終章/05
「けど・・これからどうするんだべ?。
都さ、今から急いでも日が暮れちまうだよ」
そうなんだよね。アタシとサイアスなら日暮れ前には辿り着けるけど・・・マミは無理だよね、うん。
まぁ、方法が無い訳じゃないけど。アタシの力をまた分割させたら良いんだし。
ただどんな形状で出るか分かんないのが問題。貰った力を分けるからか、未だ上手に出来ないんだよね。
でも悩んでる時間はないし・・・とにかくやってみよう!
「2人とも、ちょっと待ってて」
不思議そうな顔。でも説明なんて移動しながらでも出来るし。とにかく今は集中!
前みたいに力を分ける。出来るだけ、マミも守れる位に大きい方が良い。
全身が淡く光を帯びる。それが一箇所に集まって大きな獣が姿を現した。大体オンクー達サイズ。
形も近いのに耳と尻尾はアタシと同じウサギみたいで毛色も同じ。ちょっと変?まぁ良いや。
それより、これなら3人乗っても大丈夫だよね。意識も繋がってるし大丈夫!
「じゃあマミもサイアスもこの子に乗って!」
「えっと・・、この子は・・・?」
「これもアタシだよ」
混乱してるマミに言って・・・あ、でももっと混乱させちゃった?あはは、ごめん。
でも今はゆっくり喋ってる場合じゃないから。サイアスにマミを頼んで、サイアスが乗ったのも確認。
よしよし、じゃあ出発!!
「きゃっ!!」
勢い良く走り出せば、マミの身体がサイアスに思い切り倒れこんだ。
あれ?何だろう、胸が少しもやもやして変な感じ。まぁ良いや、気にしない。今は早く行かなくちゃ。
「しっかり掴まっててね、マミ!ちょっと急ぐから!!」
それにマミは何度も頷いてアタシにしがみ付く。
・・・・・あ、もやもや無くなった。何だったんだろ?変なの。
「そうだ、言い忘れてたけど、この子の事なんだけどね・・・」
「いや。おら、馬鹿だからの言ってる事はきっと分かんねぇ。
けど大丈夫だべ。2人がどんな人でも、おらが2人を好きなのは変わらねぇだよ」
「・・・ありがと、マミ。アタシもマミの事好きだよ。大好き!」
フォウルも。だからこそ絶望に身を置いてしまった程にはマミを好きなの。
もしかして・・・・・もしかして、フォウルもマミの事が特別な・・・・・?ううん、アタシには分かんない。
そのまま一気に帝都まで駆け抜けていけば、地獄絵図って言うんだっけ?こういうの。それ位酷い有様。
建物が壊されてて、時々魔物が出てくるのは片割れのブレスで何とかなるけど・・危ないなぁ。
「・・・・・あれ?」
門に誰かが凭れてる?あれ、生きてるよね。大怪我してるけど。
とりあえず止まって片割れから降りる。あ、マミはそのまま乗っててね。そっちの方が安全だから。
老兵っていう単語が似合う年老いたヒト。そのヒトが顔を上げてアタシを見た。
「貴女は・・・?」
「えっと、大丈夫・・・じゃないよね?」
こんなに血が出てるんだもん。あ、でもアタシは魔法使えないんだった。
「サイアス。治すのお願いしても良い?」
使えたよね?確か。訊いてみたら、サイアスは一度頷いてヒトの傍に行く。
そのまま手から淡い光。やっぱり魔法って凄いなぁ。使えないから、尚更そう思う。
「その獣は・・・もしや貴女もアルカイの竜様の?」
「え、リュウと会ったの!?」
じゃあもう先に進んだって事だよね?
「はい。アースラが今、神皇様の下へお連れしている筈」
「フォウルの?」
「ですから、私のような老兵の事など気にかけず先をお急ぎ下さい」
そっとサイアスの手を退けようとするけど。
「ルーン将軍、だよね?貴方は」
「・・?!何故、私の名を?」
「やっぱり。アースラの大切なヒトが怪我してるのに放っとけないよ」
このヒトも同じ。アースラの名前を呼んだ時、凄く優しい声だったから。だからそう思っただけ。
でも、もし何かあったらアースラは悲しむから。だから放っとけない。治すのはアタシじゃないけど。
「いえ・・先程から魔法をかけて頂いたおかげで随分と良くなりました。さぁ!」
本当に?サイアスを見て、大丈夫って頷くのを確認。本当に大丈夫なんだよね?信じてるからね?
それから片割れにもう一度乗り込んで先を急ぐ。
皇城に入って一気に奥。このまま走り抜ければ一気に王座まで・・・!
「!?み、道が・・・っ!!」
「大丈夫だよ、マミ。心配しないで!」
──トン...ッ
空を飛ぶみたいに何も無い空間に足をつけてそのまま走り抜ける。
ヒトには出来ない芸当なんだよね、一応。
アタシもヒトの時はこんな事出来なかったし。やっぱり片割れを出しといて良かったかも。
そうじゃなかったらサイアスとマミが一緒に行けないから遠回りする所だった。危ない危ない。
走り抜けていって・・・・・あ、見えてきた。あの後姿はリュウとニーナ達。後、一緒にいるのって・・・。
「アーター!?何で一緒にいるの?」
『その声は・・・か!』
「わ、!如何したんですか?この子は。それに、この方も・・」
「え?あ、えっとおらは・・」
「あ・・ごめん、また後で説明するね」
アーターがいるって思わなかったからビックリして頭が混乱してるし。
ごめんね、二ーナ。片割れの事もマミの事も説明は後で。それよりもまずはアーターだって!
『私は主の命によって半身様を此処までお迎えに上がったまでだ』
「フォウルが?えー・・・アタシが連れて行くって命を貰ってたのに・・・」
『今のお前ではフォウル様の居場所までは特定出来まい。だからだ』
「確かにそうだけど・・。むぅ、何だか複雑かも」
信頼されてない?ううん、多分心配してくれてるんだろうけど。あ、でも分かんない。
今のフォウルは・・アタシの事も考えてるのかな?如何なのかな?ちょっと不安。
って、ちょっとアーター溜息つかないでよ!アタシだってさっきまで若干シリアスしてたんだから!!
『・・・・・お前がそれなら大丈夫だろうが。半身様、どうかお気をつけて』
「それ、オンクーにも言われたよ」
『我々はヒトがどうなろうと関係ないと思っておりました。ですが・・・。
今のフォウル様を見ていると願わずにはいられないのです。
昔のようにヒトを信じていたあの頃に戻って頂きたいと』
ヒトを信じてた。・・・そう、昔はフォウルもそうだった。
ヒトの愚かさや浅はかさに呆れてはいたけど。
それでもまだ信じてた。ヒトは決して愚かなだけじゃないって思ってた。
「まだ、戻れる筈だよ。きっと・・・・」
『貴方様がいてくれて良かった。どうかフォウル様をよろしくお願いします』
頭を下げて扉を開ける。この先にフォウルがいるんだよね。少し緊張するかも。
アーターの横を通った時に小さく呟くような声がした。
『、お前ならもしかしたら・・・』
信じさせる事が出来る?そんなの分かんないよ。アタシはフォウルに比べたら脆弱すぎる。
だけど・・・うん、やれる事はやるよ?勿論。だってアタシはフォウルと友達。それは譲らない。
「やれる事は全部やらなくちゃ、ね」
例え、それがどんな結果になったとしても。