鳥篭の夢

終章/06



静かな空間。いくつもの蝋燭の灯だけがゆらゆら揺れてる。懐かしいな。
此処は昔とあんまり変わってない。まるでフォウルと一緒に過ごしたあの時と同じ。

「──よく来た、我が半身よ。待っていたぞ。
そして。よくぞ我が半身を無事に連れ戻った」
「フォウル」

王座には・・・わ、フォウルの正装なんて久しぶりに見たかも!それに褒めてもらっちゃった。えへへ、嬉しいなぁ。
ガーディアンだからってのもあるのかも。本能的に嬉しいって感情でいっぱいになっちゃうんだよね。
まぁ普段からあんまり褒めてくれないのもあるけど。でも、だからだよね。褒めてくれるのは嬉しい。

「フォウル・・やっと、会えた!」
「あぁ、だが──」

だが?
光。光がフォウルの指先からアタシ達をすり抜けて通って行って・・・・。

「ぐぁっ!!」
「きゃあっ?!」

小さな羽が辺りに飛び散った。ニーナの・・・何で?どうしてニーナとクレイが倒れてるの?

「余計なものがついて来たようだな」

余計な、もの?何それ・・・?

「な・・・」
「・・・ぁ・・・」
「ニーナ!クレイ!!」

アースラが駆け寄って・・大丈夫、身体は動いてるから死んでないよね。
だけど、ねぇ如何して?フォウル!リュウの仲間を・・友達を、如何して!?

「なんで・・っ!フォウル、僕は君と争うつもりはないんだ!ただ、僕は話をしに──!」
「ダメだよ!止めて、フォウル!!」

マミもいるのに、気付かないの?見えてないの?
フォウルが手を横に素早く移動させる。それは一気に衝撃になってアタシとリュウの後ろを吹き飛ばした。
アースラも、マスターも・・・サイアスも。マミは大丈夫。片割れが守ってるから。だけど・・・。

「これで邪魔者はいなくなった。
さぁ、此処へ来い。我が半身──リュウよ!」

えっと・・・リュウだけ呼ぶって事は、アタシは行ったらダメなのかな?
考えてたらフォウルはアタシへも視線を向ける。穏やかな視線。怖い位の。でも行っても良いって事だよね。
皆は片割れがいるから大丈夫。少なくともマミは。フォウルの命を守る為に“マミを護る”筈だから。

「リュウよ・・・私よ、ひとつとなり全なる神となる時が来た」
「フォウル・・」
「うつろう肉を・・身体を捨て、全なるひとつの魂となるのだ!」
「如何して話を聞いてくれないんだ、フォウル!」

リュウが叫ぶ。皆を傷付けた事、怒ってる。そんな感情が伝わってくる。
きっとフォウルにはアタシよりもずっと伝わってる。なのに如何して?

「・・・話など必要ない。全てはひとつになれば分かる事。
そして、神なる力をもって世界に別れを告げるのだ」

世界に・・別れを・・・・?ね、フォウルは何をしようとしてるの?

「・・・・君は」

リュウが強く拳を握り締める。

「僕の仲間を傷付けた・・・っ!!」

静かな空間にリュウの声が響く。
余韻が飲み込まれるように消えた頃、フォウルが口を開いた。

「ヒト共を“仲間”だと言うか・・・リュウ。
、お前も如何やらリュウと同じ考えのようだな」
「そうだよ。だって・・」

だってアタシも・・・。

「そうか、如何やらお前達はうつろうものと関わりと持ちすぎたようだ」

アタシも元々はヒトだって言う前に、フォウルが言葉を挟んで姿が揺らぐ。
消えていく姿にリュウは焦ってるけどアタシは知ってる。
実体じゃない。分かってるよ。まだフォウルが遠い気がしたから。

「でも・・話位なら聞いてくれるって思ったのにな」

それも無理な位には絶望してる?ヒトに。マミにも気付かない程・・・。

「・・・フォウル!何処に!!」
「ヒトとの関わりを絶たねばなるまい。
来るが良い、リュウ。。我等が始まりの場所へ──」

始まりの場所。フォウルが召喚された場所、それは・・アタシの記憶の始まりでもある。
鮮明に思い出せる。大掛かりな仕掛け。なのに空は大きくて広かった。興味も無かった場所。ヒト達。
だけど、その時に見たフォウルは凄く不思議で綺麗で。
・・・・・ねぇ、やっぱり忘れてるよね?アタシ、あの時はまだヒトだったんだよ。

「フォウル」

無意識に名前を呼んで・・別に本人いないし呼んだって意味無いの分かってるけど。
でも友達って言ってた事、忘れてないよね?
もう主従関係でしかないの?アタシ、嫌だからね。そんなの。
絶望しか伝わってこない感情も、嫌だ。
笑って欲しいのに。幸せでいて欲しいのに・・・。

・・!」
「ごめん、リュウ。アタシ先に行ってるから!」

だって勝手に足が動くの。フォウルが待ってるって思ったらもう止められなくて・・・。
如何しようも無くて、ただ全力疾走。行かなくちゃ・・・“あの場所”へ。始まりの場所へ!!



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