鳥篭の夢

第三章/06



「良かったね!砂船に乗せてもらえて」
「成る程。海を渡るツテがあるとはコイツの事だったのか」

ずっと続く金色の砂。船で走ると案外暑くないんだなぁって思う。
最初は走ってたし、次は密航で隠れてた上に寝てたから知らなかった。

「それにしても驚かされましたわ。
いきなり来て“船に乗せろ”なんて言わはるんやから・・・」
「ごめんなさい。マーロックさん」
「乗せてくれてありがと、マーロック!」

何だかんだで“良い”って言ってくれたもんね。マーロックも優しい・・・のかな?多分。
乗る前にアースラと何かこそこそって話してたみたいだけど、まぁ良いか。
お礼を言ったらちょっとだけ嬉しそうな照れた顔して“いやいや”って言葉を続ける。

「ワイもシュークで仕事があったんで丁度良かったですわ」
「シューク?」
「港町ですよ。そこから泥の無い海が広がっていて西側に行けるんです」
「へぇ、そうなんだ。大帝橋は使えないんだもんね。
あれ?でもアースラが一緒なら大帝橋使っても良かったんじゃない?」

そっちの方が早いような気がするんだけど。

「あー、ワイもそうやと思ってんけど・・・今、大帝橋止まってますねん。
誰かさんがそこで大暴れしはったんやって兵隊はん達は言うとったんやけどもね」
「何だと!?」
「い、いやいやワイに銃を向けられても困ります!アースラはん!!」
「わ、わ!アースラ落ち着いて!!」

マーロックに頼んだときもそうだったけど、アースラって案外手が早い。
確かに暴力は単純で簡単だけど・・やっぱり乱暴だよ。そう思わないのかな?

「ふふふー。でもそれは自分達の事じゃないかってディース様が言ってますよ。
前回忍び込んだ時に装置の傍で戦ったのが原因だって。
だから今回遠回りになったのは自業自得なのですねー。うふふ、ふふふふー」
「あー・・確かにそんな事もあったな」

うんうん、そういう事もあったねぇ。なんてクレイの言葉にアタシも頷く。

それにしても・・・ディースがヨロイに戻ったからだよね?マスターも戻ってきてくれて嬉しい。
何時も通り。だけどディースの事を“マスター”じゃなくて“ディース様”って呼ぶようになった。
マスターって名前を貰ったんだって。嬉しそうな弾むみたいな声で教えてくれた。

「お前達・・呆れて物も言えん」
「す、すみません。アースラさん」
「・・フン。まぁ起きてしまった事をとやかく言っても仕方あるまい」

ふいってそっぽ向いて忙しなくアースラの尻尾が動く。
ニーナは申し訳なさそうで、だからちょっと困ってるんだよね?多分。

「まぁシューク迄まだ時間もありますし寛いでってくださいな。
あ、せや。はん」
「え、何?」
「まだこないだのお茶があるんやけど、淹れてもらえません?
どうも自分じゃ上手い事淹れられへんで困ってるんですわ」
「うん、良いよ!」

まだ時間があるって事はこれから暇だもんね。退屈なのは嫌だし・・・。
それに今回はちゃんと全部思い出せてるから大丈夫。もっと上手に淹れられる気がする!

「ホンマですか?いやぁー楽しみやわぁ」

アタシもマーロックもにっこり笑う。

「そういえばは前回もマーロックさんにお茶を淹れてましたよね。
良かったら私にも頂けませんか?」
「あ、僕も欲しいな。大丈夫かな?
「う、うん!」

ニーナとリュウが次々に訊いてきてちょっとビックリ。
でも・・・・・うん、大丈夫だよね。大体の量の加減もちゃんと思い出せてるし。

「なら俺も貰おうか」
「あ。クレイもお茶とか飲むんだ」
「・・・・だからお前は俺を何だと・・・」
「クレイニイサマ?」
、お前は・・・」
「あはは、冗談だってば!」

でもちょっと意外だったから。小さいカップで飲むイメージが無いって言うか。
大きい方が良いかな?でもクレイは東のヒトだから口に合わなかったら困るし・・。
ま、皆一緒で良いよね。ついでにサイアスとアースラの分も淹れちゃおっと。



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