは力強く頷いてくれて、それが嬉しくてアタシは笑う。

「ありがとう、

あはは。お礼なんて言われると流石に照れちゃうかも。
それから近くで足音がして、見てみたらニーナの姿。聞いてたのかな?さっきの。
まぁ聞かれたくない事なんて喋ってないから別に気にならないけど。

「リュウ、!兄さまがそろそろ出発するって・・」
「はーい!リュウ、行こう!」
「うん」

呼ばれて、リュウの手を引いてニーナの傍に行く。
そうしたら少しだけ恥ずかしそうに俯いて・・ニーナ?

「あ、あの・・・」

ごにょごにょってちょっと言い出しにくそうにして、だけど顔を真っ直ぐ上げた。

「わ・・・私は、少しだけリュウを怖いと思っちゃいましたけど。
あの、でもエリーナ姉さまの事もありますけど、一緒に行くのは私自身の意思だから。
リュウは仲間で大切で、全部見届けたい。リュウがまた暴走しても、私が止めます!
だからそんなに不安にならなくても大丈夫です!ね!!」

一気に全部の言葉を言ってニーナは笑う。
リュウはちょっとだけ泣きそうな顔をして、ありがとうって返した。

「その時はアタシも止めるの手伝うね!あ、力任せになっちゃうかもだけど」
「えと・・・、それはリュウが痛いですよ?」
「い、痛いって程度で済むなら良いけど・・・」

む。リュウ、それは何だか聞き捨てなら無い言葉だよ?

「アタシだって加減位できるよ!
大丈夫、痛いって思う前に一発で気絶させるから!」
「そ、それは大丈夫なんでしょうか・・・」

困ったようなニーナの顔。だけどそれから皆で笑って・・うん、きっと大丈夫だよね。
ただ、フォウルの感情が遠くにしか感じられないのが怖い。
悲しんでいないと良いな。そんなの普段から表に見せたりしないけど、でも・・・。



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