第三章/07
「ちょっと待った!ひょっとしてお姉ちゃん達も船に乗る気か?」
「・・・・・・・え、ダメなの?」
船員さんのストップ。えっと・・・あれ?シュークにシオの海を渡れる船に乗りに来たんだよね。
で、リュウ達は良いんだよね。もう船の上にいるし。それなのに何でアタシ達は乗っちゃダメ?
「そんなケチくさい事言わんと、これかてワイの船やで?」
「だがマーロックさん。女は船に乗っちゃいけないんだ!」
乗っちゃイケナイ?え、何で?
ニーナとアースラと顔をあわせてみるけど、やっぱり分かんない。
「・・・・?乗ったら何かマズイのか?」
「ムカシっからそういう決まりになってるんだよ!
まぁ、そういうワケで、あんた達には此処で待ってもらうしか・・」
「・・・って、ちょっと待って!」
取り残されちゃうの!?そんなの絶対に嫌だし、出来ない。
アタシだってフォウルに会いに行くんだから!!それにリュウも放っとけないもん。
でもこのまま進めないならアタシ達だけ迂回するのかな?
んー・・。別行動とかフォウルの命にも反しちゃうし、ガーディアン的にも無しでしょ。アリエナイ。
「あ、あの・・あの、何とかなりませんか?少しくらい大変でも私平気です!」
「ダメだダメだ。大体、海ってのは男のモンなんだ・・!
船乗りは根性がいるし腕っ節だってないと海ではやってらんねぇからな」
「うでっぷし?」
つまり、強いかって事?
考えてたら船員のリーダーみたいなヒトが腕を組んでマストを見上げた。
「そうだなぁ・・例えば、あのマストのてっぺんで決闘するとか──」
「あ、はい。じゃあそれ私がやります」
「え・・・ニーナ、大丈夫?」
リュウの心配そうな声。アタシも心配。だって決闘って言ってるし。
リーダーみたいなヒトもビックリしてて、でもニーナはニッコリ笑った。
「大丈夫です。私、高い所は平気ですから」
そういう問題かな?ま、でも大丈夫だって言ってるし。大丈夫だって事で。
すっごく危なかったらきっとクレイが止めるよね。だったらきっと平気、うん。
「お、お姉ちゃんの勝ちだ」
驚いた声。実際に決闘が始まってみれば勝敗は明らかで、決着はあっという間だった。
マストから落ちたら負け。単純なルール。
決闘って言うから武器で戦うのかと思ったけどそうじゃなくて一安心。
・・・あ、でもニーナじゃなかったら危ないか。普通の女の子は落ちたら大怪我するし。
ニーナは翼があるから飛んで船員を後ろから押して、それで終わり。凄いなぁ、ニーナ。
「あー・・アンタ達が強いってのは、まぁ分かったよ。
でもやっぱり海の厳しさはこんなもんじゃ・・・」
「ダメなの!?」
ニーナが頑張って・・・頑張ったのかな?いや、まぁ決着はアッサリだったけど頑張ってた筈。
そう・・!頑張ったのにそんな言葉で片付けちゃうのって酷いと思う!!
「決闘して分かってくれるならアタシも決闘するよ!」
「他に何でも試してください・・私達、平気ですからっ!!」
ニーナと一緒に説得。そうしたらリーダーみたいなヒトは“うーん”って考えるように腕を組む。
「そうまで言うんならもう少し厳しさを教えてやっても良いが・・」
「本当!!」
そしたら船、乗せてくれるんだよね?
「ただし!今度はハンパじゃない。止めておいた方が良いと思うぜ?」
「いえ、平気です!ね、」
「うん、勿論だよ!それで何したら良いの?」
止めといた方が良い事なんてアタシには何も無い。だから大丈夫。
絶対に退かないアタシ達にリーダーみたいなヒトはひとつ大きくため息をついた。
「本当に諦める気は無いんだな」
それにアースラとニーナとで頷いて見せた。
「よし、じゃあお姉ちゃん達にはこっちに来てもらおう」
真剣な顔。船の中に歩いていって・・・あれ?アタシ達も行っても良いのかな?
ニーナ達と顔を見合わせて。あ、でも早く行かなくちゃ置いてかれちゃうか。急がなくちゃ。
「ニーナ、」
「ん?」
行こうとしたら不意にクレイに呼ばれて、見たら少しだけ心配そうな顔。
「気をつけろよ」
心配してくれてるんだよね?それは嬉しいけど、一瞬アースラに目配せたのは良くないと思うな。
気をつけなくちゃいけないのはアースラじゃなくて船に乗せてもらう為にする事なんだから!
「大丈夫だよ。さっさと片付けちゃうから待っててね!」
「そうですよ兄さま。それにアースラさんもいますし、ね!」
「・・・ふん」
フイってアースラはソッポ向いて先に行っちゃった。
クレイのさっきの視線に気付いたんじゃない・・よね?多分。
まぁ、そんなのは考えても分からないけど。とにかく、ちゃっちゃと終わらせて船に乗らなくちゃ!