鳥篭の夢

第三章/09



「リュウ!」
「兄さま!!」

何とか一晩耐えて朝。もう出て良いって船員のヒトが出してくれて・・うーん!お日様が気持ち良い!!
それから後ろを見たら、まだ少しだけ顔色の悪いアースラ。
本人は“大丈夫”って言うんだけど・・・・強がりだよね?多分そんな感じ。
一応、全部アレは倒したけど“また出てくる”ってビクビクしてたし。だから寝不足。

「隊長さん、顔色が悪いじゃないか・・・怖かったのか?」

少しだけ意地悪く訊くクレイに“何でもない”って一言。
あはは、そうだよね。流石にクレイには言えないよね。まだ仲良くないし。

「お、かえ・・・り。
「うん!ただいま、サイアス」

少しお酒の匂い。あー、昨日飲んだんでしょ。
こっちは大変だったのにズルイ!

「ふふふー。ワンちゃんは心配してたんだよってディース様が言ってますよ。
確かにリュウもクレイも皆でずっとそわそわしてましたね。ふふふー」
「そうなの?」
「ふふ。勿論ディース様も心配していましたよ。うふふー」

嬉しそうに笑う声。て言うか、アタシそんなに不満そうな顔してたのかな?・・・・してたんだよね。多分。
ディースがそう言ってくれるくらいだもん。まぁ、心配してくれたって分かったのは嬉しいけど。
あ。じゃあ謝った方が良いかな?考えて顔を見たら、ぽんってサイアスの手が頭に乗った。えぇと・・・?

「サイアス?」

何度も首を横に振る。気にするなって事?かな。うん、きっとそう。
だから“ありがとう”ってお礼を言って出来るだけ笑顔。これで良いよね。大丈夫。


「全く・・・」

唸るように搾り出す声。見たら、船員のリーダー・・確か船員のヒトが“ジグ”って呼んでたっけ。
そのヒトが腕を組んで悩むような顔をしてた。

「腕っ節と言い、度胸と言い、大したモンだよ」
「これで私達、船に乗れますね?ジグさん」

にこにこ笑顔のニーナ。そうだよね、ちゃんと退屈・・・じゃなくて試練に耐えたんだもん!良いよね?
頷いてくれるのを待つけど、ジグは首を横に振って“いや、最後にもう1つ”って・・・えー、まだあるの?
傍らに置いてたでっかいバットを持って何度か素振りする。えぇと、やっぱり決闘?

「船乗りが何かヘマをすると、これでケツを叩くのが決まりだ。
つまり・・ケツパンを食らう覚悟が無ければ船に乗る事は出来ない。そうだな?」

そうなの?・・・・・何だ、決闘じゃなかった。

「と、いう訳で最後にあんた達の覚悟を見たい。ケツを出してもらおうか、姉ちゃん・・・・?」
「え!?」

ニーナが驚いたような声をして後退って、わわっ!顔が真っ赤になってる。大丈夫かな?
“出さないとダメですか!?”って声が必死で今にも泣きそう。
あ、でもそうだよね。ニーナは王女様だからそんな事するなんて考えもしないよね。アタシも驚いたけど。

「な?出来ねぇだろ?だから諦めて留守番・・・」
「え、何で?」
「尻を出せばいいのだろう?」

すとん。先にアースラがズボンを脱いだ。でもアタシもするつもりだったから気にならない。
だってお尻出したら船に乗せてくれるんでしょ?別にそんなの気にしないし、アタシ。
アースラが下に履いてたタイツ?みたいなのに手をかけて、アタシも同じようにズボンを脱ごうとして・・・・あれ?

「どしたの?」

サイアス。何だか凄い勢いで首振ってるけど、止めたら船に乗れないんだよ?
アタシお留守番は嫌なんだけどな。

「わ、わ、わ、分かった!あんた達の覚悟は分かったからズボンを履いてくれ!」
「え?脱がなくて良いの?」
「良いっ!良いから!!」

そっか。じゃあまぁ良いか。
アースラもズボンを履いて、そうしたらジグさんが1つ大きなため息。
・・・・って、あれ?何でクレイも呆れてるんだろ?んー、まぁ別に良いか。気にしない。

「いやー・・負けたよ、あんた達には。ああ言えば諦めてくれると思ったんだが・・。
そこまで覚悟が決まってるなら決まりが如何とか言ってる場合じゃねえな」
「全くですわ。ほんなら無事に船にも乗れそうやし、ワイはもう帰るで」
「え?マーロックは一緒じゃないのか」

驚いたようなリュウの声。でもアタシもビックリ。一緒に行くと思ってた。

「ワイの仕事は終わっとるさかい、まぁこいつ等だけで大丈夫でしょ」
「勿論!任せてください、マーロックさん」
「そんな訳や。そしたらまぁ皆さんお元気で」

マーロックは軽く手を振って挨拶。
アタシとニーナは“ありがとう”って言って、それからリュウも同じようにお礼。
クレイも“すまなかった”って続けて、そしたらマーロックは嬉しそうに笑う。

「なんや、そないに感謝されるんも悪い気ぃはせんもんやね。
また機会がある時はよろしく頼んまっせ!」

高々手を上げて・・・・バイバイ!ってアタシも手を振った。
それから船員さん達を見たら真剣な顔してる。

「よし、じゃあ行くぜ。ツネキチ!クランク!!」
「「おう!!」」

やっと行けるのかな?帝都に。
やっと会えるのかな?フォウルに。
緊張とか不安が混ざる。どうか・・・どうかご無事でいてください。そんな想いが過ぎる。
これはガーディアンとしての感情。

だけどね、フォウル。
アタシは確かにガーディアンだけど、友達としても心配なの。



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