鳥篭の夢

第三章/11



「おー・・見事に無くなったね」
「ど、如何しましょう?」

何がって・・・道が。流石に1日で満潮になるとは思わなかった。


「如何かしたのか?」
「兄さま、道が・・!!」

起き抜けのボンヤリしたクレイの顔。それがニーナの一言で一気にお目覚め。
驚いた顔で、昨日までは道があった筈の場所を眺めた。

「くそ・・っ!なんて事だ。夜の間に浅瀬が無くなったのか!」
「やっぱり無理しても良いから渡っておいた方が良かったのかな?」

まぁ、そんな事言ったって今更だけど。
憎々しげにクレイが手の平に拳を叩きつける。そんな事しても仕方ないよ?

「ごめんなさい。私が休もうって言ったから」
「ニーナの所為じゃないよ」
「そうだ、少しは落ち着け。来た道が塞がったとして行く道が同じだとも限らん。
まだ続いている浅瀬を探すのが先決だろう」
「あ、そっか・・そうだよね!」

何処か通じてたら先に行けるかもしれない!流石アースラ、凄いなぁ。
それから皆で手分けして浅瀬探し。アタシもサイアスとあちこち探してみて、でも結局見つからなかった。
一度戻ってみたら全員集まってて、だけど・・・多分無かったんだろうな。

「如何でしたか?!」
「ううん。見つからなかったよ・・って事は皆も?」

だからそんな風に訊くんだよね?見つけてたら“通れなくなる前に急ぎましょう”とか言いそうだし。

「大陸に繋がっていそうな辺りは全部見てみたがダメだった。
残念だが、次に浅瀬が通れるようになるまでは此処で足止めだ」
「そっか・・・」

本当に残念。だけど、どうこう言っても仕方ないもんね。

「んー・・じゃあ如何しようかなぁ?」

通れるようになるまでの間、何してたら良いんだろう?

「そんな落ち着いていられるか!!次に何時浅瀬が通れるようになるか分からないのだぞ!?
事によるとこのまま何もないこの島で行き倒れになるって事も・・・」
「それは無いね。ってディース様が言ってますよ」

クレイの言葉を遮るみたいなマスターの言葉。あ、でもこの場合はディースの?
とにかくマスターは楽しそうに“ふふふ”って笑う。

「リュウが神皇フォウルと会うって事は運命付けられた事だからね。
少なくともリュウだけは此処で死んだりしないよ・・・だそうですよ。ふふふー」
「んー・・それならアタシも死にそうに無いよね。
ご飯イラナイし、これでも長生きだからそう簡単には死なないし」

よっぽどこの間みたいな重傷を負わない限りは、だけど。
それでも自己治癒能力は高いみたいだから死なない可能性の方が高いんだっけ?確か。
フォウルがいるから如何でも良いって思っててちゃんと覚えてなかった。ま、良いか。

「・・・・そういう問題じゃあ無いだろう。
「はぁーい」

って、如何してアタシだけ?
むぅ。冗談・・・の、つもりじゃなかったけど、冗談が通じないんだから。

「じゃあ僕は島の様子でも見に行ってくるよ。食料の事とかもあるしさ」
「あ、私も行きます!」
「リュウが行くならアタシも行く!」

リュウが歩き出して、アタシとニーナも慌ててついて行く。
だってリュウ1人にするのって危なっかしくて放っておけない。アタシが言う事じゃないけどさ。
やっぱり何かあったら嫌だから。フォウルとの命・・・約束っていうのもあるし。
後ろでアースラも“私も行こう”って言ってて、だけど何かクレイと話してるみたいだった。ま、別に良いけど。


「あ、川があるよ!」

水音。せせらぎって言うんだっけ?それにつられて行ってみれば、無事に川を発見!
海の水じゃないよね?ちょっと飲んでみてしょっぱくないから大丈夫。

「これでお水は心配しなくても大丈夫そうですね」
「うん。後は食料だけど・・・」
「んー・・果物はちょくちょく見つけたけど、それだけじゃねぇ・・・」

何かお肉みたいなのが必要だよね?獣がいないか探して狩る?いなかったら如何しよう。
リュウもニーナも同じ考えみたいで、3人で腕を組んで悩んだ。

「水は心配なさそうだな」

後ろからアースラの声。それに驚くでもなくて、ニーナも頷いた。

「えぇ、それで何か食べ物を探さなくちゃって言ってたんです」
「川があるなら釣りでもして魚が有力か?」
「あー・・釣り、かぁ」

でもアタシ、釣りはした事無いなぁ。

「とにかく釣りが出来そうな場所を探そう」
「そうですね。悩んでいても仕方ありません!」

釣りかぁ。思い出すな、マミのトコでフォウルが釣りをしてたの。
あたしはソレを知らなくて喜んでて、ていうかアタシもソレで知ったんだけどさ。

「リュウなら釣れるかもしれないね」

何となくそう思って口に出す。だってフォウルも上手に釣ってたから。
ビギナーズラックっておじいさんは言ってたけど、そうじゃないかも。なんてアタシは思う。
ま。まずは魚がいる場所を探さなくちゃいけないんだけどね。



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