鳥篭の夢

第三章/12



「すみません。あの・・私、魚臭いし水浴びしても良いですか?」

無事にリュウが魚を釣った帰り道。最初に川を見つけた所でニーナがポツリと1つの提案。
それから“長い間お風呂にも入ってないですし”って言葉を付け加えた。
んー・・確かにアタシもずっとお風呂入ってない。潮風でべたべたしたままで気持ち悪いし。

「賛成!アタシも一緒に水浴びする!!アースラもするでしょ?」
「別に構わんが・・・」

気の無い返事。だけどチラリって川の方見たよね?今。やっぱりちょっと気になると思うんだ。
一応、アタシ達だって女の子だし。で、それにリュウはうんうんって頷いてて・・・。

「・・・リュウ。あの、“うんうん”じゃなくてですね」

ん?って不思議そうに首を捻ってるけど。

「リュウも一緒に水浴びするの?」
「・・・・・え?あっ!!!」

それで漸く気付いたみたい。顔が真っ赤で“ゴメン”って言ってそのまま近くの岩場に移動。
まぁ一緒に水浴びは出来ないよね。アタシだって一緒はちょっとなぁ・・・・。

「ごめんなさい、リュウ。あの、他の人が来ないように見張っててくださいね!!
・・・・・・こっち、見たら嫌ですよ?」

最後にニーナも恥ずかしそうにそう言葉を加えて。流石に見ないと思うけどな。
とにかく、リュウがちゃんと隠れたのを確認してアタシ達は服を脱ぐ。

「つめたーい・・・ほら、もアースラさんも・・」
「わ、本当だ!冷たいっ!!」

足のつま先とかならまだ良いんだけど、太股辺りまで浸かるとすっごく冷たい。
だけどそれもすぐに慣れて気持ち良い。大きく伸びをしたら何だかスッキリする。

「気持ち良いですねー」
「うん!このまま泳いで行きたいくらいだね!」
「そのまま海まで行く気か?」
「えー・・それは嫌かも」

せっかく水浴びしてるのに。

「そ、その前に誰かに見つかっちゃいますよっ!!!」
「そっか」

それもそうだね。“じゃあ止めとく”って言葉を続けたらニーナはホッとしたみたいに息を吐いた。
あはは、そんな必死にならなくても大丈夫だよ。冗談なんだから。
アタシだってそれ位の分別はあるよ。誰かの前で全裸になれる程の度胸は無いし。

「でも、ジグさんに船に乗せてもらう時は2人ともお尻を出そうとしてましたよね」
「それは船に乗る為だ。誰も好んで尻を出そうとは思わん」

呆れたアースラの顔。“そうですよね”ってニーナが慌てて、それにアタシも笑った。
ちゃぷちゃぷ揺れて水面が陽に反射して光ってて綺麗。何て緩やかな時間なんだろう。

「あ。アースラさんって意外と・・・」

ん?含みのある言葉。アタシは分かんないけど、ソレにアースラは半眼になった。

「ふん。大きいから如何だと言うものでもないがな。
それに・・・意外性と大きさと両方を見るならの方だろう」
「え?アタシ??」

何が?耳?尻尾?でも耳はともかく尻尾はアースラの方が大きいし。意外性も何もないよね。
・・・・・・と言うか、何だか2人の視線が胸元に集まっているような?

「・・・・あ、胸の大きさ?でもそんな事言ったらニーナだってある──」
「わっ!、言ったらダメです!恥ずかしいからっ!!」

えー、ニーナは言ったのに?あ、でも口に出したのはアタシか。あはは、ごめんごめん。
笑って謝るけどニーナはむぅって拗ねちゃった。顔が真っ赤で可愛い。やっぱり女の子らしいなぁ。

「む」

──パァンッ!!

唐突の銃声。アースラが撃ったのは分かったけど・・・え?え?どうかしたの??
ニーナと一緒に首を傾げてたら、一度ため息を吐いて銃をまた近くの岩場に置いた。

「何やら気配を感じたので、な」
「・・・・・・リュウー」
「え!?ば、ばかっ!リュウのえっち・・・!!」

そういえばさっきからふらふら気配が動いてたと思ったら。暇だからじゃなくて、もしかして覗くつもりだった?
なら流石にアタシだって呆れるよ。フォウルは絶対にしないしさ。
ニーナはさっきより真っ赤になって肩まで水に浸かっちゃった。あはは、見てはないと思うんだけどね。

「でも早めに上がろうか。リュウも待たせちゃってるし」
「そ、そうですね!そうしましょう!!」

ニーナはうんうんって何度も頷いて早々に川から上がった。
それにアースラはため息をついて・・・んー、でも仕方ないよね。見られちゃうのは嫌だし。



「・・・・・それで、水の心配はありませんし、お魚もとれそうだから暫くは大丈夫です」
「あぁ、すまなかったな。浅瀬が通れなくなって焦ってしまった・・」

戻って報告。少しだけ反省したみたいなクレイの言葉にニーナは笑って首を横に振る。

「きっとすぐ通れるようになりますよ、兄さま!」

元気付ける言葉。うん、やっぱりニーナは優しいなぁって思う。
だけど・・・大丈夫。本当にすぐに通れるようになるよ。だってもう出会う為の路にアタシ達はいるから。
リュウとフォウルのさだめ。アタシがフォウルから受けた命令。帝都で出会うという事。
帝都への路をもし誰かが邪魔したとして、だけどそれは邪魔にすらならない。
だって半身は呼び合うんだから。ヒトツになりたくて、元に戻りたくて、唯・・・・。



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