鳥篭の夢

第三章/13



「おい、浅瀬が・・・っ!!皆、起きろ!!」
「ぇー、何?」
「どうかした?クレイ」

まだ眠いのに。慌てるみたいなクレイの声。浅瀬がどうかしたのかな?
ボーっとしながらクレイの方を見てみて・・・わ!ちょっとビックリ。目が覚めたかも。

「浅瀬が通れるようになってる!」
「え、本当ですか・・?」

ニーナも眠たそうな目を擦りながら起きて来て、それから嬉しそうに手を叩いた。
“良かった、これで何とか先に進めますね”って本当に可愛らしく笑って、だからアタシも嬉しくなる。
でももう浅瀬が通れなくなってから何日か経ってるもんね。そろそろ通れないと困るし、良かったぁ。

「じゃあ出発しよう」

クレイの言葉に皆で頷いて、皆で出発。足止めされてる間それぞれ休息してたからか足取りは軽い。
勿論アタシもそう。大分寝てたからか凄く身体が軽い感じがするんだよね。不思議。
やっぱ本当は休めてなかったのかな?なぁんて。考えながら浅瀬を渡って行けば、大陸はすぐだった。


「しかし海は渡れたものの帝都までは暫くかかりそうだな」
「そうなの?」

あれ?でも何だか見慣れた場所のような気がする。如何だっけ?

「近道とか無いのか?」
「そんなものは知らん。道なりに進むしかあるまい」

クレイとアースラの言葉を聞きながら進んでいって・・・いや、やっぱりアタシ此処知ってる。
寝所ってここら辺じゃなかったっけ?ふと視線を感じてみたら、リュウがアタシを見てて。そうだよね。

「・・・リュウ?も何処へ?」

2人でそっちへ歩き出したら、ニーナの声。

「・・・・近道」
「近道だと?」

リュウの返事にアースラが怪訝そうな顔。

「そういう事!ほらほら、アースラ、皆もこっちだよ」
「だが、その先には皇帝墓所しか──」
「墓所?何言ってるの?アースラ。
あっちにあるのはフォウルの寝所だよ?あそこが近道になるの」

皇帝墓所?・・・もしかしてお墓扱い?まぁ、良いか。それより今は近道するのが最優先。
そういえばまだオンクーは寝所を守ってるのかな?でも、まぁ大丈夫だよね。
仲間の顔を見忘れたとか言ったら一発ぶん殴って起こせば良いし。
それにしても本当に懐かしい空気だなぁ。ちょっと殺伐とはしてるけど。
あたしの記憶。フォウルを襲ったヒト。帝国の兵。流石にそんな事するなんて思いもしなかったっけ。ホント。
うん、懐かしいなぁ・・なんて思いながら寝所の階段を上っていく。


──誰か


懐かしい声、オンクーの。石のままなのかな?頭に問いかけるように響く声。


──神聖なる我が主の寝所に踏み入る者は


『誰か!!』
「せ、石像が動いた!?」

驚くクレイに・・・って、ちょっと邪魔だって!通して、クレイ!!
無理やり押しのけていけばリュウと対峙してる姿。“うつろわざるものの気”だって・・・あぁ、もうっ!!

『いや。何人であろうと、此処を通す訳には──!』
「待って!オンクーっ!!」
『む。お前は・・・か!?』

リュウに攻撃を加える直前に止まって・・・・良かった、セーフ!

「そうだよ!仲間の顔を見忘れた訳じゃ無いでしょ?だったら分かるよね」

アタシが此処にいて、うつろわざるものの気を持つリュウが一体誰なのか・・・。
そもそもオンクーはアタシとフォウルと一緒に出てきたんだから、アタシの命も分かってる筈でしょ?
オンクーはじっとリュウを見つめる。それにリュウも同じように真剣な眼差しを向けた。

「知っているのか?
「うん。アタシの仲間。
オンクーもフォウルのガーディアンなの」
「ガーディアン・・こいつも?」

クレイに尋ねられて・・・あ、流石に驚いた?でもアタシの方が本当は特殊なんだよね。
元々ヒトだったなんてガーディアンとしては異質。まぁ喧嘩したりとかした事無いけどさ。

『そのカイザーの気・・・間違いない、我が主の半身。とんだご無礼を・・・』
「あ、それってアタシが半身様を間違えるとかそんな風に思ったって事!?オンクー!!」
『そう言う意味では無い。全く、変わらないな・・・』
「む・・当たり前だってば!」

そんなにアッサリ人格変わっちゃうような生き方はしてないつもりなんだけどな。
むむってちょっと機嫌悪く腕を組んだら、オンクーは少しだけ笑う。あ、それって酷いと思うな。
見たらリュウもちょっと笑ってて・・あー!だから如何して笑うかなぁ、もぉ!!
不満を漏らしたらリュウは“ゴメン”って言って、それからオンクーの方を見る。

「──フォウルはもう都へ・・・?」
『その筈でございます。
、詳しい事はお前の方が知っているのでは?』

・・・う、確かに。

「まぁ途中まではね。でも色々あって片割れはアタシに戻ったから今は分かんない。
でもあの後も帝都へ向かってたのは確かだよ。だから流石に着いてるとは思うけど・・・」
「此処に抜け道がある筈だ。通らせてくれないか?」
『抜け道は帝都兵によって封鎖されております。
ですがフォウル様が帝都に到着されたなら兵は引いている筈──ならば、このオンクーが案内致しましょう』

重たい音と同時に寝所への扉が開いた。扉って言うか、地下への階段。
あぁ、でも久しぶりだなぁ。あの時はフォウルとずーっと寝てた訳だけどさ。


「ん?」

リュウの真剣な顔。

「片割れって・・・?」

あ、そか。リュウには言ってなかった。忘れてたっていうのもあるけど。

「うーん・・・まぁ詳しくは後で話すね」

当たり前の事って説明しにくいもんね。だから急に言われるとちょっと困る。
アタシがニーナとかフォウルとかみたいに賢かったらすぐに説明出来たかもしれないけどさ。
なんて自分の頭の弱さを後悔しても仕方ないよね。アタシはアタシなんだから。



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